112:親への挨拶
けっこんあいさつかな?
しばらくして起き上がってきた3人とともに階下に降りたときにはもはや取り返しのつかない状況になっていた。
リビングに入れば赤飯の匂いが部屋中に充満しており、机の上にはお土産であろう高そうな料理が並んでいる。
とりあえず促されるままに席に座ったのは良いのだが俺の隣の席に座ったアカリが先ほどから一言も発することはなく赤面して下を向いたまま固まっている。
アカリの反対側に座っているルナはふくれっ面で俺の頬をつつくのをやめない。
助けを乞おうとサキに目を向けても肩をすくめて諦めろと言いたげな表情で助けは望めないらしい。
俺の正面に座っているひとみと名乗るサキとアカリのお義母さんはただ俺の顔をじっと見つめるだけで言葉も発しないためどんどん居心地が悪くなっていく。
「いや~ひとみから話を聞いて驚いたよ。サキちゃんとデートしてたかと思ったらアカリと同衾なんて・・・姉妹丼かな?」
奥の方からとんでもない発言とともにエプロンをつけたお義父さんがやってくる。
急に撃たれて慌てるサキを鋭い視線でルナが睨みつける。
「さ~き~ちゃん。どういうことか説明してくれるかなぁかなぁ?」
ルナに問い詰められてこちらに助けを求めてくるがそんなことよりこっちを助けてほしいものだ。
ふと腕に痛みを感じて視線を向ければ先ほどまで視線を下に向けていたアカリがこちらの腕をつねりながら頬を膨らませている。
「ゆいさんのうわきもの・・・」
もはや収拾がつかない状況の中で急に俺の対面に座るひとみお義母さんが笑いだす。
「ふ、ふひひひ・・・・この人たらしなところ先輩そっくりっす」
パーマのかかった長い髪は膝の部分まで伸びており、眼鏡をかけて猫背になっている目の前の女性は変な笑い声をたてながら俺の顔を再度見つめる。
「はじめましてユイさん。ひとみさんは森蔭仁美。サキちゃんとアカリちゃんのお母さんっす」
ぺこりと頭を下げる姿は見栄えを無視すれば図書館の司書のような物静かさを感じさせる。
「お父さんにはこの間あったっすよね?名前は森蔭藍。」
「あ、でもこれから家族ぐるみで仲良くするんならお義父さんお義母さんでいいっすよ」
物静かさのかけらもない言葉が飛び出してきてしまい思わずこちらはむせてしまう。
「お母さん!?急にそんなこと言わないでよ!まだそんな関係じゃないから!」
「そうだぞおふくろ!おやじと一緒で唐突すぎんだろ!?」
サキとアカリが息のあった反論を返すのだが隣に座るルナの表情がどんどん強張る。
「これは僕の存在意義の危機・・・こっちも家族紹介しないと・・・」
ぶつぶつと何やらとんでもないセリフを吐いている気がしやがる。
「聞いたっすかアイちゃん。"まだ"ですって。近い将来楽しみっすね」
「そうだねぇひとみ。ルナちゃんも入れて4人の娘ができるなんて楽しみだね」
火に油を注ぐかのようなこの行動のせいで暴れたサキにより二人にげんこつが振り下ろされるまで俺はこの何とも言えない空気の中をさまようことになるのだった。
サキとアカリのお義父さんは藍と書いてアイと読みます。
お義母さんの方は仁美と書いてヒトミと呼びます。




