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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第80話 Story about ロザリオ 21-1

「繰り返すぞ、C-683よ。無防備な居住施設のみを攻撃しろ。殺しまくれ。

 プルシャプラの住民どもを、女も子供もお構いなしに、虫けらの如くに殺しまくってやれ! 」


 興奮して、どんどん口汚くなっていく執政官の背中を、ロザリオはシェリングと並んで見ていた。

 通信機へと、夢中で叫んでいるゲオルグ・ガルシアは、彼の背後で部屋の扉が開いたのにも、そこに2人が姿を見せたのにも気付かず、指示を続ける。


「防衛に必死の保安機構は、帝国などと戦った時と、全く同じ戦術を繰り出すはずだ。

 プルシャプラへの攻撃には、対応できぬはず。住民の大量虐殺は、確実に成功するぞ。


 そして住民を大量虐殺されれば、奴らは頭に血が上って算を乱し、付け入る隙も生じるはずだ。

 だからお前は、プルシャプラで丸腰の住民を、ただただ大量虐殺することだけに、邁進するのだっ! 殺せっ、殺せっ、殺せぇぇぇっ! 」

「ガルシア、貴様ぁっ! 」


 たまらず叫んだシェリング。びくりとして振り返るゲオルグ。

「な・・・・・・お前たち、なぜ・・・・・・いつから、ここに・・・・・・?

 ポドルムに乗って、はるか彼方へと離れて行ったのでは、なかったのか? 」


「お前こそ、何なのだ今の発言は!

 プルシャプラの執政官であるお前が、なぜプルシャプラでの虐殺を、命令しているのだ! 」


「どういうことか、説明願えますか、執政官ガルシア殿」

 激昂するシェリングの隣にいる分、ロザリオは冷静に務めざるを得なかった。


「あ・・・・・・くっ・・・・・・何故お前たちが、何故ここに、ポドルムで、遠くへ・・・・・・」

 呆然とした様子で、同じ言葉をゲオルグ・ガルシアは繰り返した。


「では先に、そちらの質問に答えましょうか」

 冷静を通り過ぎた、凍った声でロザリオは告げた。「ここの通信機が、情報漏洩に使われた形跡があるとシェリング君が突き止めたので、5日前から見張っていました」


 ここというのは、プルシャプラを周回する軍事施設の一つだ。

 使われなくなって久しく、メンテナンスですら、行われていないはずのものだった。


 シェリングは、内通者は必ずプルシャプラの保有する通信機を使って、宙賊と連絡を取っているはずだと考え、仲間たちを総動員し、何千とあるそれらに虱潰しの調査を実施した。


 その結果、この施設を突き止めた。

 通信履歴や使用記録は消去されていたが、電力の供給履歴などを調べると、使われるはずのないそれが頻繁に使用されていると判明した。


 先ほどのスパルタクスへの指示から考えると、攻撃対象からは除外されるはずの施設でもある。

 プルシャプラの住民が皆殺しにされても、ここにいれば安心だろう。


「5日前・・・・・・ポドルムが去った時、それに乗って行ったと思わせて、お前たちは、実際はここに・・・・・・」

 憎々しい目で、あえぐように、ゲオルグが言葉を搾り出した。


「ええ、そうです。あなたを疑っていたわけではありませんでしたが、プルシャプラの人々には、ポドルムと共に我々もここを離れたと、思わせるように仕組みました。

 内通者を炙り出すためです。

 思惑通りとなりましたが、内通者があなただったとは、驚きです」


「執政官ガルシアっ! なぜだ! お前もここの住民なのに、なぜ、こんな裏切りを・・・・・」

「う・・・・・・あぅ、あ・・・・・・」


 シェリングの剣幕に打たれたように、目を泳がせ、ガタガタと肩を震わせ始めたゲオルグは、まだ当分、話し出すことなどできそうにない。

 それを見て取りロザリオは、自分から語ることを選んだ。


「内通者であるどころか、あなたは、アフシ族の長であり、スパルタクスたち培養奴隷のロードでもあった。

 さらに、培養奴隷を通じてターロックにも繋がっていて、セシリア・ヴェールの拉致にも関与したのではありませんか?


