138:大人たちの酒盛り
男親にとって娘は目に入れても痛くないのです。
演舞が終わった途端に神社の境内は先程までの静けさとは打って変わって一気に騒がしさを取り戻した。
流石に演舞のままの恰好であちこちを動き回るわけにはいかないが着替えをしようにも着付けを行ったユエさんの姿は近くにないので周囲を軽く探すしかない。
サキたちは疲れたのか早々に練習場に引きこもった都合上俺だけがこの場にいる。
先程より演舞の主役だった俺に向ける熱い視線に俺は苛まれ続けている。あちこちで俺とルナの話題で持ちきりになっている。
そんな話の中心でパパと朝陽さんが肩を組んで酒を飲み交わしている。既に出来上がっているのかパパの顔は大分赤くなっている。それに付き合っている朝陽さんの顔も少し赤くなっているのが分かる。
俺が近づいてくるのに気づいてパパは満面の笑みで腕を広げてこちらを出迎えている。
「私の天使がやってきたよ!いや~本当に私の娘は天使か天女の生まれ変わりなんだと思うんだよね!」
酔っている割には優しく俺を抱きしめるパパ。その吐息からはかすかに酒の匂いが漂っているので少し顔を歪めてしまう。昔の俺なら何も感じないが今の体では酒の匂いにやけに敏感になってしまっているようだ。
パパの言葉をもはや聞きなれたのかうんざりしたような顔をしている朝陽さんに同情するような視線を向ける。
「すいません。パパが大分出来上がってしまったようで。迷惑なら言ってくださいね?」
俺の言葉に朝陽さんは軽く手を振って否定の意を示す。
「気にしないで良いよ。こんなのは付き合い始めた頃からしょっちゅう見ているからね」
「昔からテンションが上がるとすぐのろけが出てくるんだ。昔は10割ユミナのことだったけど今は5分5分で君とユミナさんの話になっているがね」
気にしないとは言っているが俺としては恥ずかしいことこのうえない。こんなことが続くのならばママに言ってパパの禁酒を考えるべきだろうか。
「こんなこと言っているけど朝陽だって同じじゃないか。隠しているけどねユイちゃん。こいつだって私とそんな変わりないんだよ。」
どうやらパパの話を信じれば朝陽さんもパパと同じくらいののろけ合戦をしていたようだ。心配して損したと思ってしまうのは俺が冷めているせいなのだろうか。
「私は良いですけどルナに聞かせちゃだめですよ。」
少し釘を刺すと朝陽さんは苦笑いしながら頷く。娘のことはよくわかっているようだ。
「その衣装はずっと見ていたいけど少々目立つからね。ママはユエさんと着替えの準備に行ったからユイちゃんもそろそろ向かった方が良いよ。パパはもう少し朝陽と男の話をしているからね」
軽く頭を撫でながら俺への抱擁をやめてパパが告げる。その言葉に従うために俺は二人に軽く頭を下げてから練習場に向かう。
そんな俺の後ろでパパと朝陽さんが何やら会話を続けているが周囲の喧騒のせいでうまく聞き取れない。
何やらどちらが嫁やら義家族やら良く分からない話題だったが一体なんの話をしていたのだろうか?
詳しく聞きたかったがさっさとこのエロい服装から解放されるために俺は少し早足で練習場へ向かった。
パパも朝陽さんも愛妻家です。朝陽さんは嫁さんの尻に敷かれていますけどね。
彼らが何を話していたかはご想像にお任せします。




