108:寝る前に
おんなたらし
電気を消された部屋に静かな呼吸の音だけが響く。部屋に置かれたベットにサキとルナが寝ており床に敷かれた布団の上に俺とアカリが寝ている。
電気がついている間はうるさい程だったルナは寝つきがいいのかすでに寝息が聞こえている。
ルナの寝相が悪いのかそれともサキの方が悪いのかは分からないが何度も寝返りを打つ音が聞こえている。
俺としても静かに眠りの世界に行きたかったのだが隣にいるアカリの存在のせいでどうにも落ち着かない。
アカリの顔を直視できないために背中を向けつつ強引に瞼を閉じるがそれでも眠気が訪れる気配はない。
最悪このまま朝まで過ごすべきだろうかと悩んでいるとアカリから声をかけてきた。
「ユイさん、起きてらっしゃいますか?起きて居たらこちらを向いてくれると助かります。」
流石に寝たふりをするつもりもないのでアカリの声に答えて寝返りを打ちアカリの方に向き直る。
少し心細そうな表情をしていたアカリだが俺が起きていたのに安心したのかほっと一息つく。
「すいません。寝ようとしていたのに起こしてしまいまして」
ルナとサキに比べてとても丁寧な口調で謝罪の言葉から入る。
「気にしないでいいですよ。寝つきが悪くて眠れそうになかったので」
こうも謝罪されてはこちらの方が申し訳なくなってくる。慌ててアカリを宥めて話を促す。
「狭かったら言ってくださいね。本当はもう一つ布団を用意すればいいんですけど古くて捨てちゃったから今はないんです」
いくら体が小さいとは言え1つの布団に二人で寝ころべば流石に狭い。いくら正面を向こうが背中を向けようがアカリの豊満な胸が俺の体に当たることは避けられない事実であった。
「大丈夫ですからそこまで心配しないでもいいですよ。」
大きい体の割に根は小心者に近いアカリに接するときにはなぜか優しい気持ちで接したくなる。
無意識のうちに伸ばした手でアカリの手を握る。壊れ物を扱うかのように優しくその大きな手を握りこんだ。
「落ち着くまでお話にお付き合いしますのでゆっくり話してください」
軽く微笑みながらアカリにそう答えると俺の行動に戸惑っていたアカリが何度も深呼吸をする。
「もう・・・ユイさんはすぐそうやって・・・でもありがとうございます」
顔を赤くしながらもほほ笑む姿は大人びた姿の彼女からは想像もできないほど幼く見える。
「そうやってほほ笑んでいる方が可愛らしいですよ。私はそっちの自然な笑顔が好きですね」
アカリのよくしている苦笑よりも今の心からの笑顔の方が何倍も可愛らしいのは事実だが俺の口はこんなにも軽いものだったのか分からなくなる。
「かわ・・・もぅ・・ユイさんからかわないでくださいよ」
さっきも赤かったが今はそれ以上に顔を赤くして口をつぐませる。
そんなやり取りに思わず二人そろって笑ってしまっていた。
なんだかこんなやり取りがとても少女らしいなと心のどこかでついつい考えてしまう。
彼女に近づいているせいでついついこんな行動が増えてしまっています。
断じて昔の彼は女たらしではありません。




