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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第三章 仲間
25/394

§024 鍛冶

デュランダルを使えば、

同時2匹にダメージを与える事は容易だと解かった。


そうで無くても2層の魔物を一撃で倒せる位の強い武器を用意すれば、

鍛冶師の就業試練なんて簡単に突破できてしまう。


ドワーフは武器として主に棍棒を選ぶのだと言うが、

長物を用いる者も多いとセリーは言っていた。

長物しか使わないドワーフは鍛冶師に成れないのかと言うと、

そうでは無い気がする。


仮にそうであった場合、ドワーフ当人が気付くだろう。

これまで槍を振って鍛冶師に成った者はいない、と。

探究心が強いセリーがその事実を知らないのであれば、

当然過去には槍で就業した強者もいたはずだ。


ミチオ君は棍棒で2匹に当てると理解していたようだが、

恐らく武器は何でも良いのだと思う。

ただ槍で2匹同時に攻撃するのは、棍棒を用いるより難しいだけだ。


剣だって2匹同時にスパッと切れるような高級品は、

普通に考えれば駆け出しドワーフが手にする事は難しいだろう。

デュランダルだからこそだ。


鍛冶師就職請負人?


いやいや。

この世界で才能だとか希少だとか思われている産業に、

部外者が安易に入り込まない方が良い。

ことわりを捻じ曲げると要らない軋轢が生まれる。


当の自分は石鹸や酒や宝石を持ち込んで置いて、何たる言い草だろうか。



   ***



その後もアナの案内で、

グリーンキャタピラーとコラーゲンコーラルを何度か倒した。

ナズがそろそろ夕方だといったので、探索を終了する。


「アナ、これから宿に帰るが、もうそろそろ慣れてくれるかな?」

「は、はい、もう大丈夫です」


デュランダルを消せば大幅にポイントが余るので、

戦闘時と非戦闘時はポイントの余裕が断然異なる。

詠唱省略、鑑定、ワープの3点セットが取れるとホッとする。


ワープと念じて旅亭の裏の木を指定した。


一見するとダンジョンウォークのように見えるので、

他人から見たら何も不思議な事は無い。

出た先ではこれまたフィールドウォークのように見えるだけなので、

こちらも何の問題も無い。


旅亭では自分の身分は商人だと申告したが、

見られた所で誰が唱えたかまでは解かるまい。


本日の探索では色々なアイテムが集まったが、

夕方の買取カウンターであの売却待ちの行列に並ぶのは大変だ。

売るのは明日以降にするべきだろう。


どうせ売却益も大した金額では無いのだろうし、

金策なら魔結晶をアレしてアレだ。


アレとは結晶化促進64倍のスキルでチート育成しようと言う反則技だ。

10万貯めるのに・・・1563匹で済む。

(・・・またカルクかな?)


ボスは雑魚2匹分より多くの魔力が溜まる事が分かっているので、

収益品が美味うまいボスを周回すれば、魔力3だとして521回だ。

こういう時にもカルクが働く。

なんて便利なんだ。


今日取得したアイテムは・・・床に並べて数えてみる。

糸42個、

絹の糸1個、

コーラルゼラチン28個、

合計71個だ。


結晶に魔力が貯まった量は、ボスの1回を考慮すると大体75匹分。

結晶化促進が最高値で有効となっていれば64倍して4800匹、

今日のペースで狩り続ければ20日程度で10万ナールになる。

4層になり敵の数が増えればもっと効率が良くなるだろう。


当面の生活資金は足りているので、

大きな買い物をする時は10万ナール/1ヶ月を目安に考える事にする。


さて、金勘定が済んだ所で、Lvの方を確認する。


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人  Lv18

  設定:商人(18)英雄(10)戦士(17)探索者(17)

  取得:村人(5)剣士(1)色魔(1)


 ・BP116(64pt)

