117:修羅場
はーれむなのかな?
空気が重すぎる。ルナもサキもアカリも何も呟くことはなくただ黙って俺の回答を待っている。
ルナは当然自分が選ばれるとでも思っているのか普段見たこともない冷たい笑みを浮かべているせいで別人のように感じる。
アカリは自信がなさげにこっちを見てはすぐ視線を反らすという行為を繰り返している。
サキは興味なさげな表情を浮かべているのだが俺の肩に置かれた手からは無言の圧力を感じる。
三者三葉の反応を示しているのだが俺の返答によっては血の雨が降りそうだ。
頭どころか胃が痛い話だ。一体俺はどんな悪行をこなしたらこんな地獄のような場面にぶち込まれるのだろうか。
ひとみさんもあいさんも興味津々な瞳でこちらを見つめてくる以上俺の味方はこの場所には存在しない。
緊張する場面というのは生きている以上何回か経験はあるのだが今以上に喉が枯れた場面は記憶にはない。
ぶっちゃけ三人のことは好きなのだがそれは恋愛面でということではない。
三人には助けられているし信頼もしている。その中で順位をつけるという発想自体がなかった。
((彼女))がどうかは知らないが少なくとも俺自身まだ恋愛とかそういうのは考えたこともなかった。
唇が震える。声を出すのがこれほど重かったことなんてない。それでもなんとか今の感情を言葉に出す。
「私は・・・その・・・まだ・・分かりません。ただその・・・三人のことは大好きです」
必死に言葉を紡ぐ。俺の返答に三人は小さくため息をつく。ただそれは失望という感情ではなさそうだ。
「そっかそっか。まだ分からないか~。にしし、しょうがないな~はーちゃんは」
ルナは表情を緩めていつものような笑顔で俺に頬ずりをする。
「ま、こういう奴だしな。今はそれでいいんじゃねーか?」
サキは歯を出しながら笑って俺の頭を力強く撫でまわす。
「でもちょっとホッとしました。嫌われてないみたいで安心しました」
アカリも自然に小さく微笑みながら俺の服をぎゅっと握る。
「ふふ、ちゃんと誠実に答えてもらえてひとみさんは嬉しいよ。そういう誠実なとこはイザーク先輩そっくりっす」
「まあ将来的に誰かは分からないけど今はそれでいいかな。」
ひとまずはなんとか乗り切れたみたいで俺は大きく息を吐いた。
そんな俺にアイさんが真剣な表情でこちらを見てくる。
「アカリもサキも色々大きなものを抱えている。でも嫌いにはならないでほしいかな」
「これからどうなるにせよ今後とも二人のことよろしく頼んでもいいかな?」
その瞳は二人のことを心配する紛れもない親の瞳だ。本当の親ではないけれどもそれでも家族なのだ。
その信頼にこたえるためにも俺は大きくうなずいてから答える。
「もちろんです。二人のことは嫌いになることはありませんから安心してください」
俺の返答にアイさんは満足そうに頷く。
なお俺の返答のせいで顔を真っ赤にしたサキとアカリからデコピンと腕をつねられるという愛の鞭をもらうことになったのだがそれはまあ甘んじて受け入れるしかないだろう。
彼にとってはまだ3人は恋愛感情を抱く相手ではありません。
まあ精神的に成人しているのでそれがストッパーになっていると思ってください。




