第79話 Story about スパルタクス 18
「培養奴隷の駆る戦闘艇団は、あっさり片付いたぜ」
ドラヴァレットの報告に、コックピットに収まったスパルタクスがうなずいた。
「王国下のほとんどの部族が、既にこちら側だからな、培養奴隷軍団があっさり片付くのも、当然だな。
やはり宇宙保安機構に支援を約束されたことは、大きかったな。
マゼーパ族に付けば、アールバード族ともガウベラ帝国とも敵対せずに済む上に、保安機構も味方だ。
プライドの高い部族でも、それくらいの損得勘定はするものだな」
つい最近まで使役していた培養奴隷が使っているものについては、セシリアの技術を導入することで、住居艇のメインコンピューターへのハッキングが可能だった。
マゼーパ族の味方になった部族が使役していた培養奴隷の全員に対して、それは実施された。
標的となった培養奴隷たちは、ハッキングされたコンピューターがオペレートする睡眠学習装置に見せられた夢によって、ロードによる洗脳を解かれた。
スパルタクスたちが経験したのと、同じような行程をくり返すことによって。
ロードが指定した座標に集結した培養奴隷の半分以上が、この方法で洗脳を解かれた上にポフダンやドラヴァレットの説得も受けて、マゼーパ族のもとで自由を獲得する道を選んだ。
洗脳を解かれていない残りの培養奴隷たちには、洗脳を解かれている半分以上の培養奴隷たちが、不意打ちを仕掛けた。
その結果は、あっという間の制圧完了だ。
ドラヴァレットが今報告したのが、この件だった。
「こうなったら、アフシの族長が頼りにできるのは、お前たちのスモールスクワッドだけってことになるわけだな、タック」
「ああ。もうしばらくロードに忠誠を誓っているふりをして、プルシャプラに接近するぞ。
培養奴隷の軍団が現れないので、仕方なく自分たちで戦うしかなくなったアフシ族の軍勢が、間もなく宇宙保安機構と対峙するだろう。
俺たちは、宇宙保安機構の背後を突ける方角からプルシャプラに接近している。
俺たちの動きは、ロザリーを経由して保安機構の空母にも伝わっているはずだけど、気付かず意表を突かれたように振舞ってくれるはずだ」
「回りくどいやり方をするのだな、宇宙保安機構っていうのは。
普通に戦っても、連中はアフシ族なんぞ、圧倒できるはずだろ? 」
ドラヴァレットは疑問の声をあげるが、スパルタクスは納得している。
「俺たちの最終目的が、アフシ族の打倒だけなのなら、普通に戦えばいい。
だが、そうではないだろ? 全ての勢力の共存共栄と、緩やかな連合国家の樹立が、俺たちの真の目的だ。
それを成すには、回りくどく面倒臭いやり方も、必要なのさ」
「はははは、そうか、よく分かった。じゃあタック、気を付けて行って来いよ。
その緩やかな連合王国には、お前が必要だからな。こんなところでくたばるなよ」
「了解。では、行ってくるぞ」
通信を切ると、スパルタクスは最後のスペースコームジャンプを実施した。
宇宙をひっかく七色の光と化した輸送船が、数十光年を跳躍した。それに搭載されている、スパルタクスたちの戦闘艇も。
「マイロード。C-683、ただいま参上したしました。
我がスモールスクワッドを率いて、すぐにも作戦行動に入れます」
「おおっ! C-683か! よく来てくれた。
他の培養奴隷どもは、何故か分からんが、1人も現れぬ。どいつもこいつも、原因不明の消息不明だ。
その一方で、大王クルトゴルのヤツは、馬鹿かと思うような大軍勢を率いて来ておる。
プルシャプラ攻略に王国の命運がかかっているとの認識から、自らの一族を率い、王国の各部族にも召集をかけて、大軍勢を仕立てて参陣しておる。
このままでは、プルシャプラ攻略の喜悦を、大王に横取りされてしまいかねない。
それでは、我らの悲願が果たされぬ。
もうお前しかおらぬ、お前だけが頼りだ、私には」
「マイロード、お任せください。私のスモールスクワッドが健在である限りは、必ずやロードの悲願を叶えさせて御覧に入れましょう。
さあ、詳しいご指示を」
「よし、C-683よ。お前はプルシャプラの住民を、ただ殺しまくれば良い。
持てる兵器の全てを、無差別に滅多打ちにして、1人でも多く殺せ」
「うっ、そ・・・・・・それは、虐殺が目的なので・・・・・・? 攻略し、支配するのでは・・・・・・? 」
