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「どういう事なの?」
「立ち話もなんですので、お茶でも淹れます。神殿にいらっしゃってください」
私達は神殿に向かう。
「スズ。あなたはここで待ってて」
スズは首を振る。
「ダメよ。この神殿に入れば、灰になるわよ」
スズは肩を落とした。
「スズさん。大丈夫ですよ。神殿の庭でお茶を淹れますから」
老神官は笑顔を見せた。
私達は、神殿の庭に通される。
ここならスズでも大丈夫だ。
「だいじょうぶ?浄化されてない。しんどくなったら、離れなさいよ」
私は声をかける。
スズは頷いた。
「しかし、聖女様がネコロマンサーとは」
「ネコロマンサー?」
「いえ。ネクロマンサー」
「あぁ」
「浄化との兼ね合いは大丈夫なので?」
「気を付けてたら大丈夫。最近は浄化する事もあまりないし」
「そうですか」
「それより、魔族と人間の混血とか、どういう事?」
「魔族は生まれつきの魔力量が多いのですよ。ですから魔法に適性がある」
「それはわかるわ」
「魔族の特徴は?」
「肌の色とか、魔力量、あとは髪質とか、身体能力」
「人族よりも生物的には強い部分も多い」
「そうよね」
「ですから、定期的に魔族の血を一族に入れる者も少なくないのです」
「どういう事?」
「王国の根幹を揺るがすゆえ、名前は出せませんが、貴族の中には、そういう事をする者も少なくありません」
「どういう事?」
「具体的にいうと、魔族を捕まえてきて、人との間に子を産ませる。その子と貴族の間に子を産ませたり、その子を兵士にしたりと」
「そんな事があるの?」
「はい。この国の暗部です」
スズは腰を手に当てている。
「スズ怒ってるの?」
スズは頷く。
「では。なんで私は放逐されたのかしら」
「話によると、その孤児をある貴族が欲しがったからとか」
「どういう事?浄化されたのでは」
「浄化させると言っておいて、影で取引するのは、よくある事です」
「まさか。あなた達も?」
「誇れる事ではありませんが、必要とされる方々の寄進額が膨大ですから」
「それなら、そうと言ってくだされば良かったのに」
「誰かが言ってたら、どうされてましたか?」
「王国中に言いふらしたわね」
「ははははは、それは聖女様らしい。ですから放逐されたのでしょう」
「なるほどね。賢い選択だったわけね」
「短期的には賢い選択でしょうが、長期的には愚かな選択でしょうね」
「なぜ?」
「聖女様の行動は、誰にも予想できなかった」
「私を処刑すれば良かったのにね」
「ははははは。聖女様を処刑するほど、愚かではありませんよ。聖女様を処刑すれば、あちこちで反乱が勃発する」
「そうなの?」
「そうですよ。あなたは民から愛されている。あなたが理解しているより、はるかに」
スズは頷いていた。
私には実感がなかった。たぶん私は民衆を見ていなかったのだろう。
救済は私にとって、予定表の一部でしかなかったのだと、そう思った。
そういえば、先ほどの老神官は神官長だった。
私は焼き菓子を沢山貰い、神殿を後にした。
神殿中の神官達が握手を求めに来たのには驚いた。
屍を扱っている、ネクロマンサーという自覚はないのだろうか?
「穢れるわよ」
というと、
「はい!喜んで!」
と口々に言っていた。
まったく、この街の神殿は神官長といい、他の神官といい、神に仕えている自覚がないのだろうか。
私は、焼き菓子を食べながら、兵営に戻る。
途中で子供にせがまれたので、焼き菓子を少し分けてやった。
屍達は、焼き菓子を食わないから、助かる。
兵営につくと、
モナズ達や騎士団達が待っていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
皆が頭を下げる。モナズは鼻をひくつかせている。皆の視線が私の手に集中する。
「それで今日はどうだったの?」
私は話を逸らせることにした。
「私はビスマス殿に実戦でご教授いただきました。なんと今日は死者ゼロです」
団長は胸を張る。
「俺らは冒険者ギルドで仕事を受けてきたぜ。大型種が五十ほど」
モナズは言った。
「そう。じゃあご飯でも食べましょうか?」
「ねぇ。それは何?」
ヒソは指さす。
(ぐぅ~)
誰かの腹の音がした。
皆の視線が痛い。
「もうわかった。並んで一枚ずつね」
皆一斉に並んだ。
私は一枚ずつ配る。
気が付くと、もうすっかり焼き菓子はなくなっていた。
少しくらい隠しておけばよかった。
私達は肉を食う。
今日はいつもと味が違う。
「いつもと味が違うわね。どうしたの?」
「これはな。ここらの特産の香辛料を使ってるんだ。どうだ美味いだろ」
団長は言った。
「うん。美味しい」
「乾燥してるし、日持ちするから、好きなだけ持っていってくれ。足りなかったら調達するから」
団長は笑った。
私は肉を味わいながら、思い返す。
そういえば、ずいぶん味という事に、興味を失っていたのかもしれない。
食事を終えた後、マンガンが子供達を連れてやってきた。
「どうしたの?」
「この子達、祝福を受けていないんだよ」
「神殿に行けば?」
「聖女様にお願いしたいって」
「私はダメ。神殿に行って」
「聖女様。僕達の事嫌いなの?」
「そうじゃないわ。仕事場の問題よ。そうねぇ。例えば他の人の家に忍び込んでオヤツを食べたらどうなる?」
「殴られる」
「そうでしょ。私も同じなの」
「どういう事?」
「祝福は神殿のお仕事よ。私もできるけど、私は今は神殿にはいないわ。神殿に代わって、あなた達に祝福する事は、オヤツを盗んで食べるようなものなのよ」
「そうなんだ。わかった。じゃあ神殿に行くから、あとで僕達のために祈ってよ」
「わかったわ。それくらいならしてあげる」
「マンガンごめんなさいね。そういう事だから」
「こちらこそ、すまないね。変な気分にさせただろ」
「良いのよ」
私は作り笑顔をした。
作り笑顔なんて慣れているのに……。
少し変な気分になったのだ。
子供達は神殿に向かい、私はその後祈りを捧げた。
「君はまったく、文句一つ言わない」
声が聞こえる。
「文句なんかつけようがありますか?」
「嫌味にしか聞こえないよ」
「どうされたのですか?お忙しいのに」
「いやね。君がどうしているかと気になって」
「私を助けようと」
「利益相反になるからね」
「でしょうね」
「私を恨んでいるかい」
「いいえ。あなたは彼らの復活を手助けしてくれた。恨もうはずがありません」
「手助けね。私は知識を与えただけだ」




