103:私として
人それを丸投げと呼ぶ。
しっかりと体を洗ってからゆっくりと湯船に浸かる。
お湯をまとった腕を軽くこするとその感覚に満足げに頷く。
((彼))が目覚めている限り私は起きることはできない。あの戦いの時間は楽しいものだけれどそれでもこうして日常の時間に目覚めて体を使えるこの時間だって嫌いなわけがない。
体の主導権が((彼))にある以上は仕方のない話だからこそこういう時間はとても貴重なのだ。
「なんだか今のユイちゃんすっごく色っぽい気がするんだけど・・・」
長い髪をタオルでまとめたアカリがこちらを見つめてくる。その頬が朱を帯びているのはお湯のせいではないと思いたい。
「普段もたまーにそういうところあるけど今はもうなんか常時って感じがするよな」
サキが言っていることもあながち間違いではない。たまーに寝ぼけて私が起きることもある。
そういう時は彼の意に反して動いたりするのでそれを目撃していればそう思うのは無理はないだろう。
先程髪を洗ってから普段はうるさいルナは黙りこくってこちらをじっと観察しているのが分かる。
「私としてはみんなも十分魅力的だからついつい目移りしちゃうのだけど?こっちを意識してくれるのは嬉しいからありがとうって言っておくわね」
サービスついでに軽く微笑みながら3人を見れば3人とも慌てたように視線を反らすのが可愛らしい。
「うぅ~やっぱりなんか違う気がする・・・はーちゃんだけどゆーちゃんというか・・・」
顔を真っ赤にさせながらルナは自分の感じている違和感を口に出そうとしてもやもやとしている。
まあ私と((彼))は水と油。仲良くしているからこそこんな目立つ違和感に気づいても不思議ではない。
「私は私よ。みんなのお友達で仲間の硲優衣。3人のことが大好きな普通のユイよ」
私と((彼))は同じ存在だ。そのことを((彼))が認めなくてその根底が変わることはない。
性格し思考が真逆では会ってもその根底が変わっていなければそんなものはただの個性に過ぎない。
「そういうとこだぞゆーちゃん!そうやってす~ぐごまかそうとするんだから!!!」
別にごまかしているつもりはない。素で思ったことを言っているだけに過ぎない。もっとも参考にしているのがパパとママなのでどこまで正しいかは疑問が残るところである。
「私嘘はつきたくないしつかないでいるつもりよ?つまりは3人のことが好きなのも本当のこと」
口では((彼))も否定しそうだが今この環境を楽しんでいる時点で満更ではないはずだ。
あっちが友愛だとしたら私の愛はまた少し違うのだけれどそんなものは今は関係のない話だ。
せっかく3人を愛でていたのに鋭い頭痛がその幸せな時間の邪魔をする。
どうやら今日はもうこれでお終いらしい。名残惜しくはあるが気分が良いのでその指示に従うとしよう。
お湯の中から立ち上がり顔を真っ赤にしている3人の方を振り返る。
「のぼせてしまいそうだから先に上がるわね。ふふ、みんな顔真っ赤よ。そんなんじゃ湯あたりしちゃうわよ?」
からかうように声を出せば3人から抗議の声が上がる。
「「「誰のせいだと思ってるん(だ)(ですか)(だよ)!!!!」」」
そんな声を背中に受けつつそそくさと身支度を整え目を瞑る。
後始末を押し付けることになるが役得だろうし貸しがあるのだから甘んじて受け入れてほしいものである。
幸せな時間だったと感慨に浸っているうちに私の意識は馴染んだ暗闇へと落ちていった。
彼に対しては彼女はそっけないですが嫌っているわけではありません。
彼女にとってのこれも一つの愛なんです




