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DIE A LOG  作者: さまー
1章 ~Voice From The Frontline~
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4.最前線より

火薬の臭いはまだ残っていた。法寺の鼻を刺激するその臭いは風に乗ってすぐに消えていく。

荒野の踏み固められた痩せた地を彼の軍靴が蹴り飛ばしていくことで砂埃が立つ。その音はよく響き、今にも塀の向こうに聞こえるのではないかと思わせる。

そんなこと、青年兵:法寺理貴は一切気にしなかった。

地に伏せる阪井裕人の遺体を拾い上げる。70kg超の阪井。装備も加えるとかなりの重量だ。

半分引きずる形で彼を藁製のブロックの向こう側へと運ぼうと試みる。

砂埃が彼の傷跡に降りかかる。彼をどうしても運ぶのにはかなりの時間がかかると見た。

「クソッ!」

引きずりながら思案する。

本来の彼の目的は阪井裕人の遺体を引き上げることのみだった。

装備などを一切合切取り除けば幾分か軽くなり、目的の達成は容易になるが、敵に装備が奪われる可能性を考え、それは断念したのだ。

法寺理貴は全身の筋肉を精一杯使って阪井を引いていく。為すがままに引きずられていく死体は何も語らない。

「もうすぐだ…もうすぐであなたの声が…」


法寺は急いで引き上げることばかりに気を取られていた。

そう、彼に向けられた幾多の銃口に、まだ彼自身気づいていない。

両手を使っているので武器を手に取ることもできない。敵にとって、この青年兵を殺すのに、今以上のチャンスはないのだ。


銃声がした。法寺理貴は固まった。

「うっ…」

思わず声が漏れる。頬を掠める銃弾。嫌な臭いが鼻を刺す。

次で仕留められる、と感じた彼は一つの策に出る。


「できればやりたくはなかったんだが…」

中井美和の部下の言葉を思い出す。『善人だがなんだか知らねえが、こっちで真っ先にやられるのは善人だ。覚えとけ』という言葉だ。

阪井も中井の部下ならこの事を熟知しているはずだ。


ならば心を鬼にしてやろう。

作戦、目的の達成のためなら手段を選ばぬ鬼に…


この言葉が、瞬間的に法寺理貴の脳内を、増殖するバクテリアの如く埋め尽くした。

再び飛んでくる弾丸。彼はそれを、阪井裕人を盾に防いだ。

渇きかけ、塞がりかけていた傷跡から赤黒い血飛沫が舞う。

敵の次の一発が飛んでくるまでに倒れたふりをする。阪井裕人を背に、そして、地面に伏せて。

その状態で法寺は匍匐(ほふく)前進を行い、ほぼその体勢のまま逃げていく。

圧倒的に弾丸を当てにくくなった的に、敵も銃弾を撃ってくることはない。

銃口は塀の口から姿を消していた。そして、法寺理貴も、辛くも藁製のブロックの後ろ側まで逃げ切ることができた。


「よし、これで…阪井さんの『声』が聞ける」

法寺理貴は知りたかった。彼が、死ぬ間際に何を見たのか、何を聞いたのか、そして、何に殺されたのか。

常人にはその探求が不可能である。無論、死人に口なし。会話などもってのほかだ。


しかし、彼には一切他言していない特殊能力があった。

そう、彼は常人ではないのだ。


「阪井裕人一等兵、あなたの生前の声を…お聞かせください」

法寺理貴二等兵卒21歳――死体に触れることで、死者との対話ができる。


彼の目的は、阪井裕人が何に殺されたのかを知ること。

阪井裕人という今日出会ったばかりの一等兵に執着した理由は、彼が唯一の、塀の中を見た存在だからだ。

「Voice from the frontline」


静粛に、最前線との対話を始めた。

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