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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
45/394

§044 合格

必要な物の購入が済んだので、次は商館に向かう。

新たな戦闘奴隷を加えるためだ。


別にハーレムでなければ気が済まない訳では無い。

男の奴隷がいてもいいと思っていた。


心身共に尽くしてくれる美人が、自分にはもう既に2人もいるのだ。


そもそも複数人相手するのはたまになら何とかなるかもしれないが、

2人と2回戦しただけでも大変だと言う事を前回身に染みて理解した。


ミチオ君は5人を2回ずつ・・・。(ごくり)

なるほど、ガイウス皇帝も脅威を感じる訳だ。


とは言え、2人に手を出されても困る。

ベッドや部屋割りをどうしようか、と言う点では悩ましい。


そういえば奴隷同士結婚はできるのか?

奴隷の子と言うアナやベスタと言う前例がある訳だから、

そういうのは普通にある事なのだろう。


良く働いた奴隷にパートナーを見付けてやるのも主人の務めなのか。

妾や愛人はともかく、初年度奴隷で処女の奴隷が売りに出ると言うならば、

奴隷を結婚させて繁殖する事も行われていそうだ。


人身売買組織・・・、いや単純に税金対策と口減らしだろう。



   ***



ナズとアナを世話して貰った商館の扉には、

ひと際ゴツいノッカーが構えられている。

周りの家屋にはそんな物は付いていないのでよく目立つ。


ノッカーを叩くと、ドアの小窓からヨシフが顔を出した。


「どちら様でしょうか」


「以前こちらで世話になったユウキと言う者だが」

「ユウキ様ですか、ようこそいらっしゃいました。お待ち下さい」


ガタンとかんぬきが外れる音がして、扉が開かれる。

用心棒の竜人族の男も一緒だ。


「どうぞ、こちらへ」


奥の応接間に案内された。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


今日はシラーは出て来ないのか?

