140:祭囃子
さーびすさーびす
歩き始めてしばらくは黙り込んでいたルナだが祭り屋台が近づくにつれて普段の元気な様子を取り戻した。
ユエさんから演舞のご褒美なのかお小遣いを多めに貰ったのか先程から気になる屋台に近づいてはいろいろなものを買っている。
「にっしっし、今の僕は小金持ちなのです!せっかくのお祭りなんだから楽しんじゃうぞ~!」
右手にフランクフルト、左手にりんご飴を持ち頭には有名なアニメキャラの仮面を引っかけて足取り軽く進んでいる。既に楽しんでいると言うのは流石に無粋なので黙っておく。
「あんまりはしゃぐと転ぶぞルナ。ちったー落ち着けや」
などと大人っぽいことを言っているサキだが俺の左手に抱き着いたまま空いた手には大きな綿あめが握られているので説得力がない。
「まあまあ、せっかくのお祭りを楽しみたいっていうルナちゃんの気持ちも良く分かるよ」
サキを宥める様に言っているアカリだがこちらも俺の右手に抱き着いたまま空いた手でポンポンと水ヨーヨーを器用に弾ませている。
「ぐへへ、妹二人が仲良しでお姉ちゃんはとても感無量ですわ」
この中では一人だけ何も手に持っていない委員長だが俺とサキを視線に収めつつ気が付けば携帯のシャッターを先程から連打している。
衣装を脱いだのだがユエさんが気を利かせて今の俺たちはそれぞれの髪に合わせた浴衣姿で歩いている。
アカリは青色に朝顔、サキは黄色に金魚、ルナは白に水玉、委員長は紫に向日葵、そして俺が緑に水玉と俺とルナの衣装が姉妹コーデに見えるのは絶対にユエさんの計画に違いない。
そんな色とりどりの浴衣を纏った俺たちが注目されないわけもなく、周囲からの視線を一手に引き受けている。
屋台に顔を出してお金を出そうにも先程の演舞の礼だと逆に商品を押し付けられるくらいでここまで歩いて一度たりとも俺たちは財布を出してすらいない。
「サービスを受けるのは良いんですけどなんだか気まずいですね」
アカリなどは何度もお金を払おうとしていたために余計申し訳なさそうな顔をしている。
「良いんですよ。私たちが頑張った対価として受け取っておきましょう。どうしても気まずければちゃんとお礼を言えば問題ないですよ」
俺がそうアドバイスすることでようやく納得したアカリは小さく笑顔を浮かべながら商品を受け取るようになった。
一部の店主はアカリがお礼をするときにその胸に注目していたので俺とサキが鋭い視線を向けたのは内緒の話だ。
ルナとしてはせっかく手に入れたお小遣いを使いたかったのに不完全燃焼だったみたいだが、サービスとして多めに商品を貰ったことでそんなことは忘れてしまったようだ。
いくら境内が広いとは言え少し歩き回ればすべての出店を回ることにそんなに時間を使うことはない。俺たちの手荷物がいっぱいになった段階で出店のすべてを見終わってしまった。
「そういえばそろそろ花火が始まる時間ではなかったでしょうか?」
委員長が携帯の時間を見ながら呟く。俺たちの演舞が終わってしばらくしたら花火が打ちあがることは事前にユエさんと朝陽さんから聞いていた。
「だな。どっか良い場所しらねーかルナ?」
サキがルナに尋ねるとしばらく思案してから良い場所を思いついたのかルナが口を開く。
「にっしっし、ではではみんなを僕の秘密の特等席にご案内しましょ~」
足取り軽く俺たちを先導するルナについていくように俺たちは神社の奥へと足を進めていく。
花火を見るなんてのは随分久しぶりだから俺としてはとても楽しみな気持ちでいっぱいだった。
祭りの主役からお金を取ることは良い大人たちには厳しかったみたいです。
ナンパしそうな人たちもいたんですが裏で大人たちによるお話でルナたちには気づかれることなく処理されています。




