移動
盗賊と貴族とその家族、指揮官や部隊長は、盗賊のアジトで暮らすように指示をした。
そして、毎日魔物を狩り、それを街の人に提供する。
それが決定事項だった。
私はスミレ区に一度戻ることにした。
兵営の使い道を決めていなかった。
兵士達が頑張った事で、スミレ区はずいぶん平和になっていた。
はじめは屍に少しは抵抗があった住人も、今はまるで気にしていない。
兵営を見ると、やはりほとんどの場所が使われていなかった。
私は近くの街の人達と相談し、兵営の兵士達が使用していない箇所を貸し出すことにした。
そして、私達はグービアの隣のアカリア区に向かう。
「アカリアはどんな場所なの?」
「アカリアはずいぶんまともだ。あそこは騎士団長がまっすぐな人でな」
モナズは言った。
「じゃあ、討伐依頼も少ないのじゃない?」
「それがグービアのギルドの話じゃ。グービアより多いらしいんだ」
「苦戦してるのかしら」
「もうすぐ着くから」
(かんかんかん)
「突撃!」
「うわぁ」
「大丈夫か!」
「おのれ魔物め!」
「突撃!」
(どどどどどど)
「お腹空いたわね」
「あぁ、肉もうちょっと食ってけばよかったな」
「ちょっと!なんかスゴイ事になってるわよ」
ヒソが指さす。
魔物と騎士団が戦っていた。
明らかに劣勢だ。
「ねぇ。あれが例の騎士団長?」
「そうみたいだな」
「なんか馬鹿みたいに、突撃させてるけど、大丈夫?」
「まっすぐな男と聞いていたが、これはちょっと拙いかもな」
「ねぇ皆。あの魔物達を背後から襲って」
屍達は、楽しそうに魔物達を背後から襲う。
「新手が来たぞ」
「アンデッドだ」
「もう終わりだ」
「ひるむな!突撃!」
騎士達から声が聞こえる。
「あの騎士団長。撤退という言葉を知らないの?」
「まっすぐな男だからな」
モナズは苦笑いをした。
十分ほどして、魔物達は壊滅した。
残った騎士は十人程。
ぶるぶる震えながら、こちらを見ている。
「お前は何者だ!」
騎士団長は剣を構える。
「助けてもらっといて何?その言い草は!」
私は叫ぶ。
「助けて……、助けてくれたのか?」
「見なさいよ。魔物達を倒したのは、私の仲間よ」
「しかしアンデッドだ」
「この者達は騎士よ。そして農民。皆魔物を討伐してくれているの」
「そ、そうか。すまなかった。皆剣をしまえ」
騎士達は剣をしまった。
「あなたが騎士団長?」
「あぁ」
「ちょっと聞くけど、いつもあんな調子で戦ってるの?」
「というと?」
「あなた突撃!しか言ってないじゃない」
「まぁ」
「そこの騎士達。団長から突撃以外の命令聞いた事ある?」
皆首を振る。
「そんなにヒドイのか」
モナズは呆れている。
「これまで何人部下が死んだの?」
「もう九十人程になる。百人いたからな。今日も三人命を落とした」
団長は肩を落とす。
「戦う時は、二人一組で戦うか、数人で組んで戦うの」
私は地面に棒で絵を描き説明する。
「しかし騎士たる者、正面から戦わないと」
「ねぇビスマス。それで正しいと思う?」
ビスマスは首を振る。
「ビスマス?聖女様の騎士団長の名前では。たしか処刑されたと」
ビスマスは自分に向けて指をさす。
「あなたがビスマス様ですか」
ビスマスは頷く。
「知ってるの?」
「知ってるもなにも、私達騎士の憧れですよ」
ビスマスはどこか誇らしげだ。
「もしかして、あなたは聖女様。追放された。あぁ、なるほど」
「どういう理解をしているのかわからないけど、正面から戦うのはダメ。危険すぎるから」
「まぁビスマス様もそうおっしゃるなら、改めます」
「それでこの子達どうするの?」
「埋葬します」
「屍として兵士に加えることができるけど」
「死んでまでですか?」
団長は目を伏せた。
「団長!兵士に加えさせてください」
残った兵士が叫ぶ。
「なぜだ」
「私達は死を覚悟しています。だから死ぬのは構わない。しかし死しても民のため戦えるのなら、その方が嬉しいです」
そう言った。
皆頷いている。
ビスマス達も同様に頷いた。
「わかりました。お願いします。もし私が亡くなっても、同じように戦列にお加えください」
団長は膝を折った。
私は術を施し、亡くなった兵士は、屍として、立ち上がった。
「あの……、亡くなった仲間で埋葬された者がいます。彼らは?」
「できるわよ。案内して」
墓地に行き、兵士を掘り返す。私は再び術を施す。
そして騎士団は元の数に戻った。
私達は、団長に今までやってきた事を説明した。
彼は同じようにしますと、約束してくれた。
魔物を討伐した場所に戻り、肉を捌く。
内臓と血を屍達に配り、肉は生きている者達でわけた。
そして肉は街に運び込まれ、振る舞われた。
一部の屍は家族に会いに行った。
変わり果てた姿に動揺していたが、復活を喜んでいた。
私達は兵営に迎えられ、一晩ゆっくりとした。
翌朝、モナズ達は冒険者ギルドに向かう。
ビスマスはしばらく団長につき、
実戦で戦術の指導を行うことになった。
私は暇になったので、スズと共に街に入った。
先日私とアンデッド達を見たので、皆すんなり受け入れてくれた。
「あ、あのクロム様ではございませんか?」
神官の恰好をした老人が近づいてくる。
「私をご存じで?」
「はい。以前に何度かお会いしています」
「ごめんなさい。いろいろ有って、記憶が曖昧なの」
「それは良いのです。よくぞ御無事で」
「心配してくださっていたの?」
「それはもちろん」
「そんな事を言ったら、神殿に睨まれますよ」
「ここの神殿の者は皆、クロム様への今回の処罰に納得しておりません」
「まぁ私は魔族の孤児を育てていたからね。仕方がないわ」
「魔族の孤児を育てるなど、そんなにおかしな事でもないですよ」
「そうなの?」
「はい。魔族と人間の混血もいますし」
「知らなかった」
「そうでしょうな。あまりおおっぴらにはしないですから」




