§025 限界
2人を迎えてから2回目の夜が来た。
昨日は何だかんだ、不意打ちも含めて5回も爆発させてしまった。
流石に3回目はもう無理だろと思ったが、これが若さなのか?
昨夜の一件では、自分もまだまだイケるんじゃないかと自信を持った。
実際に致したのは2回だったから、大して体力は使っていないと思う。
それに今日は秘密兵器がある。
色魔だ。
早速ジョブ設定でセットする。
別に急にムラムラしだすとか、そういった変化はなかった。
ミチオ君は迷宮内でムラムラしていたようだが、
それはいつもの事だとか言って、有耶無耶にしていた。
本当にそうだったのか、
たまたまそう表現されていただけに過ぎないのか、
これは実際に自分の身に起きてみないと判らない。
取り敢えず今は至って冷静だ。
「ご主人様、食事をお持ちしました」
「ああ、そこに置いてくれ」
ナズがトレイを並べる。
直ぐにアナも帰ってきた。
「丁度今お湯が切れたそうでして、
沸いたら直ぐこちらに持って来てくれるそうです」
「そうか、その間に食べよう」
もうナズは座ってニコニコしている。
緩んだ笑顔が可愛い。
ナズの悲しそうな顔は見たく無い。
髪がぐしゃぐしゃになるまで撫で撫でしたい。
「それではいただきます」
「「いただきます」」
日本の謎文化は既に受け入れて貰えているようだ。
いただきますの風習は実は新しく、
明治時代に富国強兵の一環として政府が広めたらしい。
世界戦争時代に突入し物資が足りない中で、
食べられる事に感謝しろと言う思想教育だ。
とは言え考え方は良い物でもあるから、
戦後も受け入れられたのだろう。
何事にも感謝だ。
アナの胸を見ていると、何だか拝みたくなって来る。
アレを好きなだけ弄んでも良いのだ。
感謝感謝。なんまんだぶ。
「ほうははえはひはか?」
アナは視線に気付いたようで、
今日のメインディッシュであるソーセージを咥えながら喋る。
いや、・・・いい。
なんまんだぶ。
いや、良く無い。
これではただのエロオヤジだ。
食事中位は普通にしておこう。
後で好きなだけ・・・。
「・・・ご主人様、ご主人様、お口元が。お拭きしますね?」
はっ、ナズの声で我に返る。
パンを食べていただけのはずなのに、よだれが零れていた。
おかしいな.
口の中に物が入っている事も忘れる位に
妄想に耽っていたか?そんなはず無いぞ。
そう時間は経っていないと思うのだが。
「お加減は大丈夫でしょうか?先程からお食事が進んでおられませんが」
アナが心配そうに覗き込んで来た。
気配で察せる奴は鋭い・・・。
「いや、大丈夫、ちょっと・・・な」
「お食事が合いませんでしたでしょうか?」
「いや、そういうんじゃないから気にしないでくれ」
平常心だ、平常心。
妄想は不審がられるし、早く食べてしまおう。
いや、妄想はしていないが。
いや、ちょっとはしたかな?
急いで残りのパンとソーセージを食べた。
芋の焼いたやつはちょっと喉に閊えて涙目になった。
「それでは片してきますね」
「では、私は洗濯を」
湯の入った桶は、食事中に宿の者が持って来てくれていた。
ナズは出て行き、アナは服を脱ぎ始めた。
上着を脱ぐと、もう直ぐにたわわだ。
自分も着ていた物を脱いで渡す。
自分もアナもパンツ1枚だ。
残念な事にアナは背を向けて洗濯を始めてしまった。
チャプチャプと服を擦る度に、
後ろからチラリと見える膨らみが揺れる。
抱き付きたくて堪らない。
「ご主人様、洗濯中ですので・・・」
ゆっくりと近付こうとしたその時、アナに遮られた。
「え、いや、ああ、そうだな、邪魔するつもりは無いぞ」
しどろもどろに返事した。
邪魔するつもりだったし、ホントに気配で察する奴は・・・。
洗濯が終わった後で体を拭いて貰った。
その間、ずっとイライラしっぱなしだった。
絶対アナはそれに気が付いていたはずなのだが、
昨夜のようなデレは一切無く、やっぱり事務的だった。
「待て」のまま、食事を待たされている犬のようだ。
この後出て来るはずの御馳走を期待して、息を荒らげている。
こんなに落ち着きがなかったか?自分は。
もうちょっと冷静に物事を判断できていたつもりなのだが。
それなりに性欲はあった方だが、
ここまでガッツいていたら、
合コンでもお持ち帰りしていたはずだろう。
そうか、やはり色魔のせいだ。
食事中の妄想も、事務的だと分かっている清拭中のイライラも。
ホットホットじゃねえよバカヤロウ。†
こちとら噴火寸前なんだよ。
全てを理解して納得した。
ミチオ君は迷宮中の丸1日我慢したようだが、
自分は小一時間でこれだ。
これは駄目だ。
その後ナズも帰って来て、お楽しみタイムになった。
*
*
*
2人と交代で2回ずつ。
もうこれ以上無い位に楽しんだはずなのだが、
気持ちは全然折れなかった。
まだまだ行けるとは・・・、色魔は恐ろしい。
だがちょっと待ってほしい。
呼吸が、体力の方が・・・。
限界なのだ。
いや、今日も特別激しい戦闘があった訳では無い。
洗濯だって配膳だって、2人に任せてずっとぐうたらしていたのだ。
体力は十分回復していたはずなのに。
条件的には昨日とあまり変わっていないはずなのに。
色魔を付けたせいなのか?
