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137:祭り 下

雰囲気に流されてしまいましたわー

委員長の笛の旋律が静かな神社の境内に響き渡る。


演舞の開幕は静かな笛の音色から始まる。それに合わせてシャンシャンとサキが鈴のついた杖を振るう。


周囲の電灯は消え今はかがり火だけがその空間を照らし出している。


舞台の中央では主役の一人であるルナが座りこみ、動きにくいその恰好で泣きながら祈っているように舞を舞う。


いつしか笛と鈴の音色にアカリが演奏する琴の音色が重苦しい空気を演出している。


その舞は嘆き、悲しみととても重い内容になっている。誰かルナを助けてくれと願う程度にはその場の空気は重い。


顔を伏せうずくまる演技をするルナに合わせて音楽がぴたりと止む。


周囲の観客からの動揺が少し離れた位置から見ている俺にも伝わるくらいには広がっている。


時間だ。俺は緊張を紛らわせるかのように深く深呼吸をしてベールをかぶり腕に纏った鈴を鳴らすかのように歩みを進める。


チリンチリンと俺が歩くたびに鈴の音が周囲に広がっていく。それに合わせて観客の視線を俺が一手に引き受ける。


焦ることはない、早足になりそうな足を必死に抑え一歩一歩ルナのもとへとゆっくりと近づいていく。


音の主役は笛の音から鈴の音へと切り替わる。ルナの舞が祈りの舞だとするならば俺の舞はそれの返答の舞だ。


嘆いている対象を切り払うかのように俺の手に握られている見えない剣を振るうかのように体を動かす。


勿論本当に見えない剣を握っているわけではない。あくまでそういう風に見える様に踊るのがコツだ。


時に素早く、時に遅く。ルナの周囲をぐるりと舞ながら見えない何かを切り伏せるかのように舞い踊る。


見えない何かをすべて切り伏せたタイミングで蹲っていたルナが立ち上がりこちらの方を見つめる。


さあ、舞台はいよいよ大詰めに。鳴りやんでいた笛と琴が先程とは違う旋律を奏で始める。


緩やかな音楽ではなく激しい感じのリズムで笛と琴の音色が周囲を包みこむ。


それに合わせて俺とルナが舞を舞う。息を合わせて、ただその舞は月と太陽のような真逆の印象を与える。


普段は元気なルナが憂いを帯びたまるで月のような静かな舞を踊り、俺はそれとは対照的に体全体をアグレッシブに動かして太陽のような明るさの舞を踊る。


周囲から音は聞こえない。今は全員がこの演舞に集中しているのが分かる。音楽もいよいよフィナーレを迎える。


激しい音楽が一段と激しさを増したタイミングで俺とルナの視線が交差する。タイミングを見計らい二人で体を交差させ俺の被っていたベールが二人を覆い隠したタイミングですべての音がぴたりと停止する。


すべての時が止まったかのような静寂はそんなに長く持つことはない。


やがて誰かが拍手をしだすとそれは周囲に伝染していき、やがた周囲全体からの歓声が鳴り響いた。


ベールの下で汗だくな俺とルナは顔を見合わせて笑う。抱き合ったベールの下の表情はここにいる二人だけの秘密だ。


「にしし、完ぺきだったねはーちゃん」「ええ、完ぺきでしたねルナ」


二人して同じことを言ってまた笑いあう。二人の顔の距離は少しでも動けばキスできそうな程に近い。


演舞が終わった途端にどっと疲れが押し寄せてくる。そろそろベールを外そうと思って一瞬気が緩んだタイミングで俺の口に何かが当たった気がした。


「これはさっきのお返しだよはーちゃん」悪戯が成功したような子供のような表情でルナはまた笑う。


今の俺の顔はきっとさっきのルナよりも真っ赤になっているに違いない。ベールの下で誰にも見られていなくて良かったと今だけは思った。



ユイにとっての初キスです。今までの人生の中での初めての相手がルナになります

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