10:代償あるいは生贄
代償が大きい程見返りも大きい。
後退できない取引が今ここになされた。
「・・・そりゃ・・・助けられるなら助けたいが・・・」
困惑。それしか浮かばない。力があると言われても限度がある。
武器もない、身に着けるのはただのぼろいローブだけ。
そんな状況で侵略者に立ち向かうのはただの自殺行為に他ならない。
「大丈夫。君の資質は最高級なんだ。だからただ願えば良い」
「君が望めば力は必ず答えてくれるはずだ。」
根拠もなくラクーンは自信満々に呟く。
「望めばって・・・そんな簡単に言うなよ」
「目を閉じて願うんだ。そうすればなんとかなる」
疑いの目を向けつつ言われるがままに目を閉じる。
真っ暗な視界の中で思うのは彼女たちのこと。
傷つきながら世界を守ろうとしている少女たちの姿。
そんな光景を思い出しながら俺は((私は))願った。
ずきりと頭が痛む。それと同時に何かが壊れる音が聞こえたきがした。
そして・・・・((私が))目を覚ます。
いつの間にか手には二振りの刀が握られている。
やや不格好だが今の状況では仕方がない。まだ力をすべては解放できていないのだから
万全とは程遠い状況。先ほどまで恐ろしく感じていた侵略者が小さなアリのように感じる。
彼が受け入れてくれない以上((私))の目覚めていられる時間はそうまで長くないことは明白だ。
いつの間にか肩の近くに浮かんでいるラクーンに視線を映す。
「ドレスがないのは残念ね」
未だにぼろいローブだけをまといながらため息をつく。
そんな((私))を複雑そうな表情でラクーンは見つめる。
「・・・驚いた。そういう力の現れ方は想像していなかったよ」
今は眠っている彼に対しての憐みなのか悲しそうな表情をラクーンは浮かべる。
「時間はないわよ。彼の払った代償はとても小さいのだから」
「受け入れてくれさえすればもっと楽なんだけど強情なのよね」
((私))にとってとても他人事だ。
この状況はとても喜ばしいことなのだが彼にとってはとても受け入れたくないようだ。
((私))と彼は同じ存在なのにそれがとても不自然に感じる。
彼が受け入れてくれさえすればもっと力を出せる。
そうなれば彼女たちを助けることはとても簡単になるはずなのに今は武器を出すので精いっぱいだ。
その武器にしても本来の獲物ではない以上型落ち感が否めない。
「君の犠牲に感謝するよ。・・それで君をなんと呼んだらいいのかなヒロイン」
((私))は考える。だがその考えもすぐに止まる。彼と((私))は同じ存在なのだから悩む必要はないと気づいたからだ。
「別に。彼と同じ名前なのだから同じように呼んで」
そうぶっきらぼうに言いながらそういえば目の前のラクーンが自分の名前を呼んでないことに今更気づく
いつまでも名無しというわけにもいかないから今ここで名乗ろうと思った。
「自分の名前は硲勇伊。でも今はただのユイと呼んで」
これから長い付き合いになるであろうラクーンに初めて名乗るのであった。
今日の更新はひとまずここまで。
続きはまた今日?明日の夜にでも。
この物語のテーマは代償。何かを得るためには何かを失うという物語。
彼が力を使う度彼の存在は別の何かに変わっていく。
そんなちょっと他とは違うTSものの物語をどうぞお楽しみください。




