18.朝礼より
少佐の告げた作戦内容はこうだった。
『大型の爆弾を、激戦地となっている冊の中にブチ込む』
相馬少佐がそれを高々と叫んだ瞬間、法寺は右手を上げ、主張する。
「それは危険です! そもそも、あの冊の中に近づくことが危険です!」
たかが二等兵卒の戯言だと思われる覚悟は右手を挙げた瞬間にできていた。
「…そこの二等兵卒、何を根拠にそれをいう?」
少佐の低い声が自分に向けられ、少し固まる。しかし
「彼は一度作戦で冊の周囲へ行き、柵の中を見ています。彼の証言は大いに参考になるかと」
法寺の能力について知る中井と志場がフォローを入れた。相馬少佐は頷く。
「何故危険なのだ? 教えてはくれないか?」
「柵の周囲は少年兵が見張っております。常に目を光らせ、逃げようものなら確実に殺しにおってくるほど殺意に満ち溢れています。大きな爆弾を抱えて近づこうものならそれまでに撃たれて終わりです」
法寺は尚も続ける。
「そして、阪井裕人一等兵を始め、飯島俊哉一等兵、芹沢崇人二等兵などが彼らの凶弾に倒れております! なにより、柵の中には先遣隊がいます! 彼らを無視するのですか?」
相馬の一歩後ろに立つ近藤曹長と伊野伍長。
伊野は近藤に話しかける。
「あれが黒田さんの言ってた若い兵士ですか?」
「みたいだな」
スキンヘッドの頭をさすりながら近藤は答えた。
「なかなか饒舌だなあ。黒田に引けずとも劣らない」
「ですね」
法寺の説明を受け、相馬少佐は咳払いを二つして大きく頷いた。
「なるほど。なぜただの等兵がその情報を知っているのかいささか不思議ではあるが、それは事実。しかし、先遣隊は既に壊滅した。自爆の指示を行っている」
―なぜそんなことさせた!? こいつらは…先遣隊の本来の意味を何もわかっちゃいない!!
法寺は耳を疑った。ここまで無能な上司がいてもよいのか―と。
ここで巨大爆弾を投下すれば、死体は木っ端微塵になり、法寺自身の持つ対話能力も、効力発揮できなくなってしまう。
これではだめだ。
法寺理貴は、ここでひとつの決心に至る。
―俺の能力を、こいつらに見せつけてやる。
おそらく彼はこう考えた。『死者と対話する能力を見せつけることで、激戦区で死んだ先遣隊たちの死体をみすみす爆風で木端にすることもなくなるだろう』と。
法寺はおろしていた右手を再び挙げようとした。
「待ってください少佐」
少佐を呼ぶ声に、法寺の右手は動きを止めた。
「その作戦、効率が悪い上、先遣隊を無駄死にさせているに等しいです。もし、爆弾で全滅ができなかったときの反撃も等しく怖いです」
意見を呈したのは、堂島茂邦曹長。芹沢の上司であった男だ。
「お、シゲちゃん久しいな…」
少佐に物申す男の姿を見て、近藤曹長は笑った。
「お知り合いですか?」
「ん。同期だよ。あの中井美和ちゃんも同期同期」
伊野と近藤は相変わらず私語が多い。
「ん、作戦に反対意見があるのは構わんが、そういうときは、代替案を出すのが常識だろう? ねぇ曹長さん」
「はい、もちろんです」
相馬少佐の言葉に、堂島は応える。そして、志場大尉の方を見る。
「志場大尉は先日、作戦を既に決めておりました。方針決定は、その作戦内容を聞いてからにしましょう」




