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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
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§043 休ミ

翌日、目覚めるとナズが左に、アナは右にいた。


ナズを可愛がった後、疲れて倒れ込んだ後の事は憶えていない。

下着は身に着けた覚えが無いし、ナズも下着を身に着けている。

寝てしまった後、体を返して拭いてくれたのだろう。


全然気付かなかったし、だらしのない主人で申し訳なくなった。


体を起こそうと手に力を掛けると、

ナズが覆いかぶさってキスを迫ってきた。


「ちゅ・・・・んむっ・・・んはっ」


「ご主人様おはようございます」

「ああ、おはよう」


ナズの朝のキスは、健気で精一杯。

一生懸命奉仕しているように感じられる。


両手でナズを抱きかかえ、頭と頬を撫でた。

右側のベッドがきしむ。


ナズが両手で体を起こして抱擁を離れると、

今度はアナが覆い被さって来た。

身に着けているものは下着だけなので、

ついでに柔らかいものが胸に伸しかかる。


「んむ、・・・んっ・・・ふっ・・・」


アナのキスは、情動がなく非刺激的。

ゆっくりと口の中全体に挨拶をしているようだ。


アナを抱き抱えて尻尾を撫でた。

2人のキスの仕方が違っていて飽きない。


朝から可愛い2人が挨拶をしに来る。

それだけで、今日一日頑張ろうと思える。

単純だ。

順番制にして良かった。


「アナもおはよう」

「おはようございます、ご主人様」


アナを放して体を起こし、体をねじって伸びをした。


「ん・・・・ふぁぁぁぁ」


あくびが出たので、もう一度体を伸ばしてストレッチを行う。

ベッドの端に座り2人を両手に座らせて抱き寄せる。


「昨日も言ったように、今日は休みにしたい。

 必要な物が有ったら出かける前までに教えてくれ。

 後で買い物に行く」

「「かしこまりました」」


「それじゃあ、いつものように頼む」


ナズはワンピースを被ると食事を取りに出て行った。

アナは装備の手入れを始める。


自分はポーチから金袋を出して所持金を数えた。

金貨19枚、銀貨60枚、銅貨40枚。

これに昨日拾い集めた装備の売却が加わる。


ホドワには一度足を踏み入れているので、

お金を使うとしたら雑貨の購入費、2人に渡す小遣い。

これは金貨1枚もしない。


運が良ければ手ごろな奴隷が

何とか買えるかもしれない程度にはある。

金貨19枚だと綺麗所は無理なので、

戦闘用として割り切って考えよう。


それが男だった場合は、部屋割りをどうするか。

悩ましい問題が出てきた。


翌々日には宿の更新を迫られるのだから、

ある意味では丁度よいとも言える。


ダブル部屋に3人で泊まり、もう一部屋を与える。

いや、奴隷に一部屋は待遇的に無理がある。

旅亭の方が許さないかもしれない。


となると、この4人部屋で丁度。

今の所ベッド1つは使っておらず、元の位置のままだ。


「お待たせしました」


ナズが朝食を運んで来たので、ひとまず中断する。

椅子に着いた2人に問うた。


「それで?何か欲しい物や、必要そうな物はありそうか?」

「とても良くして頂いているので、これ以上は何もありません」

「私も、特に思い当たりません」


うーん、謙虚なのはいい事だけれど、生活向上に向けた前向きさは欲しい。

例えば、洗濯板や予備の物干しロープがあれば、

今より便利じゃないだろうか。


宿の設備は、ベッドと机と椅子、大きな籠1つ、

クローゼットと、物干しロープ1本だ。

今は2着を交互に着回しているので余り場所は取らないが、

服や人が増えたら干し場に困る。


物品の管理は主人の仕事だと思うが、

現場の声が上がって来ないと補充も難しい。

今日を逃すと、次はまた5日後になる。


とは言え、まだ生活を始めて1週間経っていない。

彼女たちにしてみれば劇的に向上した生活を送っているのだから、

粗探しは無理があるのか・・・うーん。


「それじゃあ仕方無いな。

 小遣いを渡すから美味しいものを買ったり、

 お互いに送り合ったりしてくれ」


「ご主人様に必要な物・・・では無く私達が贈り合うのですか?」


アナが不思議そうに聞いてきた。

確か、ロクサーヌがセリーにくしを買ってあげた時に、

ミチオ君は主人が与えた物では無いからセリーの物だと言っていた。


ん・・・?


