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127:そそのかす

背中を押してくる母。

室内にはお香が炊かれているのかなんだか嗅ぎなれない匂いが充満していた。


8畳ほどの室内には無駄なものはなく壁に掛け軸が飾られているくらいの無機質な部屋と言えるだろう。


「落ち着くと言いますかなんだか不思議な香りですね」


委員長はそう言っているがどうにも落ち着かないのか室内をきょろきょろと見渡している。


ルナは頭の後ろで手を組んで面倒くさそうな表情を浮かべている。


「僕これ苦手なんだよね~。慣習だかなんだか知らないけどもっといい匂いがいいのになぁ~」


「あまり無粋なことを言うんじゃあらへんよ。そない言うなら部屋の匂いこれにしたろか?」


急に見知らぬ声が響いてルナが飛び跳ねる様にして距離を取る。さらっと俺を盾にするように俺の後ろに隠れようとするんじゃない。体が小さすぎて盾の役割なんて果たせないぞ。


「ひぃぃ!?勘弁してよお母さん!?そんなことされたら夜寝られないよ!?」


びくびくと俺の後ろに隠れながらルナが抗議の声を上げる。急に現れた声の主の方に視線を向けるといつの間にか俺の顔のすぐ近くまでその人は近づいていたため俺も驚いて変な声を上げてしまう。


「そないな言い方されたらお母さん悲しいわぁ。悲しいから今日の夕飯ピーマンづくしにしてしまうわぁ」


黒い髪をポニーテールで結び、腰まで伸ばした巫女服の女性はよよと泣き真似をしながらそんなことを呟く。


「じょ、冗談だよお母さん!だから後生だからそんなひどいことしないでよ!」


土下座せんばかりの勢いで目の前の女性に頭を下げるルナを見てこの家族の力関係が良く分かる気がする。


「安心しぃや、2割は冗談さかい。」


「8割本気じゃん!?嘘だよね!?嘘だと言ってよお母さん!?」


どれだけピーマンが嫌なのかもはや涙目になっている。そんなルナをなんだか恍惚な表情で眺めているのは気のせいか・・・


「ほんま本日はお越しいただきありがとうございます。不肖の娘のルナの母親のユエ言います。あんじょうよろしゅう」


ルナをからかうのに満足したのか頭を下げてこちらに挨拶をするユエさん。しかしながらその視線は俺の顔から一切動いていない。


「ゆみちゃんから話を聞いとったがほんまそっくりやわ~。そない似てはるとゆみちゃんが小さくなったみたいでかわいらしいわぁ」


俺の頭を撫でながら満足げに頷くユエさん。学生時代にどんな関係だったのか気になるところだ。


「むぅ~!お母さん!はーちゃんは僕のだからあげないからね!!」


頬を膨らませてユエさんから奪い取るように俺を抱きしめ犬のように唸りながら威嚇する。


大人の余裕なのかそんな娘の様子をとても嬉しそうに見つめながらユエさんはほほ笑んでいる。


「とらへんから安心しぃや。ところで婚姻はいつするん?はよお義母さんって呼ばれたいわぁ」


そしてこの母親とんでもない爆弾をぶち込んできやがる。


「こ、婚姻とか流石にまだそんなこと考えられませんよ!?」


「そうです!妹の結婚なんてお姉ちゃん許しませんよ!!!」


「ユエさんそんな風にからかってはいけませんからね!」


「そうだぞ!流石にそういうのは学校卒業してから考えるべきだからな!」


全員が一斉に反論しだすのを聞いて頬に手をやってからユエさんはルナの方を見つめる。


「ゆみちゃんの娘やさかい恋敵がえらい多いわぁ。ルナちゃん逃がしたらあかんよ」

「まだ言うとるいうことはまだ勝ち目があるいうことやから気張りや。絶対ユイちゃんげっとするんやよ」


マッチョの父に娘をけしかける母とはルナの家族はとんでもない色物家族じゃないだろうか。

ユエさんはSで狙った獲物は絶対手に入れたいタイプです

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