安心できる取引相手は若い者に任せる方針なのだろうか。


「ええと、新たに前衛ができる戦闘奴隷が欲しいと思いまして」

「そうですか、あれからまだ数日しか経っておりませんが、

 以前都合させて頂いたあの女奴隷は駄目でしたか?」


アナの事か。


使えなかったので別の者が欲しい、そう思われていそうだ。

そりゃそうだ、まだ6日しか経ってないのに次の奴隷だ。


「いえ、彼女は十分戦ってくれています。

 逆に優秀過ぎて、もっと奥に行って見ようかと言う事になりまして」

「左様でございますか。そう言って頂けると商人冥利に尽きますね」


いい奴隷を紹介できたと言われると鼻が高い。

リピートや口コミに繋がるからだ。

こういった商売は信用が基本だろう。

人材派遣会社なら、使えない派遣を送ってしまうと会社ごと切られる。


「そこで、今度は女でなくてもいいから、

 前衛で戦える奴隷が欲しくなりまして」

「前回とあまり顔触れは変わっておりませんが、宜しいでしょうか」


「前回とは求める事が違いますし、新たな発見もあるかと」

「さようでございますか。また直接面談してお決めになりますか?」


「そうさせて頂けると」


ヨシフは竜人族の男に目配せすると、その男は先に出て行った。

誰だったっけ、後ろ姿でちょっぴり鑑定した。

・・・アグルス、そうアグルスだった。


「では、こちらへどうぞ」


ヨシフに案内され2階へ上がる。

最初の扉が開かれ、室内の奴隷達には集合の号令が掛けられた。


「こちらのお方が、前衛ができる戦闘奴隷をお求めだ」


6人の男が一列に並ぶ。


 ・人間  探索者 Lv4

 ・人間  探索者 Lv5

 ・人間  村人  Lv4

 ・人間  村人  Lv4

 ・狼人族 村人  Lv6

 ・人間  戦士  Lv3


うーん、どれも弱い。

それにしても人間が多いのは強欲のなせる業なのか。

たまたま多いのだろうか。


この世界の一般人には人物の鑑定スキルが無いから、

誰が強いか知るには一人ひとり尋ねて、それも自己申告しかない。

顔つきが良くても弱かったり、

ひ弱そうに見えて実は技能が優れているケースだってあるだろう。

そういう意味では鑑定様々である。


「うーん、ピンと来る者がいませんね」

「そうですか、次の部屋に行きましょう」


合図もなく今の会話だけで、

竜人族の男、アグルスが奴隷を中に入れて扉を閉めた。

この従者、なかなかできるなぁ。


次の部屋でもヨシフの号令で整列が掛かる。


人間、人間、猫人族、ドワーフ、人間、エマーロ。


彼らもパッとしない。

ドワーフは村人Lv12だったが、

残念だけど、そこが高くても意味が無いのよ・・・。

基礎身体能力が高いせいで、無職のまま強くなれたのだろうけど。


「生憎、これと思えるものがいません」

「まだ他に大勢いますので、お気に召す者を見付けて頂ければ」


次の部屋には良さそうな男がいた。


 ・ジャーブ 狼人族  ♂ 28歳 戦士  Lv16


戦士だ。


狼人族の専用ジョブである獣戦士には、

やはり専用の神殿があって習得には固有の能力が必要なのだろう。

つまり狼人族である処の特殊性は低い。


しかし戦士でLv16まで上げられたのならば、

ベースの身体能力はそこそこあったのだと言える。

さっき見た狼人族は村人だったし。


前に見た事があった気もしたが、前回は気に留まらなかった。

色目よこしまな気持ちが優先したので・・・。


「質問しても?」

「どうぞ」


ジャーブの前に立って、目を合わせて問い掛けた。


「お前は迷宮に入ってどの位になる」

「もう10年になるかと思います」


「階層は?」

「ここトラッサでは12階層で戦っていた事があります」


12階層と言えば序盤の最終層を突破した直後だ。

1層から11層までの敵は低層の魔物で固定らしいから、

これら全部を制覇しているならばどの迷宮でも11層まではやって行ける。


「スローラビットのボスには勝てるか?」


少し意地悪な質問をしてみた。

ラピッドラビットは素早くてミチオ君が苦戦していた。

このボスと渡り合えるなら十分合格だ。


「ラピットラビットなら戦えます」


よろしい、ならば合格だ。†

すぐにでも戦争だ。


「判った。また後で声を掛けるかもしれない」

「もう宜しいのですか」


「そうですね、他の者も一応見て置きたいですね」

「かしこまりました。次は3階になります」


3階の奴隷たちは女性が集められている。

綺麗どころが最初の部屋だ。

ここは見なくていい。

ここの部屋の奴隷を連れて帰ったら、絶対ナズやアナが警戒する。


アグルスが扉を開ける前に止めた。


女性の中でも戦えそうな者はいたが、やはり先ほどの男には見劣りする。

たとえ同じLvでも基礎能力が違うだろうし、

そこまで育っている者がいない。


1人だけ僧侶Lv7の女がいた。


何故そのジョブで奴隷になったのか気になったので詳しく話を聞いたら、

不倫して駆け落ちしたら捕まって奴隷に落とされたのだと言う。

使えそうだったがトラブルメーカーは御免だ。


全員の戦力を確認させて貰って応接室に戻って来た。


「気に入った者はおりましたでしょうか」


「うーん、あの狼人族の男は中々いいなと思いました」

「先ほど話されていた奴隷ですね」


「あの位の強さの者がなぜ奴隷に?」


気になるのはそこだ。

戦士Lv16ならソロでも生活できそうだ。

元犯罪者とか裏に付いて回る組織とかいても困る。


「あの者は、確かギャンブルで大負して身売りせざるを得なかったとか」

「怖いですね、そんな賭場があるので?」


よくありそうな話だった。

借金してギャンブルしてドボンか。


「いえいえ、賭博は犯罪です」

「犯罪奴隷なのですか?」


「友人の話に乗って借金をして金を預けたそうなのですが、

 友人ごと泥沼らしいです。

 危ない所で金を借りると、

 奴隷になるよりもっと恐ろしい事になったりしますので」


連帯保証人かよ!


