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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第16話 Story about ロザリオ 2-4

「何であんなにも、強硬になっちまったんだろうな、ショーンのヤツは」


「宙賊による被害を、割り増しで喧伝するニュースソースも多いからな。

 殲滅が可能だなんて根拠の無い主張を、もっともらしく言いふらすヤツも後を絶たない。

 そんなフェイクニュースに踊らされて、安易な強硬論に走っちまったのだろうぜ」


「言論の自由も、考えモノだよな。そんな出鱈目な発言が野放しになるなんて。

 それに、保安機構の仕事が宙賊対策だけなんてのも、ショーンのヤツは養成所で、何を聞いていたのだろうと思うよな」


「全くだぜ。

 ガウベラ帝国の影響を受けて地球連合との敵対に傾く定住民とか、地球系と宇宙系が混合している天体における内部闘争とか、定住型宇宙系人類どうしでの歴史的な対立とか、機構の抱える難題は無数にあるのにな」


 話すうちに、強加速が十分後に開始されるとの、アナウンスが流れる。

 その数分後には、噂のショーンが顔を見せる。

 勧誘は切り上げ、彼も座席に付いて加速に備えた。


 サイモンとは反対側の、ロザリオの隣に腰を下ろすや、まくしたてる。

「おい、ロザリー。本当に良いのか? 俺たちのサークルに入った方が、失踪したお前の友達を探すのにも、有利かも知れないぜ」


「何だよそれ。セシーが宙賊に襲われたなんて情報は、聞いてないぞ」


「北辺暗黒天体群域近辺での失踪に、宙賊が関わっていないわけ無いだろ、ロザリー」


「仮にそうとして、闇雲に宙賊を蹴散らしても、セシーを取り戻せるとは思えないぜ」


「ああ、もう。何でそう、ややこしく・・・・・・。とにかく蹴散らしてみれば良いじゃねえか」


「で、どの宙賊を蹴散らすんだ? 少なくとも何百って集団が、知られているぜ。

 その全部が神出鬼没で、所在や行動範囲が明らかなのなんて、一つもないんだ。

 どこに向かうんだ、宙賊を蹴散らす部隊は? 」


「そんなもん、手あたり次第にきまっているだろ。

 適当に宇宙を走り回って、見つけた宙賊を、手当たり次第に蹴散らすんだ」


「適当に宇宙を走って」

 サイモンが、口をはさんで来た。「宙賊に当たる確率なんて、ごくわずかだぜ。

 文字通り、天文学的に低い確率だ。

 何年も走り回って、1回当たれば幸運だ。宇宙は広いんだぜ」


「でも、宙賊による被害の報告は、ひっきりなしじゃないか。

 そんな宙賊なら、適当に走り回っても当たるだろう」


「当たるかよ」

 ロザリオも反論する。「あっちが無防備な宇宙船を見つけて、必勝を確信して出て来た時だけが、宙賊との接触機会だと思うべきだ。

 こっちから当たろうとしたって、絶対に当たらない。

 神出鬼没ってのは、そういうことだぜ」


「ああもう、お前たちときたら、何でそう・・・・・・。

 じゃあお前たちは、失踪した友達のことは放っておくっていうのだな。薄情なヤツらだ! 」


 ショーンが頭を抱えると同時に、加速重力を感じ始めた。

 徐々に強まり、厳しくなり、下腹に力を籠めなければ耐えられなくなる。

 ロザリオの心にも、重たい圧力が。


(セシーのことを、放っておくのか、俺は? )

 ショーンの言葉が突き刺さる。


 経験と実績のあるチームに任せるべきと、いくら自分に言い聞かせても、やはり納得し切れてはいない。

 それ以上に、反戦派や強硬派の活動に目を奪われている間、セシリアのことが頭から離れていたのを自覚してしまった。


 ずっとそればかり考えているわけにはいかないが、頭から離れたことを自覚すると、罪悪感が芽生えるのをどうしようもない。

(セシーを、放っておいてしまった)


 走り去る背中。

 彼が傷つけたセシリアが、廊下を駆けて行く。

 そのままロザリオは、セシリアを放っておいてしまった。


 ふと、オカリナの音色が頭の中に響いた。セシリアが昔、奏でてくれた音が。

 いつだったか手料理を振舞われ、それを食べている間に吹いてくれた。

 公設スクール時代の一幕だ。


 ボルシチとか言ったか。味は覚えていない。

 オカリナの曲目も忘れた。

 そのくせ、オカリナを吹く姿については、はっきりと、鮮明に覚えている。


 オカリナを両手で持つために構えた腕が、胸のふくらみを寄せ合わせていた。

 指が躍動するのに合わせて、寄せられた胸が小気味よく揺さぶられていた。

 ボルシチも曲もそっちのけでロザリオは、セシリアの胸元だけに釘付けだった。

 弾むような胸の揺れに、心を揺らされるばかりだった。


(ずっと自分勝手だった)

 改めて思い起こしたこれまでの自分に、ロザリオは恥じ入る。


 彼女に魅惑され、色香に心を揺らされ、楽しまされ、慰められ、勇気づけられてきた。

 沢山のものを与えられた。


 それなのに、そんな彼女の気持ちに、彼は応えなかった。

 夢を言い訳に、知らぬふりを決め込んできた。

 傷つけて、走り去った彼女に、何もしなかった。


 そして今は、失踪した彼女を、探すことすらしない。

 背中のライン、オカリナを吹く胸元、パーソナルスペースを侵略する笑顔、それらに全く値しない自分。

(何なんだ、俺は! )


 それでも、のしかかる荷重は、彼を別の任務へと運んでいる。

 更に更に強くなった加速のGが、セシリアに応えられないロザリオを、セシリアと関係のない使命へと連れ去る。


 オカリナのセシリアが、いつまでも揺れていた。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2022/12/3  です。


 セシリアがロザリオに「ボルシチ」を手料理として振舞った、という話が出てきました。

「ボルシチ」がどこの地域の料理かを、多くの読者様がご存知であることを期待して、登場させています。


 その地域に対する読者様のイメージを借りてきて、この小説世界に投影してもらえたら、という目論見が有ります。

「ボルシチ」がどんな料理か、はっきり分からない人でも、なんとなくこの地域のイメージは心に浮かんでいるのではないか、なんてことも考えています。


 ですが、もし全くご存知でなく、何のイメージも思い浮かばない方がおられるなら、一度軽くググって頂けると幸いです。


 昨今は、何かときな臭いイメージで話題に上ることの多い地域ですが、もちろんそっちではなく、その地域が昔から伝統的に持っているイメージを、この小説世界に投影してもらいたいのです。


 小説というのは、映画や漫画と比べると情報量が遥かに限られているので、こんなふうに現実世界の何かのイメージを借りてくるなどしないと、表現しきれないものだと作者は考えています。

 小説を通じて知識を広げるという意味でも、分からないことがあったらググってみるくらいは、やって頂くことをお勧め致します。


 作者の個人的願望でした。偉そうに聞こえたら申し訳ないです。

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