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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第88話 Story about ロザリオ 23-3 (本編最終話)

「そうよ。だって、あの年にも誕生日プレゼントは、ちゃんともらったでしょ」

「え? そうだっけ? 」

「もうっ! 何で覚えてないのよ。ほら、これよ」


 セシリアは、左腕をロザリオにかざして見せた。「これも、ずっと身に着けていたのよ。ロザリオにもらった端末。

 これが無かったら、住居艇のコンピューターをハッキングしてタックを目覚めさせることも、ボルシチを作って胃袋を掴むこともできずに、ずっと捕虜のままだったわ。


 これは私の、命の恩人よ。つまり、ロザリーが恩人なのよ。


 捕虜っていう人生最大の危機から、私を救ってくれたのは、ロザリーだったのよ。

 何もしなかったなんて、言わないでよ。ちゃんともらったんだから、こんなにも役に立つブレスレット型の端末を」


 しばらくポカンと見つめた後、やっとのことでロザリオは記憶を探り当てた。

「そうだ俺、あの日確かに、君の席の引き出しの中に、このブレスレット型の端末を入れたのだった。

 走って去って行った君の印象が強すぎて、すっかり忘れてしまっていたよ。

 君の席の上に私物を置いたのは、これを引き出しの中に入れるためだった。


 そうだ、そうだ。今思い出したよ。

 端末を入れた直後に、誰かに話しかけられて、話し込んでしまって、私物を君の席の上に置きっぱなしに・・・・・・。


 そこへ君が来て、私物をプレゼントと間違って、間違いに気付いて走り去って・・・・・・。

 ああ、そうだ、すっかり忘れていたけど、俺はあの日、君に誕生日プレゼントを、あげていたんだ」


「そうよ。間違えちゃった次の日に、引き出しの中の端末を見つけて、受け取ったわ。

 そんな私が、どうやってロザリーに傷つけられるっていうのよ。

 そうじゃなくて、ただ、夢に向かって行くロザリーの、背中を追いかける決意をしたのよ、あの日に。


 そして、アガデ星系の孤児院で働くのを決めて、そこでターロックの秘書にプルシャプラのことを吹き込まれて、信用はしなかったけど興味を持って、だから・・・・・・。


 まあ、ロザリーの存在が無かったら、プルシャプラには行ってなかったかもしれないけど、傷つけられて追い詰められたなんてことは絶対に無いわ。


 プルシャプラに行ったことを後悔なんてしてないし、そのおかげでタックにも出会えて、自分にしかない役割や、自分ならではの夢を見つけられたし。人生を充実させられたと、思っているのよ。


 まあ、拉致された瞬間は、怖かったけど」


「そう、なのか」

「そう。だから、ロザリーは私を傷つけてなんかいない。

 むしろ、充実した未来に向けて、背中を押してくれただけ。


 誕生日プレゼントも、毎年ちゃんとくれて、とっても役に立ってくれた。

 ブレスレット型端末は実用的な意味で何度も助けてくれたし、その前の誕生日にもらったスカーフは、心を支え続けてくれた。


 学生時代に好きだった人に、こんなにも背中を押してもらって、私はここまで来られた。

 幸せだと思っているわ。初恋は成就しなかったけど、それ以上の幸せを得たわ。

 最終的に結ばれたのが、その人じゃなかっただけ。それも、寂しくはあるけど・・・・・・」


「そういうことか。俺のやったことが、色んなことの原因になったし、タックに君をとられちゃう結果にもなったけど、傷つけてはいなかったんだ、俺は君を。

 だったらもう、何も気に病むことは無いな。ちょっと寂しいような、悔しいような気持ちは残るけど、君とタックを、俺は心から応援できる」


「うん、ありがとう。ロザリー。

 もと培養奴隷と結ばれるっていう、人によっては偏見を持たれる関係かもしれないけど、私もタックも、誰に何を思われようとずっといっしょにいる決意を固めたの。


 でも、ロザリーにだけは、分かって欲しかったし、応援してもらいたかった。

 今の言葉を聞けたから、私たちはもう、何も恐れずに旅立つことができるわ」


 心の痛みがすっかり消え、晴れやかな笑顔のロザリオが、同じくらい晴れやかなセシリアの笑顔を見つめた。

 笑顔のまま、静かに見つめ合った。幾千万の言葉より、心の伝わる沈黙が続いた。


「じゃ、行くね、ロザリー」

「うん、元気で」


 踵を返し、歩き出すセシリアを見つめた。

 その背中に、あの日の背中が重なる。


 だがもう、傷つけられて走り去るという印象はその背中からは感じない。

 今日のセシリアも、あの日のセシリアも、果敢に未来へと挑みかかる勇者の背中を、ロザリオに見せていた。


 セシリアの向こうに、スパルタクスが見える。目が合う。

 刹那の視線交差で、万感の思いを伝え切れる友情が、今の彼らにはあった。

(セシーを、頼む)

