155:からかい禁止
可愛そうなサキちゃん
朝食の席では不貞腐れた表情のサキがまだかすかに頬を赤くしながら朝ごはんをかきこんでいる。
その対面ではサキによる鉄拳制裁により頭にたんこぶを作ったヒトミさんがそれでもなおニヤニヤしながらこちらを見つめてくる。
サキの隣に座ったアカリは流石に気まずいのか俺の方にちらちらと救いを求める視線を向けるのだが俺にだってどうすればいいのか分からないことだってある。
そんな状況の中で唯一冷静なのは朝食を作り終えたのかエプロンを外して席に着くアイさんだけだった。
「そろそろ機嫌を直したらどうだいサキちゃん。アカリちゃんもユイちゃんもパパんも気まずいからさ」
そういったアイさんをまるで射貫くかのような視線で睨みつけるサキ。お茶で口の中の食べ物を飲み下してから大きくため息をつく。
「わーってるよ。アカリやユイは悪くねー。だいたいおおよそ確実にそこのおふくろが全部悪い」
流石に自分の醜態をビデオに収められたからか相当怒り心頭の様子でヒトミさんを睨みつけるサキ。
普通の一般人ならそれだけでビビりそうなものをヒトミさんの精神は鋼でできているのかぴくりともしないで泣きまねまでし始める。
「うぅ、ひどいっす。ヒトミさんはサキちゃんとユイちゃんの幸せ家族計画を撮影しようと頑張っていただけなのに」
なんだその幸せ家族計画とやらは。サキもヒートアップしてますます怒り出す。
「余計なお世話だよ!!!いいから撮影データ全部消せ!」
唸り声をあげる姿は小さな猛獣のように獰猛だ。おかげで隣の席に座るアカリが先ほどからぷるぷると震えている。
「消してほしければ・・・それなりの対応があるんじゃないっすか?」
サキにひるむことなくむしろ脅しをかけるとは屑としか言いようがないだろう。
「流石にそれは酷いんじゃないですかね?サキさんのためにもどうかお願いします。」
流石にサキがいたたまれないので俺は静かに頭を下げる。流石にこれで無下にはしないだろう。
「ヒトミちゃん。そろそろ遊ぶのは許してあげてね」
苦笑いしながらアイさんが釘を刺すと流石にヒトミさんもしぶしぶ了解した。
「ユイ・・・助かったぜ。お前は俺の命の恩人だ。この恩は一生忘れない」
俺の両手をぎゅっと握りしめて涙腺を緩ませながらサキは呟く。感極まったのは良いのだが場所が最悪すぎる。
視線を横に逸らせば新しい餌を投入されて生き生きしているヒトミさんが見える。
アカリとアイさんはそろって大胆だなぁと呟いている。
「サキさん、感謝するのは良いのですがその・・・皆さんに見られていますよ」
そういった俺の言葉ではっと我に返ったのか周囲を見渡すサキ。せっかく落ち着いてきた顔の色が一瞬でまた真っ赤に戻っていくのが分かる。
「親の前でイチャイチャするとは・・・やるっすねサキちゃん。これは結婚秒読みっすね」
よせばいいのにヒトミさんはまたしても火に油を注ぐかのような言い方をする。
「おっはよ~。ありゃ、なんかあった?」
こんなタイミングで元気にルナが入ってくる。溜まっていた勢いのスイッチが押されたかのように本日二度目となるサキの絶叫が家の中に鳴り響いた。
ヒトミさんの趣味は人をおちょくることです。
ただ人見知りなのでその被害はだいたい家族か知人に限定されます。
アイさんはなんでこんな人と結婚したんだろ?




