129;稽古
巫女というより踊り子の方が近いだろこれ
「ほらルナテンポ遅れとるよ。もっと素早く動かなあかんで」
ぺしんと手に持ったハリセンでルナの頭が叩かれる。音は小さいのに痛みは結構あるのかルナは頭を抱えてうずくまる。
「うぅ、暴力反対!お母さんのドS!」
「そない元気あるなら最初からもう一度やろか?」
ルナの抗議の声もユエさんがにっこり笑うだけでおさまってしまう。今のルナの姿はさながら水にぬれた子犬のように震えていることだろう。
稽古場の中央で動きやすい服装に着替えた俺とルナはユエさんの指導のもと稽古を進めている。
部屋の隅では演奏役の3人が譜面とにらめっこしながら3人でああでもないこうでもないと練習を進める。
委員長はピアノなどの稽古をしている兼ね合いでほかの2人に指導している様子が見受けられる。
半面一番苦戦しているのがサキでどうも音感がつかめないのか何度も音を外しているため委員長に注意を受けている。
まあその注意をしている委員長にとっては役得なのか緩み切った顔を引き締める努力を一切していない。
アカリは丁寧な演奏を心がけているせいでどうもテンポから少しずつ遅れてしまっているのかその癖を修正するのにてんてこ舞いのようだ。
そうして周囲を観察しているとまた怒られたらしいルナが懲りずにユエさんに口答えしている。
「僕ばっか怒られるのはずるいよ!はーちゃんの欠点とか何かないの?」
こいつとうとう俺に押し付け始めたぞ。さっきは共同作業とか言っていたがこんなのでは離婚の危機だぞ
「欠点言うてもな~。さっき教えただけやなのにもう完璧やから文句なんてあらへんよ」
「せやけど強いていうならあれやな、なんでそないに色っぽいんや?」
不思議そうな顔をしながらこちらを見るがそんなこと言われても俺はなんて返答すればいいんだよ。
「そうですわね。少し見させてもらいましたが昔外国で見た踊り子の踊りのように感じますわね」
練習に一区切りついたのか委員長がこちらの会話に参加しだした。
「バレエとかは綺麗って思うけどユイちゃんのは色っぽいって感想なんだよね」
アカリまでそんなふざけたことを言ってくるのが泣ける話だ。
「つかポールダンスとか躍らせても何もおかしくねーくらいの動きだろあれ」
サキに至ってはとんでもない誹謗中傷を言ってくる始末だ。終いにはなくぞこっちも。
「こちらとしては至って真面目に、普通に踊っているだけなんですけど」
このままではまずいと反論するためにも軽く振り付け通りに踊る。
指を伸ばし、軽い足取りでスキップをして、周囲に微笑みを投げかける。
これのどこに色気を感じるのだろうか踊っていてもどこがそれというのは分からない。
しかしながら俺が踊り終わるって周囲を見ればユエさん以外見とれているかのような表情でこちらを見つめている。
「あかんわ・・・これは凶器やわ。さすがゆみちゃんの娘さんやわ」
「こんなん見せたらますます恋敵増えてまうでルナちゃん」
そんな失礼な評価を下しながらルナを見つめるユエさん。
それに答えるかのように大きく頷いてルナは力強く拳を握る。
「くっ!はーちゃんは僕のなんだから奪われないように頑張らないと!」
意欲が湧いたのはいいのだが結局俺の色気に関して否定の意見が出ないところが悲しいところである。
小さな女の子が笑顔を振りまきながら誘うように手足を動かしていると思ってください。
そんな動きをしていればこういう感想になってもおかしくはありません




