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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第五章 生活
69/394

§068 釈明

悪徳商人ハムリックは決闘の代理人に指名するという男の家へ案内した。


この家はアムルの商店からはそう離れていない。

それはまあ当然か。


身内は店に近い方が仕事もやり易いだろう。

用聞きなら注文があったら即座に動かなければならないし、

この距離感は妥当と言える。


暫くして中から細身だがガラの悪そうな男が出て来た。

決闘に指名されるのは嫌々そうだ。


だがハムリックに指を差されてこちらを見た途端、

だるそうな顔から笑みに変わった。

チクショウ、そんなに弱そうに見えるのか自分は。


ま、まあ、油断を誘っているのだ。

そうなのだ。

これはそういう手なのだよ?


身なりの良さそうな貴族出のヒョロヒョロ坊ちゃん商人が、

身の程を知らず名誉棄損で決闘だと騒ぐ。

どう見たってカモじゃないか。

素晴らしい。


素晴らしく悲しい・・・。


おかしいな、真面目に生きているつもりなんだが。


  「あいつを殺ればいいってのか?」

  「そうだ、決闘だから、殺してしまって大丈夫だ」

  「いいけどよ、取り分決めさせろよ」

  「ああ、4:6でどうだ」

  「いや、実際戦うのは俺だぜ、2:8だ」

  「流石に取りすぎだ、あいつは商人だ。

   あんな奴で苦戦なんてしない、3:7だ」

  「分かった、まあそれでいいだろう」


堂々と取り分を決める2人の会話が聞こえる。

格下扱いされるのは腹が立つが、それは逆に好機になる。

嬉しいやら悲しいやら、何とも言えない。


騎士のパーティに2人が入った。


 ・サヴァス

 ・マリク

 ・ユウキ=フジモト

 ・ハムリック

 ・タイラン


そうか、この冒険者はタイランと言うのか。

カッコいい中二病くすぐる名前だ。

顔はチャラ男なので恰好は良くはない。

残念だよ、お前が地に落ちるのが。


大体、こういうチャラキャラは昔から出落ちと決まっているのだ。

対して、ゴツ目の重キャラはいい所をしっかり押さえていく。

そんな奴はいない。


・・・いたわ、ルスラーンだ。


しかし、自分の人生には今後も登場しないので、

そんなシーンをお目に掛かる事は無いはずだ。

だよ、ルスラーンが畑仕事してたり水汲みしたりしてるのは。

うちには既に残念なジャーブがいるので十分です。


サヴァスがフィールドウォークの詠唱をし、

5人で騎士団詰め所に移動する。


マリクは準備のためなのか、そのまま兵舎の方へ走っていった。


パーティが解かれ、その場で待つように指示される。

今のうちに装備を整えよう。


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人   Lv30

  設定:商人(30)探索者(37)英雄(27)騎士(22)

     賞金稼ぎ(22)暗殺者(1)

  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)色魔(1)奴隷商人(1)

     武器商人(1)防具商人(1)農夫(1)

     薬草採取士(15)錬金術師(1)料理人(1)村長(1)

     盗賊(1)


   看護の指輪(HP回復速度上昇 状態異常抵抗)

   硬直のエストック(石化添加 空き) 竜革のブーツ(空き)


 ・BP128

   鑑定          1pt   アクセサリ5     31pt

   キャラクター再設定   1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt   敏捷         30pt

   6thジョブ     31pt   抵抗         30pt


デュランダルを出さないと、かなりのボーナスポイントが余る事に気付く。


なるほど、これはミチオ君もなるべく使いたがらない訳だ。

そして、この男と戦っても経験値は得られない。石化を狙うからだ。

従って経験値系のポイントには目もくれずステータスを伸ばした。


そして、タイランを鑑定した。


 ・タイラン  人間  男  37歳  冒険者  Lv41

   鋼鉄の剣 鉄の鎧 鉄の籠手 鉄のグリーブ


うーん、殺る気満々だねえ。こっちは剣しか持ってないよ。

しっかり固めてくれた方がダメージで殺さないから都合がいいのだけど。


それより身代わりのミサンガは無さそうで安心した。

冒険者なら戦闘スキルは無いし、

スピードとダメージだけ気にすれば何とかなる。


こちらが受けるダメージは、即死でなければ看護の指輪に頼ろうと思う。

いや流石に、一撃で腕や体が切断されるような事は・・・無いよね?