どこの世界でも借金はよくない。

そういえばアナの元主人も危うくそうなる所だったようだし、

セリーも泥沼を避けて自分から身を売ったはずだ。


しかし怖いな、金貸し。

どこの世界でも。

借金トラブルで自殺をしようとして、

この世界に来てしまった者が再び借金地獄に・・・ゾッ。


「あの男はおいくらぐらいで?」

「うーんと、確か初年度奴隷だった気がします。

 後で確認致しますが、初年度奴隷なら25万ナール、

 そうでなければ27万ナールですね」


ヨシフは商人だから、奴隷の状態は帳面でしか判らない。

うろ覚えなのは仕方無いか。


それにしても男奴隷の癖に意外に高いな。

ナズのように借金が付いているのかと思ったが、そうでは無いらしい。


アナはもっと安かった。

女奴隷でも14万、非処女なのでそういう価値は無く、

低階層なので実力は無い使い捨て、と言う訳だ。

アナが忠義を厚くするのも頷ける。


一方でこの男は迷宮12階層に入れると言う実力で

10万ナールは上乗せされている訳だ。

高いがそれなりにリターンが期待できるぞ、と。


27万ナールの3割引なら18万9千ナールだ。

ギリギリ足りない。

また1日待って貰えばいいかもしれないが、

装備品も買わなくてはいけない。


「もう一声」

「うーん、そうですね、初年度かどうかの確認を怠っておりましたので、

 1万ナール相殺すると言う事で」


うん?1万ナール相殺とは?

確か初年度が家人なら3万、奴隷なら1万だった気がする。

差額が2万ナール、差額半分値下げして1万ナールか、なるほど。


「ではそれで」

「かしこまりました、・・・おい」


アグルスに目配せすると、彼は1人で出て行った。


「ああ、それから契約と一緒に彼へ遺言を頼みます。死後解放で」

「宜しいのですか?」


「操作する際に、見られたりしなければ大丈夫でしょう」

「そうなのですが、購入と同時に解放をお選びになる方は珍しいので」


そうなのだろうけど、3割引にして貰わないと困るからな。

本人に知られなければ困るものでもないし。


「大丈夫です。友人に裏切られる位のお人好しに、その位は情けを」

「なるほど、お優しいその心意気、感服致しました。

 初年度なら18万2千ナール、

 違いましたら16万8千ナールに致しましょう」


ほら来た、3割引。

有難く頂いて行きますよ。


アグルスが戻ってきたがジャーブは連れて来なかった。

ヨシフに耳打ちをしている。


「すみませんユウキ様。

 折角のお買い上げですが、

 契約をできる者が席を外したまままだ戻っていないとの事ですので、

 明日もう一度お越し願えませんでしょうか」


「シラー殿ですか」

「はい、覚えていて頂き光栄です。

 別の取引があるとかで席を外していたのですが、

 まだ戻っていないようなのです」


奴隷商人なのだから、取引があるとすれば奴隷だ。


別の奴隷商から新たな商品を仕入れに行ったのか、

逆に売れたので送って行ったのか。

奴隷に落ちた者を引き取りに来て欲しいと依頼されているか。


この商館では彼しかできないのだから、用事で席を外す事はあるだろう。

早くLv30になって後を継いでくれ、ヨシフ君。


「そうですか、ヨシフ殿はまだ奴隷を扱えないのですね」

「お恥ずかしい限りで。こちらが、契約書になりますので、

 明日お持ち頂ければ当館の館主シラーがお手続きを致します」


「解りました、また明日出直させて頂きます」


そう言って席を立った。

ナズとアナにも気持ちの整理があるだろうから、

結果的に明日になったのは良かったかもしれない。


「また、明日のお越しをお待ちしております」

「宜しくお願いします」


さて、もうだいぶ昼近くになったはずだ。

旅亭に戻って弁当を食べよう。まだ受け取って無いが。

2人も待っているかもしれない。


帰りがてら、すっかり賑わっている市を確認しながら旅亭に戻る。

後で18万2千ナール分は金袋を別にしておこう。

うっかり使ったらアウトだし。



   ***



宿に戻ると部屋の鍵は受付には無かった。

2人は既に部屋に戻っているのだろう。

ではついでに弁当を貰って行こう。


カウンターに向かって訪ねたが、

408号室の弁当は既に持って行かれたらしい。


部屋のドアを開けようとすると鍵は開いていた。

不用心だな!


