130:伝承
むかしむかしのお話
一通りの流れを確認し終えたのでキリもいいので本日の練習はここまでとなった。
流石に動き回ったせいで体全体が重く簡単には動けそうにない。我ながら自分の体力のなさに泣きそうになる。
指一本動かせないで地面に寝転がっている俺に膝枕をしようと息を荒くしながら近づいてくる委員長に視線でくぎを刺していると俺よりは元気なルナが壁に寄りかかりながら声を上げる。
「今回の演舞めちゃくちゃ難しいんだけど・・・はーちゃんはすんなり出来てたけど僕は無理だよぉ」
泣き言を言っているが後半はかなり動きが良かったので流石に年季が入っているなと思った。
「演奏の方も独特なテンポでタイミング取りにくいんだよね。今回は難易度高いんじゃないかな」
アカリの言葉にサキも何度も頭を縦に振る。この二人はかなり手こずっていたのでそう考えるのも無理はない。
俺たちの声が聞こえたのか冷たい麦茶を持ってきたユエさんが口を開く。
「今回のはこの地に伝わる伝承をもとにしてるさかい、色々大変や思うけどかんにんな」
教える側であるユエさんも難しいと感じているのか少し苦笑いしながら頭を下げる。
「伝承ですか?あまり聞いたことがないのですがどんなお話なんですか?」
俺への膝枕を諦めたのかとても残念そうな顔をした委員長がユエさんに問いかける。
「そんな話聞いたこともなかったな。ユイがこんな調子だし聞かせてくれよ」
体力があるのか俺たちに麦茶を配る手伝いをしながらサキもまたユエさんにお願いする。
「古い話やさかいあまり面白うないかもしれへんけどそれでもええなら話ますえ」
ユエさんはそう言うが俺もまた興味もあるので無言で話を促した。
ユエさんは静かにその場に座るとその物語を語りだした。
「むか~しむかし、戦国の時代のお話」
「この地方は大いに荒れておった。戦だけではない、影のような妖が村を跋扈し多くの人が犠牲になっていた」
「この村の巫女はたいそう優しい人だった。傷ついたものを癒し、妖を討伐し、村の平和を維持し続けた」
「けれども戦も妖も収まることはなく巫女はとても苦しんでおった。」
「ある時村に一人の異邦人が訪れる。髪も瞳も村人とは違うその異邦人を村人は気味悪がった」
「でも巫女だけはその異邦人を受け入れ、異邦人もまた巫女だけには心を許していた」
「毎日戦い、祈っている巫女を異邦人はたいそう可哀そうに思った」
「でも巫女の仕事をやめさせるわけにもいかず異邦人は頭を悩ませていた。」
「ある夜異邦人が巫女に言った。神からお告げがあったと。そういって巫女の手を取って外に出る」
「そうして巫女の手を取ったまま一つの踊りを踊った。」
「すると妖どもはどこか遠くへ消え去り、戦もまたこの村から遠ざかっていった」
「村人はたいそう喜び、異邦人は巫女と二人で幸せに暮らしていったそうな」
「めでたしめでたし」
ユエさんの語りが終わるまで俺たちは誰も口を開くことはなかった。
しかし影のような妖という言葉は少し気になる・・・それはまるで侵略者のようだとなんとなく思ってしまった。
ある1側面から見た物語はこういう風になっています。
これがすべて正しいとは言いませんが間違っているとも言えません




