135:祭り 上
待機時間です
気づけば祭りの開催日になっていたことに気が付く。何かに熱中すると時間が過ぎるのは早いと良く言うが本当にそうだなと身に染みて理解してしまった。
既に神社の中ではあちこちで夜の出店の準備のために人々がせわしなく働いている。
演舞に出番がないルナのお父さんは衛生面のチェックのために普段は丸出しの筋肉を狭い服の中に隠して周囲の見回りを行っている。
あの筋肉の鎧でにっこりと笑えばそれだけで萎縮することは間違いなく、あの人の前で悪いことできるのはよほどの馬鹿か命知らずくらいだろう。
かくいう俺たちはというと練習場で最後の確認を終えて開始までの間の休憩時間を満喫していた。
ユエさんも流石に当日に俺たちに仕事を押し付けるような鬼畜な行動をとることはなく、神社の中央で陣頭指揮を執っている。
こちらに目をやる余裕はないのか俺たち用の昼食を用意したらそそくさと外へと歩いて行った。
「暇だな~。何か面白いことないのかなぁ~」
大人しくしているのが難しいルナは寝転がって足をじたばたさせている。いくら女子しかいないとは言えやめなさいな。
「しゃーねーだろ。全員もう着替えちまったから迂闊に外に出歩けないじゃないか」
サキの言葉通りしばらく時間に余裕がなかったユエさんの手により俺たちはすでに着付けを完璧に終えてしまっている。
「私たちはともかくルナちゃんとユイちゃんの服は目立つからね。その恰好で外を出歩いたら注目の的だよ」
アカリとサキ、それに委員長の服装は裏方になるためか普通の巫女服のように見える。普通の巫女服を詳しくは知らないが良く神社なんかで見たことある格好なのでこれが普通の巫女服だろう。
「これ暑苦しいんだよねぇ~。こんな厚着してたら熱中症になっちゃうよ~」
ぼやいているルナだがその恰好は確かに暑苦しい。さしずめ白い十二単とでも言うべきか。何枚もの着物を重ね着し、今は外しているがその着物の上に青い帯を纏って踊るのだから邪魔でしょうがないだろう。
「なら私と交換しましょうか?ぜひとも私としては変わってほしいんですが」
俺は自分の衣服を見せびらかす様にルナに見せつける。ルナが厚着だとしたらこちらはかなりの薄着だ。お腹が見えるくらいに短い上衣に、下は少し動くだけで下着が見えそうな程のスカート。極めつけは頭の上から全身を覆うほどのベールを纏って踊らなければならない。
こんなのは痴女かはたまた夜のお仕事の女性の恰好に近いかもしれない。神秘さよりも淫靡さの方がでかいだろう。
「それを着替えるなんてとんでもありません!こんなエッチな妹の恰好は永久保存ですわよ!」
委員長の欲望の叫びが部屋に響く。さっきまで携帯の電池が切れるくらいに写真撮影をしていたのにまだまだ撮り足りないらしい。勘弁してほしいものだ。
「委員長の言うとおりだよはーちゃん!それを脱ぐなんてとんでもない!」
ルナも拒否するのでサキとアカリに救いを求める視線を向けるのに二人してそっと視線を反らしやがった。
「サキさんと私の背格好は似てるのでぜひとも交換しませんか!」
意地になってサキに声をかけるがサキから肯定の言葉が返ってくることはない。
「無茶言うな!背格好は似てるけどその胸部装甲のせいで着れるわけないだろ!ずり落ちるわ!」
こういう時に自分の体格が嘆かわしい。救いがないことが分かって俺は深いため息をつくしかなかった。
神事じゃなかったら大変な格好をユイはしております。
イメージは砂漠の踊り子みたいなものだと思ってくれれば幸いです