(任せろ。守り抜く。幸せにする)


 セシリアがスパルタクスの腕をとる。

 2人が並んで乗り込む。

 そして、電磁力がリニアモーター方式で、彼らの乗る連絡艇を宇宙へと押し出した。

 ロザリオの胸からも、寂寞が恐ろしいほどの勢いで押し出される。


「さあっ!」

 悲しみを断ち切るように、ロザリオは気合の声を発した。「こうしちゃいられないぞ。俺もあの2人に負けないように、頑張らなくちゃ! 」


 ただ見送りに来たのではなく、宇宙保安機構職員としての任務を負ってロザリオは、現地採用の臨時職員の肩書を得たシェリングと、ニーシャプールに来ていた。

 責任は重い。直ぐにも解決しなければならない課題を、両手にも余るほど抱えている。


「仕事にかかろうか、ロザリー」

 ゆっくと歩み寄りながら、シェリングがロザリオの背中に声を掛けた。


「おう、じゃあ俺、時間が惜しいから、もう行くとするわ! 」

 シェリングを振り返るや否や、駆けだしたロザリオ。


「どこへ? 」

 尋ねるシェリング。

 彼の問いが頭に届くころには、20歩ほど駆け抜けていた。

 (・・・・・・どこへ、あれ? 俺、どこに行くつもりだ? )


 行き先を決めてないことに気付いても、駆ける脚は止まらない。走りながら考える。


(ニーシャプール行政府の、サランジュとの懸案解決への手続きを確認するのが、最初に取り組むべき課題だ。

 だから、まず、行政府にもらった資料を確認しないと。

 その資料は、昨日シェリングが端末で受け取った・・・・・・ってことは・・・・・・、あっ! )


 ロザリオが最初にやるべきことは、シェリングの端末から資料を転送してもらうことだった。

 そのシェリングを置き去りにして、ロザリオは20歩分を駆け抜け、まだ走っていた。


 急ブレーキのロザリオが振り返ると、唖然としたシェリングが約30歩分の遠方に見える。


「おおい、シェリング、行政府にもらった資料を、転送してくれぇ! 」

 完全に裏目に出た激走を悔いながら、スペースポートの通路を、すっかり距離の開いてしまったシェリングのもとへと、ロザリオは一心不乱に駆けた。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2024/4/20  です。


 これまで投降した全ての作品において、本編最終話の後書きで同じことを書いていると思いますが、繰り返します。

 この後にエピローグアがありますので、是非ともそこまで読んでください!


 ここまで読んで「終わったー」と、思わないで下さい。ロザリオやセシリアのエピソードは完結しましたが、それで満足してしまわないで下さい。

 エピローグに目を通してこそ、本物語を読了したことになると主張させて頂きます。


 そしてできれば、この物語のシリーズ世界の中における意味に考えを巡らせて頂きたいと、勝手な願望を作者は募らせています。

 銀河系の1万年の歴史の一幕としてこの物語は描かれており、その前にも後にも歴史は続いていることを、心の片隅においてほしいのです。


 勝手ついでに、もう一つの願望を述べさせてください。

 最終話で多くの伏線がバタバタと回収されたのですが、それを読んで伏線が張られた場面を、読み返してみたいと読者様に思わせられていたらいいなあ、と切望しています。


 良い小説作品というのはきっと、読み返したいと思わせるものを言うのだと、作者は痛感しています。

 そうなるようにと、自分なりに工夫を凝らしたつもりです。


 できたという手応えも無いのですが、にもかかわらず、できていて欲しいなどと願ってしまっている始末です。

 この作品で読み返す気になって頂けないとしても、次の作品こそは、なんてことも考えています。


 どうすれば良いという具体的なアイディアは、今はないですが、懲りずに挑戦し続けようとおもっているので、次回以降の作品にも目を通してやって頂きたいと願う次第です。

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