無防備だとどうなるのかな・・・。


当たると怖いが、即死でない事に掛けよう。

そうだ、騎士の防御があるのだった。

先に防御を掛けておこう。


・・・・・

・・・・

・・・


緊張の時間が流れる。


商人とタイランはさっきからずっと何か会話している。

冒険者の騎士は見張りをしていて、する事が無さそうだ。


さっさと始めて欲しい。


家に帰ってナズとアナに囲まれてイチャイチャしたい。

昨日は2人と一緒では無かった。

もう、それだけでイライラなのだ。


2人の存在はとても大きくなっていた。

一緒にベッドで寝るだけでも、十分に癒しの存在なのだ。


はよ!はよ!(ばんばん)


空気に向かってバンバンした。


もうしばらくして、先ほどのマリクと言う騎士がやって来た。

奥にはもう1人騎士が・・・ゲッ、・・・ルスラーンだ。


彼に手の内を見せる事になるのか。

仕方無い。オーバーホエルミングはできるだけゆっくり動いて、

ちょっと速い位でキープしておこう。


今回は瞬殺も無双もしない、石化を狙うのだ。つまり回数が必要になる。

この剣ではMPを吸収できない。つまり、MPが枯渇するのだ。


さっきの強壮剤が役に立つ。買っておいて良かった。

ポケットには10粒入っている。危なくなったら飲めばいいだろう。

アイテムを使ってはダメなのかどうかは聞いていない。


駄目なら仕留めなければならない。

必要経験値減少でも消して、デュランダルを出して葬る。

アイテムがオッケーならば、ちまちまエストックで石化を狙うのだ。


暗殺者のジョブは取っていたが、上げておけば良かった。

何も無しよりはLv1でも就けておいた方が、

多少は確率が上がってくれるだろうか。


ルスラーンは近付いて来なかった。

あの位置から見学するのだろう。

立ち合いの騎士はマリクだけなのだ。

冒険者の騎士もルスラーンの所まで下がっていった。


冒険者の騎士団員?騎士団の冒険者?まあ、正確な話はどっちでもいい。

頭がおかしくなってくるので、考えるのはめにした。


「それでは、両者腕を出せ、ジョブを確認する」

「はい、どうぞ」

「へいへい、これでいいすかね」


良かった、さっきパーティを組んでいる時に、

相手のジョブを弄ってしまっていたら、不審がられただろう。


「ユウキ・フジモト、商人!」

「タイラン、冒険者!」


始められる前に疑問を聞いておく。


「あの、騎士様」

「なんだ?」


「アイテムなどは使っても宜しいのですか」

「お互い何も決めていなければ、私たちの関知する所では無い」


「そうですか、何も決めていませんので安心しました」

「では始めるので、お互いに距離を取れ」


2人の間が離れていく。


ここから相手までの距離は、大股歩きで40か50歩分。

1歩が90cmとして、大体40mくらいか。

小学校のプールの端から端までだと思うと、結構な距離がある。


腰の裏に帯剣していたエストックを構える。


エストックは片手剣だ。

対して、あちらの持っている剣は鋼鉄の剣、両手剣だ。

力の差もあちらの方が大きいだろう。


つまり、エストックで鋼鉄剣の一撃を受け止めると言うのは不可能なのだ。

全てかわさなければならない。

そしてこちらの攻撃をガードされる事無く当て続けないと、

石化はともかくダメージで倒す事すら難しい。


商人は笑っている。

この冒険者の男もニヤニヤしている。

立ち合いのマリクと言う騎士は憐みの目を向けている。

ルスラーンは・・・遠くて見えない。


この絶望的な状況から大逆転をするしかないのだ。

全く絶望していないが。


「始めッ!」


騎士の合図とともに、タイランは駆け寄って来た。

両手剣を振りかぶりながら、一気に力で押し切るつもりなのだろう。

間合いに入った所でオーバーホエルミングを使用する。


剣筋が読める・・・左から右へ。