   鑑定          1pt   必要経験値減少/3   7pt

   キャラクター再設定   1pt   4thジョブ      7pt

   ジョブ設定       1pt   詠唱省略        3pt

   獲得経験値上昇×10 31pt   ワープ         1pt


ベースジョブのLvが上がりボーナスポイントにも余りが出て来た。


まだ魔物は一撃で倒せる弱さなので、ラッシュは常時使わない。

詠唱省略やワープ、鑑定も合わせて5ポイント分は、

戦闘中では別のスキルへ振った方が賢いだろう。


4thジョブを5thジョブに変更(-8pt)し、剣士Lv1を付けた。


戦士がLv30に成ったら剣士を育てよう。

ひとまず中級職解放ラインのLv30を目指すのだ。


魔法使いや僧侶も考えなければならない。

しかし、まだこちらに来て6日目だ。

焦る事は無い、ゆっくり行こう。


2人のLvも確認してみる。


 ・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 探索者 Lv10

 ・アナンタ 猫人族  ♀ 20歳 戦士  Lv11


2人とも10Lvを超えていた。

ナズはもう鍛冶師に成れる。

早速今日にも鍛冶師になって頂こう。


「ナズ、今日はお疲れ様。迷宮はどうだったか?」


アナに装備の手入れを教えて貰っていたナズは手を止めた。


「最初はとても怖かったのですが、

 実際に入って戦っておられるご主人様を拝見して、

 私でも何とかなるかもしれないと思えるようになりました。

 あの剣をお貸し頂ければ、力の無い私でもお役に立てそうです」


「おっと、あの剣はちょっと特殊でな。

 うっかり誰かに当たったらケガ所じゃ済まないから、

 扱いが不慣れな者においそれと渡す訳にはいかん」

「そっ、そうですよね。

 お貸し頂きました武器で倒せるように頑張ります」


「あー、その事なんだが、その棍棒はもう売却するつもりだ」

「えっ・・・?・・・どういう事でしょうか」


途端にナズの顔が暗くなった。


「わた、私は、その・・・やはりお役に立てないのでしょうか・・・。

 頑張りっ・・・ますので、

 どうかっ!もう一度やらっせて・・くだっさ・・・」


何だか最後は涙目だ。

絶対勘違いしてるぞこれは。


「ちょ、ちょっと、泣くな。ナズを捨てたりなんかしない。

 棍棒では無く槍で戦って貰おうと思っていたのだ。だから泣くな、な?」


慌てて抱き寄せる。

立ったまま抱き締めると身長の差で腹の辺りに顔が来て、

ぐしぐしされるとくすぐったい。


ナズに見えるように、部屋の隅に立て掛けっぱなしの槍を指さした。


「あれだ、あれ。

 最初からナズにはアレを使って貰おうと思って用意してあったのだ」


グスンとしながら、ナズは指先の方を見る。

そそっと胸元から離れて、槍を手にした。

いや、大事そうに抱えている。


それ持ってこっちに来るなよ?良いな、約束だぞ?


