134:練習の合間に
青春の日々。
祭りの開催が近づいてくるに従って練習の内容もハードになってくる。
俺の体力がないせいで休憩の間隔が短くなるのが申し訳なく思うのだがそういう区切りというのがみんなにはありがたいらしく特に不満などは出てこないのでそこは安心している。
このペースでいけば祭りには間に合いそうなのか最初は不安そうだったユエさんも最近は少し余裕が出てきてしばしば俺たちの練習から抜け出し祭りの打ち合わせに顔を出せるくらいには余裕ができていた。
そんなユエさんが祭りの打ち合わせで席を外した時にアカリがこんなことを言い出した。
「こういうのに初めて参加したんですけど、結構楽しいですね」
一通りの通しを終えて俺が床に倒れこむようにして座っているのを見ながらアカリはそんなことを言う。
「だな。みんなで集まって一つのことをやるってのはなんかこう青春だよな」
相変わらず体力に余裕があるサキが俺に飲み物を渡しながらその内容に頷く。
確かに内容はどうであれ一つのことに全員で力を合わせるというのは青春の1ページらしくは感じる。
「2学期になればもっとそういうイベントは増えますわよ。文化祭や体育祭。イベントが目白押しですわね」
委員長が今後の予定を思い出しながらタオルで自分の汗を拭く。
考えてもいなかったが学生なんてものはイベントがたくさんあるものだ。記憶が朧気ではあるが昔の俺だってそういうのに参加していた記憶がかすかに存在している。
「にしし、今からそういうイベントが待ち遠しいよ。絶対楽しいよねはーちゃん」
俺に同意を求めるかのようにルナがこちらを見つめる。
その視線に疲れ切った顔で俺は頷くのだが心境としては複雑だ。
最近はあの鎖が壊れる音も((彼女))も表に出てくることはあまりないとはいえそれがずっと続くかと言われれば間違いなくそんなことはないだろう。
嵐の前の静けさとでも言うべきなのか、それとも現状に関して特に文句がないからなのかは分からないがこんなことがずっと続くとは思えない。
4人の顔を見ながら俺は考える。この生活を捨てるには難しい程に俺はこの4人との生活を満喫していた。
精神が大人びているとはいえ、学校生活やこういうイベントに参加するのが苦じゃないどころか楽しんでいる自分さえいる。それが悪いことだとはとても言えない良いこととも言えないが。
俺が悩んでいるとぐいっとキスできるほど近くまで顔を近づけてルナが心配してくる。
「はーちゃんどうしたの?難しい顔して?疲れちゃった?」
俺のことを心から心配しているルナを見るのは心が痛む。ほかの3人にしても俺を心配そうに見つめてくるので余計痛みはひどくなる。
俺はそんな痛みを振り払うかのように、ほかの4人に心配をかけないように笑顔を浮かべる。
「大丈夫です。体力が回復したので練習を再開しましょう。今回の祭り成功させましょうねルナ」
まだ少し心配そうな顔をしているが俺が笑顔を向けたことで全員気持ちを切り替えて練習を再開する。
難しいことを考えるのは後にしよう。今は目の前の祭りの成功だけに意識を集中させなければ。
耳に流れる演奏に身をゆだねて体に染みついた動きを再度確認するかのように俺は踊りだした。
嵐の前の静けさというやつです。
彼の心配しているイベントは夏休み中に発生しますのでお楽しみに