奴隷の所持品は主人の物だから、

奴隷が受け取った物品もすべて主人の物では・・・?

そもそも小遣いの時点で主人の物では?


突っ込んではいけない世界か?

ナズとアナがそこに気付かなければ、

そのまま押し通してしまっていいのか?


「あ、ああ、そうだな。

 主人が買って渡すと主人の持ち物に過ぎないが、

 小遣いの中で購入した物はどうしようが自由だ」


「私達が貸し出されるお金も含めまして、ご主人様の物ですが・・・」


うっ・・・やっぱり。


こやつらは賢い。

ロクサーヌのようにやり込めて、

後は一番奴隷の立場で押し切る事が難しい。


「今日の食費を多めに渡す。食事はお前達の正当な権利だろう」

「余れば返却致します」

「私は今のお食事でも充分なのですが・・・」


「食事を取るのに必要な物があって、

 それをお互いにプレゼントすれば晴れてお前たちの物だろう?」

「え、ええと・・・うーん、そうなりますかね」

「そうなのですか?結局はご主人様のお金で買った物では・・・?」


くっ、頭の冴える子はキライだよっ。


「お前たちの昼食代だ!

 食べ物でなくても食べて行くために必要な物を各自考えろ!」

「「はっ、はい・・・!」」


強めに断言して銀貨を4枚ずつ渡した。

しかしよく考えてみれば昼食はお弁当を頼んであるので、

そこに突っ込まれたら前提が覆ってしまう所だ。


「では、トレイを片付けたらそのまま解散だ。

 自分は先に市に行って、そのまま商館に寄るから、

 お前達は2人で買い物を楽しんで来い」

「「かしこまりました」」


そう言って、上着を着てポーチを掴んで部屋を出た。

当然鍵はアナに任せる。

出る際にフロントに預けるし。



   ***



トラッサの市は準備中の者から、既に営業を始めている所まで様々だ。


農産物を売る店は準備も早い。

対して、加工品を売る店や、衣料品店は遅い。

普段の起床時間の差だろうか?


農産物店で、前回購入した果物を今度は6つ購入する。

食べ物屋の店員は多くの人種を相手にするので、

ある程度多彩な言語を知っていて声を掛けやすい。


「タプスを6個貰えるか?

 後はイシュコとか言うのはあるか?」

「イシュコは時期じゃないけど、一応あるよ。

 あまり甘くないかもしれないね」


大きな果実を受け取る。

イシュコ・・・これは甘夏か?

あまり甘くないといったか、夏みかんかもしれない。

殆ど同じ物だが、甘夏の方が甘い。


果物7個で結構容量を取ってしまったので一旦宿に持って帰る。

フロントに尋ねると鍵が預けられていたので、

2人はもう出て行った後なのだろう。

すれ違わなかった。


果実で詰まったリュックは重たいので、そのままベッドの横に置いた。

もう1つポーチがあるし。


メモを見ながら、必要なものを買う。


まだ完全に市が開ききっていないため、

先に探索者ギルドで薬を買った。

確か毒消しを3つ、滋養丸を2つを消費している。


その後、雑貨店で蝋燭を6本と桶を2つ購入する。

宿で貸し出されるタライだけでは、

体を拭いてさらに洗濯をするとなると1つの桶では足りなくなる。

移し替える容器が無いと髪を洗う分を確保できない。


小物店では皿を2枚と、小さいナイフを買った。

果物を切る際に万能ナイフではちょっと勿体無い。


後は衣料品店が開くのを待って、下着の替えとシャツを3人分買った。

今の2着のローテーションで、破れたり半乾きだったら大変だ。

前回買った時に大体のサイズは覚えた。


後は、魚醤だ。

醤油が欲しい。

日本人として外せない。


だが、これは市には出てこない可能性が高い。

ミチオ君は帝都にある商店街の裏通りの店で購入していた。

高級品を扱う店、或いは金持ちの料理人がいるような、

大きな街でないと見付からないかも知れない。


市をぐるっと見渡したが、やはりそれらしい店は無い。


その代わりに漬物の店があった。

日本でも、そんなに固定客がいるのかと思われるような、

謎の漬物屋が朝市に並ぶ。

それがここにもあった。


タライに水が張られており、

その中にしなびたように見える葉物や根菜が敷き詰められている。


パンに漬物・・・。

合うのかは知らない。

しかし発酵食品は大事な保存食だし、栄養価も高い。


その店に小さなツボが並んでいた。


発酵食品を扱っているなら、このツボも発酵食品だ。

醤油、味噌、ヨーグルト?

