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DIE A LOG  作者: さまー
1章 ~Voice From The Frontline~
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12.治療より

苦しみもがく声が耳を劈(つんざ)いた。思わず目を背く。

「お、おい!!」

声を上げた芹沢。すぐさま駆け寄る。偶然にもちょうどヘリコプターの窓から銃口は姿を消していた。

弾を詰め替えているのだろう。

「おい!!」

少年兵トロイの目は虚ろになっている。左胸に空いた穴から鮮血がドクドクと流れている。

隣で柴田に抱えられている少年兵、ジョンはこの世の果てを見ているかのように絶望した表情を見せる。

「トロイ!! どうしてお前がっ!」

暴れるジョンを柴田恭則は懸命に抑える。

撃たれた少年を抱えていた後藤も腹斜筋の辺りに銃弾を掠め、その箇所から赤い鮮血を流していた。

片膝をついて気持ちの悪い汗を流していた。


「ちくしょっ…」

芹沢は立ち上がる。

「今すぐ物陰に隠れて応急処置だ!! 絶対に死なせてはならない!! 早く今のうちに!」

必死に訴える彼の目を一瞥して、中井は立ち上がる。

「こいつはここに放置。聴取は生き残ったこいつからのみで十分だ」

「し、しかし!!」

中井の言葉に納得できない芹沢。中井は芹沢の脾腹を右足で蹴り抜いた。

「目的を忘れたのかァ!!」

胃液が口から溢れる。それでも逸れない眼光。芹沢の意志は固いと見た。

本来の目的は法寺理貴の救出。これ以上のけが人を出すのは得策ではない。

しかし、芹沢の少年に対する良心が、目的の遂行を邪魔している。

中井はそう判断した。

「芹沢…と言ったか。堂島が評価するからどんなやつかと思えば…法寺と同じ甘い考えなのか」

その中井の言葉に、芹沢の上司である堂島は黙っている。


「とりあえず物陰へ!」

法寺が叫ぶ。中井は上空を見上げ、頷き、指示を周囲に伝えた。

ヘリの死角に潜り込む隊の人々。鮮血があふれるトロイ、後藤。


「ダメだ…トロイ、死ぬな!」

ジョンは泣いている。親友の死など目の当たりにはしたくない。

芹沢は応急処置をしようとするが、必要な道具はほとんど残っていない。どうしても後藤の方を優先しようという大意は変わらないためだ。


「落ち着け! 喚いてもどうしようもないだろ! それとも後藤伍長を死なせるのか!?」

「それはできません! つか、どっちとも助けなきゃ!!」

「甘えたことほざくんじゃねえ!」

芹沢は頑なだ。それを叱咤する中井の目からは冷徹さは消えていた。

「僕はどうせ前線には出られない補給係だ! でも、こういうときに活躍しなかったら…何のためにこの班に参加したのかわからないじゃないですか!!」

芹沢崇人、彼は実際、法寺理貴と同じくらいに実力のあった兵士であった。

しかし、前線に積極的に出たがる法寺とは対照的に、芹沢は周囲のためになる活動を好んだ。


それが起因して自身の昇格を手伝ったこともあったが、彼の実力を期待していた上層部からはイマイチな評価を受けていた。

生来の才能がある中で、その才能とは違う方向へ勤めていることに不満があったのだ。

中井美和も、そのひとりだった。そして、法寺理貴も。


「芹沢、よせ。もう、包帯ないだろ」

法寺が彼の様子を哀れだと見つめていた。

巻かれた包帯は底を尽きていた。

未だ顕になっている少年兵トロイの患部。

息が細くなっていく。危篤―とでも言うべきであろうか。


何もできない時間が徒(いたず)らに彼らの間を流れていった。

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