↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DIE A LOG  作者: さまー
1章 ~Voice From The Frontline~
PR
5/36

5.阪井裕人より

法寺理貴の持つ特殊能力、それは、死体に触れることで、死者との対話ができるというものだ。

「阪井さん、あなたの見たものを教えてください」

途端に視界が暗くなる。法寺理貴は、この能力を使っている間、聴覚以外の五感が機能しなくなってしまうのだ。

「…法寺くんだったかな、君が知りたいのは、差詰…塀の中かな」

「はい」

察しの早い阪井裕人一等兵。霊界に行ってしまっても尚、しっかりした印象を抱かせる。

「まずは先遣隊の有無から。先遣隊はいた。 でも、ほぼ戦力としては機能してないだろう」

先遣隊がいたとは思っていなかった法寺は驚きの意を表す。中井大尉補佐、志場大尉よりも上層の者たちが送ったのだろうか。

「そんな彼らを敵は何か…全く関係のない何かを扱うように撃ち殺していたよ」

歯牙にもかけない、という表現が正しいのだろうか。そう思わせるようだった。

「そんなわけで、塀の中の敵は半分お祭り騒ぎさ。先遣隊たちをサンドバッグのように扱い、ゲーム感覚で次々に殺していた」

「そんな彼らが…なぜ俺たちの存在に気づいたんですか?」

法寺の問いに、阪井は言葉を詰まらせた。否、いうべきかどうか一瞬迷ったのだ。

「…塀の中の様子を見た瞬間に、凄まじい殺気を感じた」

あの時の阪井の慌て様を思い出せば、『凄まじい殺気』と単純な表現になるのも頷けた。

「俺の後ろのお前たちにも向けられた殺気だったよ。少年兵が監視を任されていたんだ。そして、俺はマシンガンを構えるのを躊躇してしまったんだ」

「躊躇だなんて、抵抗者は容赦なく殺せという作戦だったのでは…」

そう言いかけた口だったが、少年兵というワードを聞いて、芹沢の言葉を思い出してしまった法寺。

躊躇の途中まで言って口を噤(つぐ)んだ。

――お前は…子供を殺せるか?

この言葉に、YESの返答をすぐさま返す自信が無かったのだ。


しかし、自分たちはお祭り騒ぎをしている最中、少年兵に見張りをさせ、人を撃ち殺させているというのはいかがなものなのか。


「避けるのは不可能だと思った俺はみんなに伏せろと合図したんだ。中井さんだけはわかってくれて、合図を送ってくれたが、何人かは間に合わなかったみたいだな」

阪井の悲しそうな声が物語った。死ぬ間際に察した絶望を。

「すみません」

「でも、こうして君と対話ができるってことは君は生きているんだろ? そして、君にこういう能力があるってこともわかった」

阪井はとても察しがいい。法寺も驚く程だ。


「君はこれからすごい兵士になる気がする―なんてこと言っても、たかが一等兵の戯言としか思われないかもな」

「ありがたき言葉です」

法寺も聞きたいことは多方聞いた。阪井も言いたいことは多方言った。

「最後に言いかい、法寺くん」

「はい…」

突如として送られた阪井からの提案に少し身構える法寺。

「…その能力、いつどういう経緯で手に入れたんだい?」

阪井の単純な興味だろうか。それでも法寺もこれまでの謝意から話すことにした。

「少し…長い話になりますよ?」



「中井さん、何やかんや言って法寺理貴を手放したことは惜しかったのでは?」

激戦区から駐屯地までの帰路。一時撤退の判断を下した中井が、率いていた部隊は作戦を練り直すために歩いていた。

「そりゃね、三年目にして三度も前線経験してる青年兵なんていないからね。ただあれは犬死しやすいタイプの兵士だ。人間的感情が強すぎるのかもしれない」

人間の心を殺して生きている側の人間にとって、先ほどの法寺の行動は理解できなかったのかもしれない。しかし、中井美和は頭のいい女だった。

「…もしかしたら、人間的感情を100%殺しているのかもしれないわね」

別の見解も用意していた彼女に、思考の斑はなさそうだ。

「どうして阪井に執着したのかしらね…」


彼女が空を見上げると、雲が少しずつ薄く広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。