期待が膨らんだ。


店員の女性に聞く。

耳がとんがっていて、ドワーフかエルフかもしれない。

年齢相応に見えないあたり種族の差は大きいが、

身のこなしは明らかに老人である。


「すまないが、このツボは何だ?」

「それは魚の漬物だよ」


「魚醤か?」

「魚醤はウチで作れるような物じゃないね」


やはり醤は高度な施設、技術が必要だ。

醤油恐るべし。


「ではどんなものだ?」

「味見してみますかい?」


そう言って女性は壷を封じていた紐をほどき、

ふたを開けると、ツンとキツイ臭いが広がった。


「う・・・」

「ホッホッホ、若い人には難しいかねェ」


臭いこそきついが、これは小魚の塩漬、アンチョビだ。

これがあるなら、オイルとハーブを合わせれば

アンチョビペーストが作れる。


パスタ・・・は無かったっけ。

マカロニと合わせてもいいし、

パンに塗ってピザっぽくもできる。

チーズがあれば完璧だ。


そういえばこの市には魚店が無い。

常設の魚店はおそらく迷宮産のみだ。

魚店すら無いかもしれない。


  ──魚は探索者ギルドのカウンターで買っとくれ。


大いにあり得る。


近くに海は無いし、有っても暑くて日持ちはしないだろう。

川はあったが、小川程度で漁ができるとは思えない。

漁港で取れたような魚を日持ちさせるためには発酵が必要だ。

なるほど、それでアンチョビなのか。


さじすくわれて一口食べてみたが、

やはり味は大丈夫だった。

臭いさえ目を瞑れば、これは美味しく頂ける。


「では1壷貰おう」

「おや、これが分かるのかい。

 若いのに珍しいねぇ、150ナールだよ」


150・・・オレンジが1つ3ナールだから、

食材としては結構高級品だ。

日本の物価で言うとオレンジ1つ100円として50倍。

この壷1つで5千円と言われると、うん。


銀貨2枚を払う。


「壷は返してくれれば10ナールで買い取るからね」


壷はリサイクル品だった。

日本でも豆腐や生魚を買う際は、

お椀や桶を用意していた時代があったし。


礼を言って店を後にした。

ただ、この臭いを漂わせながら商館に行くのは流石にどうかと思う。


もう一度宿に戻った。

面倒だったので木陰からワープで部屋に直接。

適当に机に並べてポーチを空にした。

∽今日のステータス(2021/08/06)


 ・繰越金額

     金貨 19枚 銀貨 59枚 銅貨140枚


  小遣い               (800й)


  装備品売却       (2750→3575й)

   銅の剣   ×5         1250

   皮の鎧   ×5         1000

   皮の帽子  ×5          300

   皮のブーツ ×5          200


  雑貨購入             (1848й)

   毒消し ×3            180

   滋養丸 ×2            120

   蝋燭  ×6            600

   桶   ×2             60

   皿   ×2             60

   ナイフ               500

   下着  ×3            150

   タプス ×6             18

   イシュコ               10

   アリーチェ(アンチョビ?)     150


            銀貨 +9枚 銅貨+27枚

  ------------------------

  計  金貨 19枚 銀貨 68枚 銅貨167枚



 ・異世界11日目(早朝)

   ナズ・アナ6日目、トラッサの市の日、宿泊8日目

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今日のステータス) 毒消し丸は単価100の筈です。 あと、下着と一緒に買ったシャツの値段が書いていませんね。
[良い点] 同じユウキの奴隷でも主人に対するキスがナズは情熱的で、アナはさっぱりとしているのが二人の性格の違いが分かって良いです [気になる点] 原作のミチオ君みたいに貴族への鏡の販売やペルマスクへの…
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