「これで頑張ります・・・」


「そうそう、それでな?」


チラっとアナの方も見る。

どうせなら2人同時に言ってしまおう。


「食事前に大事な話があるから、ちょっと座ってくれ」

「かしこまりました」


アナは手入れを終えた硬革のジャケットを畳み、

定位置だと言い付けた椅子に座った。

ナズは何故か鋼鉄の槍を抱きしめたまま座った。


マジで長物は危ないから一旦置きなさい、ホントに。


「あー、君達には大事な話がある」

「何でしょうか」

「・・・」


ナズはまだ警戒しているようだ。

槍を持つ手をますます硬くした。


「今からナズは鍛冶師に成って貰おうと思う」

「へ?」


解かるぞ、アナ。

何言ってんだこの人、意味が解からない的な顔だ。


「アナ、驚いた時に声を上げなくなったのは良い成長だ」

「いえ、驚いている訳では・・・その・・・」


「今後もそういう風に、淡々と事実を受け入れてくれると助かる」

「いえ、ですからその・・・、

 転職を行うためにはまずギルド神殿に行きませんと・・・。

 そもそもナズさんは今日迷宮に入ったばかりで、経験が殆どありません。

 鍛冶師に成るにはまず探索者ギルドで探索者となって、

 最低でも2,3年は経験を積まないと転職できないと聞いています。

 流石にこればかりは成れと言われて成れる物ではありませんので、

 地道な努力と経験が必要です」


「ナズ、アイテムボックス操作と言ってみろ」

「えっ・・・?あいてむぼっくすそう・・・え?」


朝までは村人だったのだ。

探索者ギルドにすら行った事が無いナズの頭の中には、

アイテムボックス操作の呪文が浮かび上がっているはずだ。


頭と言うか、視界の中に字幕ワイプが入る。

そういう世界観だと言うのは身を以って知っている。


「ブラヒム語は勉強したんだから、理解できるな?言ってみろ」

「ご主人様?流石にいくら何でも・・・あっ、

 もしかしてナズさん、探索者だったのですか?」


惜しい、今日探索者に成ったのだ。

そして、それももう直ぐ終わりとなる。

ナズは既に詠唱に入っていたため、結果的にアナの問いは無視された。


「はっぴゃく、せんごひゃくのお宝を、収めし──」

「・・・待った、待った!」


「はい?」

「800、1500ではなく、やおちいほだ。

 とても沢山と言う意味だから、数だと思って詠唱すると成功しない」


「す、済みません、教えて頂きありがとうございます。

 八百やお千五百ちいほのお宝を、収めし蔵の掛け金の、

  アイテムボックス、オープン!」


混乱した様子で、目の前を指さし数えている。

多分詠唱が成功したのだろう。

ナズの目には、箱が10個並んでいるように見えているはずだ。

こちらには見えないのだが。


「ほらな?」


アナはパクパクと口を動かす。


「と言う訳で、これを渡す」


今日拾って来た糸をナズに手渡した。

直ぐにナズの手から消えたので、

アイテムボックスに入れてしまったようだ。


「違う違う。しまうんじゃなくて、これから使うんだ」


1層の敵がグリーンキャタピラーなのは、結果的には良かった。

直ぐに鍛冶が行える。


これが11層の魔物だったら、当分何もする事が無かった訳で。

身代わりのミサンガは作って貰いたいし、ギルドで買うのも馬鹿らしい。


「あの、使うと言われましても・・・」


ナズの手に再び糸が握られている事を確認して、

ジョブを鍛冶師にセットした。

アイテムボックスに入れられてしまうとジョブが動かせない。


「じゃあ、もう一度詠唱を。防具作成と言ってみろ」

「ぼ、防具作成です・・・か?・・・えぇ?」


ナズは聞き返しただけのつもりだったようだが、

それがトリガーになって再び字幕ワイプが視界に入る。


「真神の宿りたる、一箇まひとつ目占めうらの御光臨、

  防具作成!」

「えっ・・・?」


ナズが詠唱を始めたのでアナが驚いて見詰める。


既にナズの手元は白く光っており、

適当に握っていたせいもあって作成されたミサンガはハラリと机に落ちた。


ナズは自分が行った結果に、

信じられないと両手を口に当てて困惑している。


「ご主人様、あの、えっと・・・その・・・これは一体・・・?」


アナも混乱している。


しょうがない。

今日初めて迷宮に入ったろくに戦った事も無い娘が、

さっきアイテムボックスを開けて、たった今防具を作ったのだ。

この世界の人間なら誰だって驚く。


「アナ、これ以上の事はもう起こらないだろうから安心しろ」

「ご主人様・・・、申し訳ありません。私の理解が追い付きません」


アナは難しい顔をして何かを納得しようとしている。


「ああ、ついでに言うとアナもこれから戦士になって貰う」

「いぇっ?」


そんな・・もしやとか言い始めた。

小声でアイテムボックスの詠唱が聞こえる。


そして悲しそうな目で聞いて来た。


「ご主人様、アイテムボックスが開きません・・・」


「だから今は戦士だって。ラッシュと言ってみろ」

「ラッ」


ラだけ聞こえた。言おうとして字幕が出たんだろう。


「ご主人様・・・、探索者で無くなった私はどうすれば・・・」


今度は目に涙を溜めて懇願して来た。


昨日まで勝気なお姉さんだったのだ、しおらしくてこれは堪らない。

拾ってきた子犬・・・いや猫だが、

違うな・・・何かやらかしてしまったドジっ子の目だ。


「アナは暫くの間、戦士として戦ってくれればそれで良い。

 どうせ探索者も戦士も、やる事は変わらないだろう?」


「いえ、あの、パーティ編成とか」

「自分ができるしな」


「迷宮内の移動とか」

「それもできるな」


アナがシュンとなってしまった。

別にアナのやる気を削ぎたい訳では無い。