色魔の持つスキルである禁欲攻撃は、
溜まった精力全てを出し切って強力な一撃を加えると言う効果であった。
もしかしたら色魔を付けて致す場合、
こちらも一撃に全力を振り絞ってしまうのかもしれない。
これを5人×2回戦だと?
どれだけミチオ君は絶倫なのか。
いや、体力があるのか。
それとも回復力か?若い子は凄いわね?
思い返せば、彼は高校生で剣道部だった。
虐めを跳ね除けるぐらいには強さを認められた、
つまる所は心身共に鍛えられたエース級だった訳だ。
自分はどうだ?
大学生活4年間、
合コンに参加した位で碌に運動や外出なんてしなかった。
デートどころか彼女だっていなかったのだし。
父の介護だって病院まではバイクだったし、
抱えたり着替えさせたりする重労働は介護士がやってくれたので、
介護に関して自分は何もする必要が無かった。
それよりも前・・・高校時は進学クラスだったし、
部活動は任意制で自分は入らなかった。
中学時代に彼女はいたが、それは健全な交際の範囲だった。
小遣いは限られていたのだし、遠出なんて当然在り得ない。
思えばこの人生、まともに運動した事が殆ど無いのだ。
ミチオ君とは体力の前提が違い過ぎた。
これまで彼の人生には敬意を感じていたが、
今は更に畏敬の念さえ覚えた。
色魔のスキルは危ない。
体力を付けてからで無いと腹上死しかねない。
そう思って、色魔は外しておいた。
当分は迷宮でLvを上げるだけに留めよう。
上位ジョブは少し気になる。
「ちょっと済まんが、体力が厳しい。少し休憩する」
「い、いえ、私達はもう十分可愛がって頂けました。
ご主人様はお疲れの様子です、ご無理なさらないで下さい。
このままお休みになられますか?」
察するのが早い子。気遣いも上手だ。
ナズは・・・彼女も体力が無いのだった。
へたばっている。
「いや、ちょっとだけ休憩したいだけだ。
そういえば、昨日果物を買った。
そこの籠に入っている。アナ、剥いてくれるか?」
「あ、それでしたら私が準備致します」
ナズがむくりと起き上がった。
若さなのか?回復が早いのか?どうなんだ?
「ナイフは自分のポーチに入っている」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
ナズは荷物が纏められている所から果物を拾い、
ポーチからナイフを取り出すと、オレンジっぽい果物を剥き始めた。
「それでは、私は洗濯の続きを致します」
する事が無くなったアナは、自ら率先して仕事を見付けた。
自分とアナの分は先程終わっていたが、
食事を取りに行ったナズの分は終わっていない。
この娘は本当に空気を読むと言うか、
どう動けば良いかを判断するのが上手い。
しかし、性的な知識はナズのようにしっかり教育された訳では無いはずだ。
前主人に仕込まれたかと思ったが、そうでは無さそうだ。
性格からして研究熱心と言うか、
どうすれば相手に喜んで貰えるかが優先なのだろう。
再び枕に凭れ掛かる。
ナズは果実を切っている。
元食堂の娘なだけあって手際が良い。
彼女の手料理を待っている気分だ。
ぺたん娘はもう体を隠そうとしていない。
皮剥きに真剣なのだろうか、見られる事への抵抗が消えたのか、
警戒心を解いてくれた事は嬉しいが、やや残念と言うか。
折角だし、しっかり見させて貰って眼福にさせて貰っておこう。
オレンジを切る作業を、だぞ?
本当だぞ?
ミチオ君は裸エプロンがどうのと言っていたが、
ロリにエプロンは邪道だ。不要だ。
あれは緩急があってこそだ。
アナの方はと言えば、こちらは元より隠す気など無いようだ。
場慣れと言うか、彼女自身が持つ武器を理解していると言うか、
視線に気付いたら、逆に見せ付けて来る位のサービス精神だ、多分。
お前はおっパブの店員か?
残念ながら今はタライに集中しているため、その全貌は見えない。
洗濯物をごしごし洗ったり絞ったりすると、
後ろから僅かに見える横乳が揺れる。
・・・いい。
さっきは堪らず襲ってしまいそうになった。
今は2人と存分に楽しんだ直後だし、
直ぐに襲いたくなるような衝動は無い。
あ、そういえば色魔を外していたのだったか。
さっきは色魔があった。
やはり恐ろしいジョブだ。
封印だ封印。
街中で見掛けたら警戒したい。
おまわりさん、おさわりまんの人です!
