109:私にとってのアナタ
希望の話
「ユイさんはきっと色々なものをまだ抱え込んでいるんじゃないですか?」
先程まで顔を赤らめていたアカリが真剣な瞳でこちらを見つめてくる。
「答えは言わないで良いですよ。きっと貴方はそれを受け入れてそれでも前に進んでいる」
「でも時々不安になるんです。今目の前にいるはずのユイさんがどこか遠くへ行ってしまいそうで」
「私もルナちゃんもお姉ちゃんもみんな貴方のことが好きなんです。」
「だから約束してください。いつかちゃんと全部話すって」
アカリの言葉に返答をしなければならないのに言葉が出てこない。
何度も何度も言われていることだがその希望に俺は答えることができない。
きっと話せば受け入れてくれることだろう。そうして彼女たちはまた3人で戦いの中に戻っていく。
そんなことは許されないし耐えれない。だからこそ俺はただ黙ってうなずくしかできない。
その約束が果たされることのないものだとしても今だけは彼女たちに心配させたくなかった。
「ありがとうございます。すいません寝る前にこんな暗い話をして」
俺のウソに気づくことはなくアカリは嬉しそうに微笑む。その笑顔が今はとても苦しい。
「ユイさんがいてくれてよかった。貴方が私たちの味方でいてくれてよかった。」
「本当は嫌なんです。戦うのも、傷つくのも。とってもとっても怖いんです」
「ルナちゃんやお姉ちゃんがいなければ私は弱いのでとっくに逃げていました。」
「でも私は弱いからお姉ちゃんやルナちゃんを助けられない。だから貴方の存在が私の希望なんです」
手を通じてアカリの震えが伝わってくる。気丈に接していても彼女たちはまだ若い。恐怖を乗り越えられているわけではないのだ。
「アカリだって十分強いよ。誰がなんと言おうとそれは私が保証する」
「ルナやサキさんのために後ろから指示を出す。それがどれほど勇気のいることか私は分かっている」
「嘆いて、悲しんで、苦しんで、でもアカリはまだ逃げずに立ち向かっている」
「だから私が断言してあげる。アカリだって私にとっては希望なんだよ」
知らなかった昔ならともかく今はもう知ってしまっている。アカリやルナやサキの努力を。
傷ついてもなお立ち向かい誰にも知られずに戦っている努力を。
後からのこのこと参加してきた俺にとって彼女たちこそが希望の光なのだ。
弱弱しく握っていた俺の手をアカリは強く握り返す。その顔には涙がこぼれている。
「やっぱりずるいですよユイさんは。そうやって私に欲しい言葉をくれるんですもん」
「アカリが望むならいつだってあげますよ。貴方の涙なんてみたくない。笑ってほしいですから」
この嗚咽も涙も明日には忘れよう。今だけはただ黙って受け入れるだけだ。
泣きながら強引にアカリは笑顔を作る。ああ、やっぱり涙よりも笑顔の方が彼女には似合っている。
「眠るまで・・・こうやって手を握っていていいですか?」
恥ずかしそうに問いかけるアカリに俺は笑って頷く。
「もちろん。要望があったらいつでも言ってくれ」
俺の言葉に安心したのかアカリは力を緩めつつ俺の手をぎゅっと握る。
しばらくそうやって受け入れていればすぐに彼女から寝息が聞こえてきた。
愛おしい表情でそれを眺めつつ空いた片手でアカリの頭を撫でる。
先程まではなかった眠気がようやくやってきて俺は眠るまでの少しの時間ずっと彼女の頭を撫で続けた。
アカリにとってユイの存在って自分たちを助けてくれる英雄のような感じです。