「アナ、これからお前には暗殺者と言うジョブへ就いて貰おうと考えている。

 そのためには戦士の経験が必要なのだ」

「暗殺者・・・ですか?初めて聞きます」


初めて聞くジョブの名前に、ヘロヘロになった姿勢が少し元に戻った。


「暗殺者と言うジョブは、別に人や魔物を暗殺するジョブでは無い。

 魔物に状態異常が掛け易くなるジョブだ」

「状態異常ですか・・・」


「そうだ」

「ですが、それには状態異常の効果を持つ剣や槍が必要なのでは」


「これから用意する」

「中々お目に掛れない装備品だと聞きます。それに高価だとも」


「ナズが鍛冶師じゃないか」


ナズの方を見る。

ナズはアナと自分を交互に見ながら何かを納得した。


「あ、あの、がんばります!」


ナズが期待の目線に答える。


考えが纏まったのか、納得したのか、

神妙な顔付きになったアナが再び疑念を口にする。


「全てご主人様の計画通りと言う事なのでしょうか」


「そうだな」

「ご主人様は──」


「おっと、自分は神様じゃないぞ」


察して止めた。


「エレーヌの神殿と言うのは知っているか?」

「いえ、知りません、それも初めて聞きます」

「どこかにあると言われる、全てのジョブに就けて頂ける神殿ですね。

 以前、お客さんの噂話を聞いた事があります」


ナズは知っているようだ。

そして、この国には無さそうな様子だ。

やはり、ガイウス帝国まで行かなければ無いのだろうか?


「自分はその力を持っている。差し詰め、歩く神殿って所だな」


ギルド神殿では、自分で解放したジョブに就かせて貰える。

固定に依ってそれまでに得たボーナスポイントをパラメータに割り振り、

更に余ったポイントでボーナス武器を与える。


ボーナススキルのキャラクター再設定やジョブ設定そのものだ。

自動でやる装置がギルド神殿なのだろう。

ミチオ君はそう推測していた。


だから歩く神殿と言う説明で間違いは無いはずだ。


「歩く・・・」

    「・・・神殿」

         「やはりご主──」

「じゃないぞ」


釘を刺した。


「そういう訳だからジョブやスキルに関しては、

 これからお前たちが知っている以上の事が起こっても納得をしてくれ」

「あのっ」


「何だ?」


アナにはまだ疑問があるのか。

まあしょうが無いよな。


「仮に、ジョブが自由に変えられるのだとしても、

 フィールドウォークで迷宮には行けないと思うのですが」


あちゃー、そこに気付いたか・・・。

君のような鋭い子は嫌いだよ。†


ワープの事は秘密にして置きたいな。

ボーナス魔法に付いては明かさない方が良い。

この世の節理に逆らう物なのだし。


「ジョブの複合産物だな、冒険者と探索者のスキルを融合するとああなる」

「ゆう・・・ごう?」

「ちょっと意味が解りません」


「すまん、・・・自分も意味が解らん。

 適当に言ってみたが、やっぱり無理があった」

「適当ですかッ!」


「まあ気にせず、お前の主人だけができる秘密のスキルだと思ってくれ」


結局バレてしまう。

まあ良いや・・・。

これ以上どうしろって言うんだ。


「秘密の・・・スキルですか・・・」

「ご主人様の秘密を守りますっ!」


「そうだな、その方が大事だ。偉いぞナズ」

「わ、私も守ります」


納得して貰えたようだから良しとしよう。


「じゃあナズ、夕飯を持って来てくれ、アナはお湯貰って来て」

「「かしこまりました」」

∽今日のステータス(2021/07/26)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人  Lv14

  設定:商人(14)英雄(8)戦士(13)探索者(13)

  取得:村人(5)剣士(1)色魔(1)


 ・BP112

   キャラクター再設定   1pt   4thジョブ      7pt

   獲得経験値上昇×10 31pt   武器6        63pt

   必要経験値減少/3   7pt   詠唱省略        3pt


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 探索者 Lv7

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 戦士  Lv7


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人  Lv18

  設定:商人(18)英雄(10)戦士(17)探索者(17)剣士(1)

  取得:村人(5)色魔(1)


 ・BP116(余り55pt)

   鑑定          1pt   必要経験値減少/3   7pt

   キャラクター再設定   1pt   5thジョブ     15pt

   パーティ項目解放    1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt   ワープ         1pt

   獲得経験値上昇×10 31pt


 ・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv1

 ・アナンタ 猫人族  ♀ 20歳 戦士  Lv11



 ・異世界7日目(夕方)

   ナズ・アナ2日目、トラッサの市まで4日、宿泊4日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  1 グリーンキャタピラー /  ホワイトキャタピラー

  2 コラーゲンコーラル  /  コラージュコーラル

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