136:祭り 中
こいつ素でこんなことしてるんですぜ
ルナたちとだらだら過ごしているうちに気づけば周囲の日は落ちて夜が近づいてくる。
外に耳を澄ませれば祭囃子と共に人々の足音や声が大きくなっていくのが分かる。
俺にとっての逃げ道はどんどんと少なくなっていくが、今更逃げることなどできるはずもなかった。
時間が近づくにつれてどんどんと俺の胃はキリキリと痛む。眠っている((彼女))が見たらきっと爆笑するだろうと思わずにはいられない。
他の4人にしても緊張していないわけがなく、普段はうるさいルナですらその辺をうろうろ動くだけで喋ることはない。
そんなタイミングで静かに扉が開かれたので俺たち全員の視線がその一点に集中する。
そこにはユエさんとお父さんが静かに立っていた。その顔には疲れが見えるあたりそうとう忙しかったらしい。
「そろそろ時間やから準備しい。人が集まっているさかい気合いれや」
エールを送っているつもりなのだろうが余計緊張感が高まってくる。足が自分の足ではないかのように生まれたての小鹿のように震えてうまく動かせない。
そんな俺の手をいつの間にか横に立っていたルナが握る。
「大丈夫だよはーちゃん。いっぱい練習したんだから何も問題ないよ」
そう言って俺を励ましているがそのルナの腕だって小さく震えているのが分かる。
自分だけが緊張しているわけがない。ルナだって主役なのだもしかしたら俺以上に緊張しているかもしれない。
震える顔で笑顔を無理やり作っているルナの顔に自分の顔を近づける。
頬にキスできるくらいの距離まで近づいたせいでルナの顔が赤くなっているのが良く分かる。
「ありがとうルナ。貴方のおかげで頑張れそうよ」
そう言って軽くルナの頬に唇を当てる。
「な、なななななな!?」頭から湯気を出しそうなルナの表情がとても可愛らしい。
俺の行動にぽかんとした表情を向けるアカリたちにルナから距離を取るように軽く回ってから声をかける。
「今日はみんなよろしくお願いしますね。精いっぱい楽しみましょう」
そう言って俺はみんなに笑顔を向ける。さっきまでの緊張は綺麗に消え去り今は演舞の役柄に気持ちをスイッチさせる。
頭を掻きながらしょうがないと言った表情を向けるサキ、両手で顔を覆いながらその指の隙間からしっかりとこちらを見つめているアカリ、良いものを見れたと涎をたらしそうな委員長。
そして唇が当たったところを手で押さえてぼーっとしているルナ。
さっきまでこのあたりに漂っていた緊張感はきれいさっぱり消え去った。
俺の行動は後で絶対問題になるが今はとりあえず目の前の演舞に集中するしかない。
にやにやと俺とルナを交互に見るユエさんと頭を抱え何か考え込んでいるルナのお父さんに視線を向ける。
「行きましょうか。本番に」
一夜限りの演舞の舞台へと力強く俺は足を動かした。
ユイちゃんの行動は無意識化で彼女寄りになっております