それにしても若さとかエプロンとか、
浅ましい事を考えるようになったものだ。
ほんの数週間前までは無欲な生活だったのに。
自分はこんなにエロくて変態だったのかと自問する。
人間だもの。
そうか、人間だから色魔なのだ。
仕方無い。
他種族から見たら、
常にエロい事ばかり考えてる変態種族だと思われていそうだ。
これではまるで世界から見た日本人その物である。
HENTAIの国の民ユウキだ、許せ。
「ご主人様、どうぞ」
剥かれたオレンジっぽい何かは一口サイズに切られ、
何かを包んでいたパピルスの上に積まれていた。
「そういえば皿は無いのか」
「そうですね、先ほど返して来てしまいました」
「食器やフぉーくがあった方が良いな」
ん?
いま違和感があった。
フォークと巧く発音できない。
呂律が回らなかった。
「フぉーく」
なるほど、存在しないから対応するブラヒム語が無い。
ミチオ君の時と一緒だ。
初めて異国の難読発音の単語を喋る時の感覚に近い。
実際に現物を作って、
浸透して行けば正しく発音できるようになるのだろう。
「ふぉーxxx?」
「いや、何でも無い。それより食べるナイフが要るな、今度買って置く。
これはお前たちの分だ。皆で食べよう」
ナズは果物を3つ全部をカットしたようだが、
3つのうち2つが、彼女達の分だと言う発想は無かったらしい。
全てが一山になっていたので、3等分にした。
奴隷は主人と同じ皿で食べるような事はしないだろうし、
このままこの山から摘まめといったら、多分拒否するだろう。
全くそういう所が面倒臭い。
「アナ、途中で良いからこっちへ来い」
テーブルに置いて、洗濯中のアナを呼んだ。
ぶるん。
振り向いた時に、歩くたびに、椅子に座った時に。
揺れる。
やはり良い。
これからアナは部屋に帰ったら上半身裸を義務付けたい。
いや、見飽きたら幸福感も減ってしまうかもしれない。
そこでエプロンか、そういう事だな?ミチオ君。
君は正しかった。
こういうのは見慣れてはいけないし、見えてはいけないのだ。
見えないからこそ至高なのだ。
「アナ、その前に上着を着て来い」
「かしこまりました」
「ナズもな?」
「あっ、はい」
2人は直ぐに上着を身に着け、椅子に戻って来た。
「私達も宜しいのですか?」
「そもそも、皆で食べるために3つ買ったんだ」
「ありがとうございます」
「いただきます」
ナズは偉い。
学習した事が完全に身に付いている。
自然に「いただきます」が出て来た。
やればできる子、ナズなのだ。
パピルスの上で刻まれた果物の破片を3等分して、指で摘まんで食べる。
「それより、これは何と言う果物なのだ?」
「タプスと言います、もっと大きい物はイシュコです」
「ふうん」
ナズが答えてくれたが、
聞いた事が無いし日本語には変換されなかった。
地名や人名、固有名詞は現地語のままなのだろう。
地域によって呼び名が違うかもしれない。
タプスとか言うのが、そもそも共通語では無いのかもしれない。
「やはりタプスは美味しいですね」
1つを大事そうに頬張りながらアナが言った。
「アナは食べた事があったのか?」
ナズは元平民だし、食堂で働いていたからには当然食べた事はあるだろう。
だが最初から奴隷であったアナが、
露店で果物を買っている姿はちょっと想像できない。
「ええと、野菜くずを貰った時に、
稀に実が少し残った皮を頂く事もあります」
剥いた皮に残ったものを齧る訳だ。
なんか納得。
寂しい奴め、もっと食え。
2切れアナに回した。
「え、いえ、あの、ご主人様?」
「洗濯の駄賃だ、取っとけ」
「申し訳ありません、ありがとうございます」
呼吸もすっかり落ち着いたし、
爽やかな酸味と甘味が体力を回復させた。
十分回復した、と言いたい所だが、
このまったりしてしまった雰囲気から、
もう何かしようと言う気は起こらない。
と言うか、何かする必要すら無いのだ、2人にお任せして置けば。
夜も更けた事だし、このまま寝る事にする。
「じゃあ自分は寝るから」
3つ繋げたベッドの中央に大の字になった。
ふかふか枕に頭部が埋もれると、意識が飛びそうになる。
「あ、はい、私は洗濯を終えたら寝させて頂きます」
「私も、これを片付けますので」
その後何やら2人で会話しているようだが、
心地良い疲労感と満腹感に包まれて、そのまま眠りに付いてしまった。
∽今日の戯言(2021/07/27)
色魔だ。
じゃないんだよ、欲しいよそのスキル、取得するところからお願い。
・作中名詞中訳
オレンジ → タプーズ(ヘブライ語)
グレープフルーツ → イシュコリオット(ヘブライ語)
・異世界7日目(夜)
ナズ・アナ2日目、トラッサの市まで4日、宿泊4日目