「ご主人様、お疲れ様です」

「おかえりなさいませ、ご主人様」


扉を開けると2人が出迎えた。

机を見ると下で貰って来たであろう弁当が置いてある。

早速さっき買った皿が使われていて安心した。


自分の椅子の前に1つ、ナズとアナの側には1つの皿に2つ。

パピルスに巻かれた何かが置かれている。

皿はもう1個、いや2個買っておくべきだったかな。


「じゃあお昼を食べよう」

「はい、お待ちしておりました」

「今お水をご用意しますね」


席について全員で挨拶した。


「「「いただきます」」」


今日は野菜とソーセージのホットドッグのようだ。

例によって具材はバラバラであるが。

パンに切れ込みを自分で作って、具材を挟んだ。


「そういえば、2人は買い物を楽しめたか」


「はい。ええと、以前ナズさんに、

 秀麗な奴隷は3半季に1度髪を洗って貰えると聞いておりましたので、

 場所を聞き2人で行って参りました」


待て待て、そんな話いつしてたんだ?

自分が寝てる時か?

いつも疲れてぐっすりだったが。


「それでどうだった?」

「ええと、そこでは銀貨2枚で香油を、4枚で湯洗をして頂けると聞きまして」


この世界で風呂は超が付く高級品だ。

石鹸も高級品、シャンプーなんて当然ない。

髪の長い者や皮脂が多い者は困るだろう。


日本にも風呂が普及するまでは髪結いと言う職業があって、

その者が洗髪を行っていた。

ここでもそういった商売があるのだろう。


「ご主人様に喜んで頂けるかと思い、思い切ってやってみました」


いじらしいな、後で沢山撫でよう。


「そうか、後で触らせてくれ」

「はい、勿論です」


アナが髪を手櫛で梳き、その仕上がり具合を確かめている。


「アナさんは香油だけでいいと言って、

 洗って貰うのは躊躇ためらっていました」


「そうなのか?」

「い、いえっ頂いたお金をそのような事に使うのは申し訳なく」


「好きな事に使えといったのだから、何をして来ようと自由だぞ?」

「は、はい・・・」


「他には?」

「以前お分け頂いた果物が美味しかったので、また買って参りました」


そういって、床に置いてあるリュックからタプスを3つ取り出した。


「あ、ああ・・・そうなの・・・」


席を立ってベッドの袂に置いたリュックを掴む。

タプスとイシュコリを取り出して並べた。


「同じの買って来ちゃったな」

「あ・・・ああ・・・そ、そんな・・・」


「みんなで食べような?」


合計9個になったタプスを前に、アナが呆然となった。

それをナズが必死に庇っていたので可愛いかった。

∽今日のステータス(2021/08/06)


 ・繰越金額

     金貨 19枚 銀貨 68枚 銅貨167枚


  ホドワ商館 (25万500→18万2千350й)

   ジャーブ身請            26万й

   遺言作成              500


     金貨-18枚 銀貨-23枚 銅貨-50枚

  ------------------------

  計  金貨  1枚 銀貨 45枚 銅貨117枚


 (注:この日は支払いは行っていないが、財布を別にした)



 ・異世界11日目(昼)

   ナズ・アナ6日目、トラッサの市の日、宿泊8日目

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本文中) >確か初年度が家人なら3万、奴隷なら1万だった気がする。 この言い方だと説明不足で 確か奴隷の税金は初年度なら家人と同じ3万、2年目以降なら1万だった気がする。 にな…
[気になる点] 人材派遣会社なら、使えない派遣が送られてきたら会社ごと切られる。 済みません、変な事を気にしてしまって。 「派遣」と「送られてきたら」は同じ意味ではないでしょうか。 ここは、「人員が…
[良い点] 猫は要領の良い動物のイメージがありますが、アナはちょこちょこ要領が悪くてそこが可愛いです。
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