156:共依存
ヒトミさんは社会不適合者です。
朝から大変疲れる騒ぎに巻き込まれたせいで俺の体力はすでに0に近くなってしまった。
そんな俺の疲れは知ったことではないとばかりにヒトミさんに連行される形でアイさんの運転する車で場所を移動する。
そこはヒトミさんが運転するわけではないのかと思っているとアカリが口を開く。
「お母さんペーパードライバーだから運転は期待しない方が良いと思うよ」
この人アイさんがいなかったら生活できないくらいにはいろいろ破綻しているんじゃないだろうか。
アカリの隣では朝から不機嫌なサキがしかめっ面で窓の外の景色に視線を向けている。
そして唯一蚊帳の外に置かれてしまったルナを慰めるために俺の左手はルナの頭に置かれてひたすらなでなでを強要されている。
そんな何とも言えない空気感の中車を走らせること20分くらいだろうか?意外と距離があるんだなと思っているとどうやら目的の場所についたようだ。
ぱっとみはどこにでもある雑居ビルという雰囲気だろうか、まだ建ってそこまで経っていないのか外の外壁は劣化を見せることなく綺麗な白色を保っている。
ビルの入り口にはまだまだ新品な看板に『スマイルビル』と書かれているのでそれがこのビルの名前だろう。
俺らがビルの観察をしている間に手続きでもしてくれているのかなとヒトミさんの様子を確認しようと視線を移すと視界の隅で携帯のバイブレーションよりも激しく震えている姿を確認できた。
「は?いやいや・・・一体何がどうしてこうなっているんですか?」
訳も分からず問いかけるとようやく少しだけ機嫌がよくなったのだろうかサキがため息をついてから答える。
「おふくろは人見知りの出不精だからな。久しぶりに仕事で外出なんてしたから拒否反応出てんだよ」
朝までのサキを弄って楽しんでいた一面は鳴りを潜め、何か当たるだけでも死ぬような雑魚敵のような雰囲気を身にまとっている。今の状態から朝の状態を想像しろという方が無理だろう。
「お母さんは社会生活っていうのがとことん合ってないらしいからね。ちゃんと面倒見ないとすぐ死んじゃうくらいには弱いって良く本人が言ってるくらいですし」
アカリが死体蹴りのごとく追撃の情報を渡してくるのだがよくもまあこんな存在が生きてこれたものだと逆に関心してしまう。
今も近くの柱にしがみつきこの場からの逃走を選択している辺り本当にこの生き物は社会生活に向いてないと言わざるを得ない。
「でもアイさん的にはこっちの方が好きらしいからお母さん曰くわれぶたにとじぶた?って言ってたっけ」
ふと見ればアイさんがヒトミさんをしっかり抱きしめながら頭を撫でてメンタルケアをしているのが見える。
悲しいかな、美しい光景のはずなのにアイさんの顔には歪んだ笑みが浮かんでいるので台無しである。
まあアイさんもヒトミさんも幸せそうなのでそれでいいとは思うのだが・・・なんとも言えない気持ちだ
学生時代はもう少しまともだったのですが時の流れの影響でこんな存在になりました。
知り合いの前では生き生きしていますが外に出ると途端にスペランカー化します。
今回はテンション上がったせいで気づいたら逃げれない場所に来てしまった感じですね。




