125:まっちょまん
筋肉もりもりまっちょまんだ
神主と聞くと物腰柔らかい印象を受けるが俺の視線に映るその存在はそんな印象を粉々に砕いていく。
脱いだ上着を腰に巻き付け、袴の下部分だけを身に着けた男性が丸太をぶんぶん振り回している光景を見れば流石に絶句するしかあるまい。
丸太を両手で持っているところからも幅1mくらいは下らないだろうか、長さだって下手すれば俺の身長くらいはありそうな丸太をぶんぶんと上下に振っているがその体幹は微動だにしていない。
何よりその脱いだ上半身の筋肉のつき方は神職というよりはまだ侍だと言った方が納得できる。
これで顔が厳つければいいのだが眼鏡をかけた優男といった顔のせいでギャップで脳がバグりそうだ。
ルナが手を振って合図を送るとこちらの存在に気付いたのか丸太を地面に置いてからこちらに歩いていくる。
地面に置くときにずしんと響くような音が聞こえたがあれは本当に人間なんだろうか?下手にこぶしとか受けたら今の俺は粉々になってしまうかもしれない。
ポケットにしまっていたと思われるタオルで体をふきながらこちらに近づいてくるとルナの父親は優しそうな笑みを浮かべる。
「こんにちは。アカリちゃんとサキちゃんは久しぶりだね。今日はルナのお願いを聞いてきてくれてありがとう」
先ほどまで丸太を振っていた人間とは思えないほどの理性を感じる喋り方に俺と委員長は困惑しっぱなしだ。
「えーっと・・・ルナから話を聞いているのが委員長さんって子とユイちゃんって子だね」
そうしてこちらの方に向き直った彼は俺の顔を見るなり思わず二度見をした。
そうしてなぜかため息をつくと額を指先でとんとんと叩き始める。
「確認するけど君ユミナじゃないよね?若返りの秘薬とか飲んでないかい?あるいはとうとうユエがとち狂って過去から誘拐されてきたとかじゃないよね?」
「お父さん流石に失礼だよ!?」
ルナもびっくりしているし俺もびっくりしている。というか奥さんに対する信用が欠片もないのか信用しているからそういう評価なのか分からないのが怖すぎる。
「さすがにそんな変な存在ではありませんよ。私はママの娘のユイです」
俺の返答に安心したのかホッと一息つく筋肉マン。
「だよね?その喋り方はユミナじゃなさそうか。本当にそっくりすぎるから幽霊か何かかと思ったよ」
だからと言ってあそこまで驚かれるのは心外だ。よほど何かトラウマでもあるんだろうか?
「もう!今度はーちゃんに酷いこと言ったらパパと口きいてあげないんだからね!」
ぷんすかと怒りながら俺の空いている腕に抱き着く姿を見て大慌てで謝罪しだす。
「やめてれくよルナちゃん!?そういうとこユエそっくりだね!?パパが悪かったら機嫌直しておくれよ」
そんな娘に弱いところを見せられて俺と委員長の緊張がようやくほぐれる。
見た目はあれだが世の男親と同じように、というかパパと同じようにこの人もまた娘と嫁には頭が上がらないということが理解できた。
物理で戦う系神職のお父さんです