1刀目は横に振って来た。


しゃがんでも避けきれないし、ジャンプでも避けきれない、絶妙な位置だ。

後ろに2歩引いて剣先スレスレでかわす。

踏み込んでエストックで5回刺した。

多分ダメージにはなっていないが、石化の判定は出たはずだ。


大振りが空ぶったタイランは剣の重さで体位を崩す。

蹌踉よろめいた所へオーバーホエルミングを使用し、

今度は袈裟斬りで1回当ててから同じ場所を9回叩いた。


エストックは剣先が細く、手首を返せば剣先がしなる。

しならせる事で、高速に相手を浅く切る事ができるのだ。


斬る武器ではなく突く事がメインであるが、

傷口を浅く広げるといった性能にも期待できる。

この世界ではぶち抜かれようが接触しようが当たればダメージで、

HPが残っている間はえぐれたりしないので何とも言えない。


当てたらすぐに距離を空ける。


敏捷に残りのポイントをぎ込んだ事が生きている。

動きに疲れを感じないし、自分が思った以上に足取りが軽いのだ。

これなら、アナに渡していたブーツも借りてくるのだった。


体勢を立て直したタイランが、今度は右下へ構え直した。

オーバーホエルミングを使う。

次の剣筋は右下から斜め左上、エストックの裏刃で剣筋を少し逸らして、

安全を確保した後、懐に潜り込む。


腕と横腹の間をビシビシと往復させて、接触回数を稼ぐ。

5往復させたので、10回は当てたはずだ。

ダメージになったかどうかは知らない。

再び距離を空ける。


オーバーホエルミングを使い直した。

上まで振り上がった剣先がそのまま下を向き、

刃面を移動させるのが読み取れた。

次は上から下への縦斬りだ。


右側に避けるとこの男には好ましい位置取りに成るので、左に避ける。

1刀目が左から右だったのだ。

避けられた剣筋の修正は、左から右に流す向きが得意なのだと判断した。


思った通り、少しだけ剣筋が乱れる。

十分に剣先が空を切ったのを確認して、

再び脇の下へエストックを突き入れ、横腹と腕の間を往復させる。


流石にまだまだこんなものでは石化しないだろう。


アナの攻撃回数の頻度が低かったので、1匹当たり5回として

2、30匹で1回発動したような気がする。

最低でも150回位は当てないと、暗殺者であるアナの発生率に及ばない。

暗殺者でなければ、2倍か3倍。最低500回は入れる必要がありそうだ。


Lv1の暗殺者でどこまで減らせるのだろうか。

まだ35回だ、気が遠くなる。


距離を空ける。


タイランが踏み込んで大振りで迫って来た。

再びオーバーホエルミングだ。

少しクラっと来た。


英雄Lv30では、

連続5回目あたりからMPが減ったと認識する程度に消費するのだろう。

ポケットから強壮剤を1粒取り出し飲み込む。


剣筋を完全に避けてから、踏み込んだ足を引っかけ体勢を崩す。

よろめきもスローモーションだ。

ぐらっと体が揺れ、転ぶまいともつれて出てきた足も取る。

足を掛けながら適当にペシペシと剣先を当てる。


二重に足を掛けられたタイランが、そのまま転倒してゆく。

エストックで突きを入れながら、オーバーホエルミングを上書きする。

下向きに突きを入れて10回。

派手に着地したかと思ったが、受け身をとって転がって行くようだ。


その回転退避中にも追い討ちを掛け、20回以上は突きを入れた。

またしても頭がクラクラする。

次のスキル使用時には強壮剤を飲み込んで回復するだけとなった。


タイランは回転しながら体勢を整え、

立て膝に収まるとその恰好から剣を放ってきた。

やはり錬度の高い冒険者は戦闘の運び方が洗練されている。


アナもこのような動きを見せていたので、

彼女のポテンシャルは相当高いのだと思う。

自分は・・・オーバーホエルミングを使う。


今度の剣筋は右下の構えから少しだけ上方へ横に払ってくる。

多分これは通常のスピードなら牽制の一撃だ。