「支配など、興味はない。殺戮だ。皆殺しだ。
私の野望は、プルシャプラの者どもを一人残らず虐殺して、根絶やしにしてやることだけだ! 」
「そう・・・・・・なので、了解です、マイロード。
では、プルシャプラでの大量虐殺にもっとも効果的な接近経路を、ご指示願います。
私の現在の座標は、お分かりのはずです。宇宙保安機構の背後を、首尾よく突くことに成功しております。
アフシ族の軍団から目を離せない保安機構は、我らには気付いてすらおりません。
この状況を有効活用できる接近経路を、ご指示下さい、マイロード」
「うむっ! そうか! 上出来であるぞ、C-683。気付かれずに敵の背後を扼するとは、見事である。
では、そのまま後に示すコースで接近し、プルシャプラを攻撃しろ。
保安機構には構うな。あんな、別格の兵器水準を誇る敵を相手にするのは愚だ。
プルシャプラの住民を、殺しまくることだけを考えろ」
通信機から、おぞましい命令が続く。「軍事施設は、全て稼働しておらぬ。マラカンダとの関係解消によって、稼働できぬ状態になっておる。
居住施設は完全に無防備だから、ひたすら攻撃して虐殺すればよい。
繰り返すぞ、C-683よ・・・・・・」
今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2024/2/17 です。
ワープを実施すると、宇宙をひっかく虹色の光が生じることになっています。
ワープ自体が荒唐無稽なので、この辺の描写も当然、荒唐無稽です。
ワープをしたら何がどうなって虹色の光が生じるのか、何の考えも持ってはいません、悪しからず。
屁理屈を捻り出す努力すら、このことに関してはやろうとも思っていません。
もし仮にワープが実現したとしても、パッと消えてパッと現れる感じになりそうな気がしているのですが、それでは愛想が無さすぎるなと思いました。
単純に小説としての演出効果だけを考えて出て来たのが、虹色の光という発想でした。
この描写は、本シリーズの別作品にも登場しており、そこではもう少し詳しいワープの手順も示してありました。
もちろんそれらも全て荒唐無稽です。
どの作品かは明言しませんが、そこでは、直進速度と直進加速度と回転速度と回転加速度と強磁場という5つの要素を揃えれば、ワープが実施可能ということにしています。
それはあくまで、スペースコームの中でのみ起こる現象となっています。
地球を含む太陽系はスペースコームの外なので、ここでそんなことをやっても、ワープはできません。
物語世界内でも、人類が太陽系に閉じ込められている間は、こんな方法でワープができるなんて、誰も思いもよらなかったでしょう。
スペースコームという時空が著しく歪んでいる場所だからこそ、上記の5つの要素をそろえることでワープができてしまう、というのが物語世界の設定です。
科学者さんに言わせれば、時空がどんなに歪んでようが、そんな方法でワープなどできてたまるか、とされてしまいそうですが、そこは小説家の特権ということで・・・。
時空のゆがみというのは、SF世界ではよく使われる都合のいい現象で、タイムスリップしたり超能力を獲得したりと、荒唐無稽の限りが尽くされている感があります。
戦国自衛隊では、時空の歪みに遭遇したという理由だけでタイプスリップしてしまっています。
なぜか見事に自衛隊だけがタイムスリップし、その周囲にあった草木などの物体はタイムスリップしません。
SFだからといって、そこまで都合よくて良いのか、と作者なりに考えました。
そこで、上記の5つの要素を時空の歪みに追加して、ワープの発動要件にしたわけです。
そのことをもって、戦国自衛隊よりはリアリティーのあるものを描いたと作者は独りよがりに満足しているのですが、いかがでしょうか?
いずれにしても、荒唐無稽であることに変わりはありません。
何度も言っていることですが、荒唐無稽を極力排除することを基本方針とする本シリーズにおいて、超光速移動に関してのみは徹底的に荒唐無稽です。
銀河系を舞台にSF小説を描くには、それはどうしても避けては通れないので、何卒ご了承頂きたいです。
そんな中で、少しでもリアリティーを損なわずに物語世界を創り上げるべく、作者なりに工夫していることは、ご認識頂きたいと願っています。