 ここまでのスケールとなると、背後には相当に根深く込み入った事情があるのだと思いますが、お話し頂けませんか? 」

「し・・・・・・知らん! ターロック・マクロクリンなど、私は・・・・・・」


 反射的な反応だった。

 計算も計画も無く、咄嗟に、否定しなければと思い、叫んだらしい。

「もう、これだけの秘密が明るみに出てしまった状況で、そんな局所的な秘密を守ろうとすることには、意味は無いでしょう」


 その時、部屋に据え付けの通信機が、呼び出しの電子音を鳴らした。

 ゆっくりコンソールに歩み寄ったロザリオが、それを操作する。


「空母リンドスより、オーエン・ブレトン少佐が発信している。

 そちらは何者か? どこに繋がった? 」


「ロザリオです。例の、目を付けていた軍事施設に、少佐の通信は繋がりました」


「つまり、解読の結果判明したアドレスは」

 この声は、ショーン・ブランケットだった。「プルシャプラの軍事施設の一つだったわけだ。

 ターロックが、惑星国家パータリプトラで使っていたオフィスに残されていた暗号データが、プルシャプラと通信するためのものだったと、証明されたのだな」


「そうだな、ショーン。

 お前たちが、ターロックのオフィスから暗号データを持ち出し、解読してくれたから、プルシャプラとターロックの繋がりが、裏付けられた。


 しかもここは、ゲオルグがアフシ族の長としてバクトラ王国の族長評議会にリモート参加したり、ロードとしてスパルタクスたちに命令を出したりするのにも、使われていた。


 使われていないはずの施設を、誰にも気付かれずにこんな目的で利用できるのは、プルシャプラの執政官以外に有り得ない。

 黒幕が執政官なのは、間違いないだろう」


「本当かよ、ロザリー。プルシャプラの執政官が、プルシャプラの交易船からも略奪をしていた宙賊の頭であり、プルシャプラに送られていたセシーを拉致した培養奴隷のロードでもあったのか?

 とんでもない裏切りだし、意味不明の背信だな」


「その意味を、今問い詰めているところだ。

 そろそろ落ち着いてきて、事情を話せる状態になったのじゃないかと思うのだけど・・・・・・いかがですか、執政官ガルシア殿? 」


 震えがやや小さくなり、眼も座り、深く大きな呼吸をくり返すようになっていたゲオルグは、ロザリオの問いかけに、ニイと不気味な笑みを浮かべた。

「そうだな、洗いざらい白状するか。

 お前のせいで、何もかもが破綻してしまったのだからな」


「余計な発言をするな! 早く説明しろ! 」

 いきり立つシェリングをちらりと見て、ゲオルグは呼吸を整えた。

 シェリングの肩を叩きながら、落ち着くようにと、ロザリオは目で訴えた。


「アフシ族というのはだな、およそ百年前に、このプルシャプラを追放になった一派の、成れの果てだよ。


 私の家系の祖先は、追放された連中にとってリーダー格でありながら、そのことをプルシャプラの者どもに知られていなかったことで、プルシャプラに留まり続けることができたのだ。


 そして我が祖先たちは代々、ここの執政官を務める一方で、追放された者たちを航宙民族として再編成した上に、それを遠隔で指導するリモートの族長をも兼務したのだ。


 アフシ族に培養奴隷の生産や貸し出しの事業を行わせ、その収益でバクトラ王国での中核ポストを買収することも、リモートでの指導でやり遂げた。

 プルシャプラにおいて、執政官の職を務めながらな」


「なぜそんなことを?

 お前は、航宙民族を心底嫌っていたではないか、根絶やしにすべきと常日頃から力説するくらいに? 」

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2024/2/24  です。


 本物語では、一番読者様にびっくりして頂かなくてはならない場面でした。

 まさに作者としての力量が問われる場面だったわけですが、いかがだったでしょうか?


 ロード(アフシ族長)=ゲオルグ・ガルシアというのに、気付く人は気付くのでしょうが、大多数の読者様にとっては意表を突く展開になっていて欲しいと、作者としては祈らずにはいられません。


 ここでびっくりして頂くには、ある程度ゲオルグ・ガルシアを強く印象付けておく必要がありましたが、あまりうるさくし過ぎると、伏線であることがバレてしまうのではないかと危惧してしまいます。


 ゲオルグの登場頻度や登場した際の描き方には、作者なりに気を使ってきたつもりです。

 ロザリオにしつこく絡んだり、優秀な執政官ぶりをアピールしたりも、ここで読者様にびっくりしてもらいたい一心で描いた場面です。


 プルシャプラから、百年前に追放された人々がいたことも、読者様にご記憶頂かなければならない要素でした。

 こちらは、びっくりというより、歴史的な壮大さというものを演出したい気持ちが強かったです。


 定住民と航宙民族の間に、歴史に根差した思いがけない因縁があったことが終盤に来て明らかになることで、壮大な過去を背負った存在という印象を、航宙民と定住民の双方に対して抱いてもらえないだろうか、という試みです。


 このあたりは、何度読み返しても不満や不安が収まらないのですが、全く思惑通りにいっていないことも無いのではないかと、作者としては期待しています。いかがなものでしょうか?

 アフシ族となる一派が追放になるシーンを、もっと詳細に描くべきだったか、ガルシアとロザリオの絡みをもっと多様に描くべきだったか、いやそこまでやるのはクド過ぎるか、等々と心の中では未だに迷走を続けています。


 こういう正解のない問いに自分なりの答えを出していくということが、小説の執筆において最も難しい部分であり、同時に最も楽しい部分でもあるなと感じています。

 こういうのを誰かが一緒に楽しんでくれると、もっと楽しくなりそうだと思っているのですが・・・。

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