当てるつもりはないのだろう。

べったりくっついて来るのを嫌って払っただけなのだ。


座った姿勢からなので、初期位置はとても低い。

それをジャンプでかわして、オーバーホエルミングを再度使用する。

肩に当て、首に当て、肩と首を往復させる。

最初の避けに時間を取られたので今度は4往復、8回に収まった。


牽制にも失敗したタイランは、

自分から後ろへ大きくジャンプして間合いを作り出した。

当然オーバーホエルミングを掛けて間合いを詰める。

またクラっと来たのでポケットからまた1粒、強壮剤を口に放り込んだ。


ジャンプで離れる動作中にも容赦なく胸を突いて行く。

5回突いた所でタイランが着地し、後ろから大きく縦に斬って来た。

その間も執拗に突きを入れる。


オーバーホエルミングで剣筋を確認し、

今度は完全にタイランの真右まで避けてみた。

左払いの攻撃を誘うためだ。

勿論その間も突きを入れる事は忘れない。

最低でも10回は稼いだ。


自分から見てタイランの右、

つまりタイランから見て左に位置しているため、

次のタイランの攻撃は右から左にかけて振ってくる。

これはタイランの初撃の向き、つまり得意な方向だ。


剣が振られる前からオーバーホエルミングを使用する。


そのまま剣筋方向へ退避しながらエストックの突きを連打した。

タイランは完全に剣を振り切っても、

こちらへダメージを与えられずに逃げられた格好となった。


体をひねり全身の力を込めて大きく振り切ったので、

そこから次の1打を放つには剣先を戻すか、

自分の体位を変えるしかない。


オーバーホエルミングを使用し、その間も容赦なく突きを入れる。

股の間を往復させ距離を取ったところ、タイランは動かなくなっていた。


勝った・・・。


もう何回当てたのか数えていない。

ゆっくり動くとか言って置きながら、相当無茶な動きをしたように思う。


避ける方法もアレだが、エストックの振り方に至っては、

回数を稼ぐためにしならせて当てていたので、

自分でも見えない位の速度で当たっていた。


ここまで一方的に当てたのだから、

おそらく外野からは太刀筋は見えていなかっただろう。


騎士を見る。

あっけにとられている。


商人を見る。

恐れおののいてアワアワしている。


ルスラーンたちは・・・。

腕を組んでいるのは判るが、遠いので表情はさっぱりだ。


「騎士様、相手は動かないようです、私の勝利で宜しいでしょうか?」

「えっ?・・・確かに、動かないな、

 麻痺か?石化か?お前がやったのか?」


「そうです、石化のエストックですので」

「ええっと、ちょっとまて」


マリクがタイランへ近付き、体をまさぐったり叩いたりしている。

しかし、タイランは動かないままであった。


「ええと、石化させたのだからユウキの勝利である」


「有難う御座います」

「この者の装備はどうする?」


「有難く全て受け取ります。

 それからそちらの商人へ、決闘の再戦を求めます」

「わ、分かった。ちょっと待て、こいつをどかす」


マリクがタイランを運ぼうとしたが、

重たかったのか、奥に引っ込んでいたサヴァスを呼んで、

邪魔にならない城壁の方へと運んで行った。


「さて、そちらの商人。お前は再戦を求められている。

 代役を立てる事はできるが、拒否をする事はできない。

 誰か代役を出せるか?」


「ヒッ!・・・だ、・・・代役はおりません・・・」

「では商人、腕を出せ」


「ヒッ、ヒィッ、・・・おゆ、お許し下さいっ、

 あいつに・・・、あいつに騙されたのです!

 こんな戦い方をする奴とは聞いておりませんっ!

 それに私は戦う装備を持っておりません!」


「それは理由にならん。

 この場に何も持って来ないのはお前の責任でもある。

 あ奴だって持っているのは剣だけで

 鎧すら着ておらぬだろうがっ!

