正しい分配
「あなた達の分け前は、この街の商人に宝飾品類を買い取ってもらい、そこから出すわ。それで良いでしょ」
「それはもちろん良いが、食料を売れば金になるぞ」
「ちょっとモナズ。聖女ちゃんに言ってもムダだって」
ヒソはモナズの腕を引っ張る。
「そうだな」
「もう。わかってきたじゃない」
私は笑う。
屍達もつられて笑った。
モナズ達は食料を配給し、その後、商人達を連れてきた。
「盗賊を撃退してくださったようで、ありがとうございます。できる限り高く買い取らせていただきます」
三時間程じっくりと査定をし、私達は現金を手に入れた。
「これ一割よ」
私は現金を手渡す。
「ありがとう」
モナズ達は受け取った。
じゃあ食事にしましょうか。
そう言うと仲間達は魔物を狩りに行く。
そしてまた肉を捌く。
血と内臓を食べ、私達は肉を食った。
「これまた配るんだろ」
モナズは言った。
「えぇ。でも今回は私もついていくわ」
「だいじょうぶか?」
「あなた達は英雄よ。それに女子供老人しかいないなら、平気だわ」
「わかった」
モナズと共に街に入る。
たしかに若い男はいない。
皆嬉しそうに手を振り、近くに寄って来る。
「すごい歓迎っぷりだろ」
モナズは嬉しそうだ。
「そうね」
肉を用意しだす。
人々が集まる。
「あのこの街の人口って今どのくらいいるの?」
街の女に聞いた。
「三百人程度です」
私は商人に言って三百人分の袋を用意させる。
持っていた現金を確認し、均等に分けた。
皆が肉を食べ終わった頃、私は声をかけた。
「盗賊の持っていた宝飾品とかを現金化したの。こっちでかかった経費を差し引いて、皆に配るから、街中の人を集めて」
続々と人が集ってきた。
「盗賊の持っていた宝飾品とかを現金化したの。こっちでかかった経費を差し引いて、皆に配るから、ここに一列に並んで。貰い終わった人は、こっちで待機してね。一度貰った人が列に戻らないように、皆確認しておいてね」
モナズ達は手を振る。
私は列に並んだ人にお金を渡しだす。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
しばらくすると、
「私は盗賊に沢山奪われた。私は多めにして」
そういう女が出てきた。
「では一度列から外れてください」
私は笑顔で答えた。
そうして、ほとんどの者達に配り終えた。
残ったのは、文句を言い、列から外れた者だった。
人数は三人だった。
他の者達は帰る。
「じゃあ街の外までついてきて」
私達は手招いた。
三人はついてくる。
「どこまで行くのですか?」
「盗賊を撃退した仲間の元よ」
「この冒険者達がやったのでは?」
「彼らは手伝ったのよ」
「なにか死臭のような……」
「そうよ。気にしないで」
三人は、屍の仲間を見て、腰を抜かす。
「と、盗賊もいる!」
「あの方たちも、我々に取り込んだの。でも大丈夫。悪さはもうしないから」
「あ、あの約束のお金は?」
「私が約束した?」
「列から外れてくださいと」
「お金をあなたたちだけ、余分に払いますと言った?」
「いえ。ついてきてとしか……」
「騙したのですか?」
「騙してなんかないわ。でも本当にあなた達が、お金を沢山取られたのなら、可哀そうだから、なんか考えたいと思うの。まずはお金を払うわね」
「それはありがとうございます」
「でもね。思いつかないのよ。もう盗賊から奪ったお金もないし、そうだ。肉を毎日優先的に食べさせてあげましょう。肉代も高いから。それでいいでしょ。ここにしばらくいてもいいから」
屍達も頷く。
「この方達と一緒に肉を……」
「えぇ。でも大丈夫。この子達は血と内臓しか食べないし、あなた達のことも食べないわ。ほら私も食べられてないでしょ」
「あの……、私は用事を思い出したので、帰ります。これで十分です。それでは」
男が立ち去った。
「私も」
もう一人も立ち去った。
「好きなだけいても良いですから」
「はい」
女はうなだれた。
女は鼻を押さえていた。無理もない。ここは死臭が漂っている。
「臭う?」
「えぇまぁ」
「顔を出して、鼻を浄化してあげるから」
「あなたは?」
「この国の元聖女よ」
「聖女様ってあの?追放されたのでは」
「そう、追放されたの。鼻は浄化しなくていいの?」
「お願いします」
私は鼻を浄化した。
「鼻が楽になりました」
「慣れると大丈夫だけど、初めてだと少しキツイでしょうね」
「まぁ、あのこの屍達に私を襲わせたりしないのですか?」
「なぜ?」
「我ながら強欲だと思うのです」
「他の人より多くと言ったこと?」
「えぇ」
「自覚はあるんだ」
「はい」
「でも仕方がないんでしょ。そうするしか」
「夫にも先立たれ、子供も盗賊に殺され、気力もなく」
「そう」
「かわいそうだとは思わないのですか?」
「思って欲しいの?」
「いえ」
「ごめんなさい。平時だったら、それに私が聖女という立場にいなかったら、きっと同情したでしょうね。でも……、もうそんな感情は消えてなくなったの。絶望を見すぎたせいかしら」
「そうですか」
「そうなのよ。でもあなたが辛くないなんて、まだマシだなんて思ってはいない。私ができるのは、肉を配ったり、盗賊に取られた物を取り返して、それを分配するだけ」
「それでも十分です。聖女様がいなくては、私達は長くはなかったと思います。街も活気が少し戻りました」
「そう」
「あの、こんな事をしていて良いのですか。王国に睨まれでもしたら」
「心配してくれてるの?」
「まぁ、肉は美味しかったですし、お金も貰いました」
「追放されたのだもの。好きに生きるわよ」
「しかし、謀反の動きありとかで、王国に攻撃されませんか?」
「殺されると?」
「ええ」
「大丈夫よ。この子達、皆死んでるから」
そう言うと、屍達は皆笑い出した。
「でも聖女様が……」
「いいんじゃない。私もいつか死ぬし」
「あまり生に執着はないのですね」
「神の元に戻るだけよ」
「そうですか」




