120:どうする?
どっちが主人公でしたっけ?
((彼女))の存在については常に頭を悩ませる存在だ。俺という存在を上書きするかもしれない存在なのだ考えない日は無いともいえる。
ただそこから((彼女))をどうしたいのかと考えたことは一度たりともなかった。
不思議な話だ。普通に考えれば邪魔な存在なのだ消したいとかそういう悪い思考になってもおかしくはないのにそんなことは考えたことすらなかった。
「・・・どうしたい・・・ですか。どうして今そんなことを聞いたんですか?」
ルナが声を出さなければ今後も考えることもなかったことなのでどうしてそう思ったのかは純粋に興味があった。
「だってさはーちゃん。僕の好きな漫画とかだとそういうのと戦うとか受け入れるってよくある話じゃん?」
「でもはーちゃんはそんなこと考えてなさそうだし。かといって受け入れるって感じでもなかったし」
「じゃあどうするんだろうかな~って思った次第だよ」
確かに漫画などでは自分の別側面の存在というのは割とよくある設定なのかもしれない。
少年漫画とか好きそうなルナがそういう思考になったのも満更不思議でもないだろう。
ただ今俺が直面しているのは漫画ではなく現実だ。確かに受け入れるという選択肢はないがかといって実体のない相手と戦うこともできないし俺に((彼女))と戦う気もない。
改めて考えてみれば俺は今後どうしたいのだろうか?
「僕としてははーちゃんもゆーちゃんも仲良くしてほしいよ」
「でも今のはーちゃんは無理そうだからならどうしたいのか聞いてみようって思ったんだ」
これがアカリやサキだったのならばこんな言葉は出てこないだろう。
のほほんとしているようでたまに本質を突くルナだからこそ出てきた話題なのかもしれない。
「・・・今はどうしたいのか分かりません。どうするべきなんでしょうか?」
我ながら情けない。答えを他人に任せるなんてのは男らしくない行為だ。
そんな俺をルナは黙って抱きしめる。それは最初にこの公園で出会った時とは真逆の光景だ。
「ダメだよはーちゃん。それははーちゃんが決めなきゃいけないことだもん」
正論だ。反論の余地もないほどにまっとうな返答だ。
「でもどんな結論を出しても僕は受け入れるよ!だってはーちゃんが選んだ選択だもん」
「僕の大好きな人が選んだ選択がたとえどんなのであってもはーちゃんを好きなことに変わりないもん」
「にっしっし。どう?かっこいいっしょ?はーちゃんはいつもかっこいいから今日くらいは僕もかっこよくなりたいんだ」
最後の最後で台無しにしてしまったがそのおかげで俺は少し笑えた。
どんな選択を取るにせよルナに恥ずかしいところは見せれないなと俺は改めて誓う。
「そういうところは本当に可愛らしいですね・・・ルナ」
ぼそっと俺が呟いた一言でルナはぴたりと硬直する。
「ね、ねえ今僕のこと名前で・・・」
「ご褒美の先出はここまでですよ。テスト、ちゃんと頑張ってくださいね」
俺か((彼女))かどっちが言っているかは分からない。でも今だけはどっちでもよかった。
「もう!はーちゃんの女たらし!!!!!!!」
いつものように感情豊かなルナに叱られながら俺は自然な笑みを零していた。
彼が攻略対象のように見えてしまいますね。
きっと普通の物語ではルナが主役になっていることでしょう。