 お前の代役は全身鉄製で、どう考えても理不尽な戦いであった」


商人はしぶしぶ腕を差し出した。

自分は既に出している。


「ハムリック、商人!」

「ユウキ・フジモト、商人!」


自分は先ほどの位置まで移動したが、ハムリックは動かないでいた。


「おい、ハムリック、位置につけ、

 あまり待たせすぎるとそこから始めさせて貰うぞ!」

「おゆ、お赦し下さい・・・何でも、何でも致しますぅ・・・。

 ・・・金も、宝石も、全て差し上げますのでぇ・・・・」


哀れな男がそこにひざまずいていた。


「始めェ!」


マリクの無情な声がとどろく。

ゆっくりとハムリックに近寄った。


「お前の配下の盗賊はまだいるのか?」

「ひぃいいい」


「まだいるのかと聞いているッ!」

「いま、いましぇぇん」


「あいつの石化を治してから尋問してもいいのだぞ」

「う゛え゛え゛え゛えっ、

 ハリっ、ハリっ、ハリうが、まだっまだいまゅう」


もう嗚咽していて何を言っているのか判らなかったが、

確かにハリムといった。

死体が見つからなかったあいつはまだ生きていると思っているのだろう。


「おい、いい事を教えてやろう」

「はひっ・・・ひっ・・・ふぃっ・・・」


「あの盗賊を全部倒したのは俺なんだよ、ハリムもな」

「う゛え゛ぇ゛ぇぇ゛ぇぇ゛え゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇえ゛ぇ゛ぇ゛え」


あ、こいつ今一番恐怖した。

解かる、解かるぞ、その気持ち。


「お前が今まで苦しめたり、殺してきた人たちの事を反省するか?」

「ひっ・・・は、はんせい、します、しますぅぅぅ」


「ならば今ここで騎士に詫びろ、特にあのルスラーン様に」

「ぼうじわげあじばえ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇん」


「それでは聞こえんだろ、誰に何を謝ってるのか説明しろ」

「ぎじさまぁ・・・わだじは・・・わだじば・・・どうぞぐどい゛っじょび

 だぐざんごろじでがねおぬずんでぎばしだぁ゛・・・。

 おゆるじぐだざい゛ぃぃ・・・」


「騎士様、これが彼の本性です。

 あと何名盗賊が残っているかは判りませんが、

 こいつは許されてはいけない男です。

 盗賊一味の事は、先ほど石化させた男を回復させて

 尋問してやれば吐くかと思います」

「えっ、あ、ああ、分かった」


「この男は商人ですので、処罰はできないかと思います」

「そ、そうだな、この男が盗賊と結託していたとしても、

 直接何もしてないとなると、死罪ではないな。牢には入って貰うが」


「従って、私が今ここでその罪を晴らします」

「えっ?いや、まあ、そうか、好きにしろ。今は決闘中だ」


「へっ?いや、いやぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ」


エストックを泣き叫んでいる男に突き立てる。

最後に小声でいい事を教えてやった。


「あの石鹸はお前の物で正解だったのだよ」


オーバーホエルミングを使用して不要なアクセサリとステータスを解除し、

デュランダルを取り出してハムリックの首を刎ね、すぐに消した。

これで手刀に見える筈だ。


「ええっと、しょ、勝者ユウキ!」


「有難う御座います」

「そ、装備は持っていないようだな、持てる物もあるまい」


「そのようですね。

 それより、彼が亡くなった場合自宅の荷物等は誰の物になりますかね?」

「普通は家族や親族の物になるな。

 あの者は1人身のようであったし、

 被害があった場合は被害者達に分配されるが、

 その被害者も殺されて既におらんと言う事になると・・・、

 必然的にお前の物かな?」


「なるほど、彼の家の物を持って行っても盗賊にはなりませんか」

「なるか、ならんか、といったら、ならんだろうな」


「かしこまりました、ありがとうございます」

「何だ?取り返したい物でもあったのか」


「ええ、騙されて商品を安く買い叩かれまして、その恨みがありました」

「そういう事なら当然、合法的にお前の物だ」


これであの家にある持ち物はすべて合法的に頂ける事になった。

どうせ宝石箱の中身位しかろくなものは無かったが。


問題はあの商人の後釜だ。

町長の話通りなら、委託されて商売をしていた雇われ商人だったようだ。

それならばすぐに次の商人が手配される事だろう。

良かった良かった。


自分は世直しみたいな事をやれた義理でもないし、

そんな大役を仰せつかって、世知辛く生きて行きたくはない。

今回はたまたま、自分の利害が一致したのだ。


そう。


盗賊になりたいと言う利と、以前買い叩かれた害への仕返しだ。

もうこれ以上目立ちたくないなと、心に決めたのであった。

∽今日のステータス(2021/08/20)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人   Lv30

  設定:商人(30)探索者(37)英雄(27)騎士(22)

     賞金稼ぎ(22)暗殺者(1)

  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)色魔(1)奴隷商人(1)

     武器商人(1)防具商人(1)農夫(1)

     薬草採集士(15)錬金術師(1)料理人(1)村長(1)

     盗賊(1)


   看護の指輪(HP回復速度上昇 状態異常抵抗)

   硬直のエストック(石化添加 +)竜革のブーツ(+)


 ・BP128

   鑑定          1pt   アクセサリ5     31pt

   キャラクター再設定   1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt   敏捷         30pt

   6thジョブ     31pt   抵抗         30pt


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人   Lv30

  設定:商人(30)探索者(37)英雄(27)騎士(22)

     賞金稼ぎ(22)暗殺者(1)


   硬直のエストック(石化添加 +)竜革のブーツ(+)


 ・BP128(余り91pt)

   鑑定          1pt   6thジョブ     31pt

   キャラクター再設定   1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt



 ・異世界16日目(11時頃)

   ナズ・アナ11日目、ジャーブ5日目、風呂設置まで1日

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本文中) >そして、この男と戦っても経験値は得られない。石化を狙うからだ。 >従って経験値系のポイントには目もくれずステータスを伸ばした。 >駄目なら仕留めなければならない。 >必…
[一言] >自分でも見えない位早く当たっていた 多分、速くなので、誤字報告しましたが、自分でも確信がもてません。 速い→速度 見えない位の速度で当たっていた 早い→時間 見えない位短時間で当たっ…
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