移動
「どうするの?」
「別の区に行こうと思う。それで……、ついてきてくれないか」
「なぜ?」
「君がいないと……」
「隣国に移住するから彼女についてきてくれという男みたいな言い方ね」
私は笑う。
ヒソ達も笑っている。
「仕方ないだろ。じゃあどう言う?」
「そうね」
スズが手振り身振りで説明する。
「ふんふん。なるほど」
「わかるのか?」
私は頷く。
「この付近の大型種は全て食いつくした。他の区に行くと、別の大型種がいる。それを皆で狩りに行かないか?」
「おぉそれだ。俺はそれが言いたかった」
「あぁわかったわ。じゃあ行きましょう。という訳で村長。明日村を発つわ」
「聖女様。なんとお礼を言っていいか。そうだ聖女様の銅像を村にたてましょう。子々孫々まで聖女様のご威光を知らしめるために」
「やめて。銅像なんて、もったいないわ」
「御遠慮なされないでください」
「それに鳩や鳥の糞まみれになるでしょ」
「それはお拭きしますから」
「結局拭く人も、だれこいつみたいな感じになるのよ」
「伝承を受け継いでいきますから」
「それにね。王国に目をつけられる。だからやめて」
「そうですか。わかりました。でもなにかできる事は?」
「いい。十分してもらったから。それでモナズどこに行くの?」
「次は隣のグービアだ」
「村長。あの兵士達は、ここら辺の魔物討伐と、肉配給要員として置いておく。悪さはしないと思うけど、なにかあったら、グービアに使いを出して」
「はい」
スズが私の肩を叩く。
身振り手振りで説明をする。
「あぁ、連絡係を一人置いておくわ」
「ありがとうございます。助かります」
次の日、私は兵士達に指示をして、残りの仲間と、冒険者パーティと共に、馬車でグービアに向かう。
「グービアにも兵営はあるの?」
「あるんじゃないかな?」
モナズは言った。
「その様子じゃ、あまり知らないようね」
「そうだな。あまり情報もないからな」
「わかった」
グービアは馬車で二日ほどの場所にあった。
私達はグービアの外で野営をし、
モナズ達は、グービアの街の冒険者ギルドで依頼を確認しに行く。
時間もあるので、仲間達に言って、魔物を少し狩ることにした。
魔物を捌き、血や内臓を与え、私は肉を焼いた。
半日ほどして、モナズ達が戻ってきた。
「おかえり、肉焼いてるから食べなよ」
「うわ肉だ。頂きます」
皆肉に食らいつく。
「それでどうだった?」
「依頼はあったが、街がボロボロだな。皆生気がない。物乞いも多かった」
「そうなんだ。じゃあ肉を食べてから、余った肉を持っていって」
「良いのか……、良いんだよな」
「うん。それと肉を振る舞って、なんでそんな状況になってるか、それとなく聞いてきてよ」
「わかった」
数十分ほど肉を食い、モナズ達は街に肉を運んでいった。
数時間後、モナズ達は戻ってきた。
なにか嬉しそうな顔をしている。
「どうしたの?」
「英雄だと言われた」
「あんなに感謝されたの初めてだ」
「冒険者やっててよかったって思った」
「そう。それでどうだった?なんであんな状況になってるの」
「それは私が話すわ」
ヒソが言った。
「若い男達が多量に兵士として徴収されたの。それで女子供と老人しかいない。それに盗賊が何度も襲ってきて」
「盗賊はどこにいるって?」
「わからない。どこからともなく、襲ってきて食料を奪う」
「命までは奪わないってこと」
「そう。お前らは家畜だと言われたそうよ」
「兵営は?」
「あるにはあるけど、機能してないそう」
「なんで?この地域の男達じゃないの?」
「薬かなにかで中毒にさせられているようなの」
「なんでそんな事に?」
「貴族が絡んでいるそうで」
「先に盗賊を始末していいかしら」
冒険者達はモナズを見る。
モナズが頷くと、皆も頷く。
「あぁ先に始末しよう。俺らも戦う」
「あなた達は戦わなくて良いわ。危ないし」
「しかし君らも……、そうか死なないのか」
「そうよ。私は死ぬけどね。皆はもう死なないわ」
屍達は力こぶをみせる仕草をする。
「ではどうする?」
「まず盗賊を見つける事ね」
「明日また街で肉を配り、盗賊の情報を集めて。それと冒険者ギルドでも、盗賊の情報を集めて、この金を使って」
私はお金を渡す。
「結構な額だけど良いのか?」
「盗賊団を襲えば、もっとお金が入るでしょ」
私は笑った。
屍達もつられて笑う。
「そうね。あなた達にも分け前は払うわ。そうね一割で良いかしら?」
「情報収集だけで一割。それ乗った!」
モナズ達の目の色が変わった。
三日ほどして、情報はかなり集まった。
近くの山に潜伏しているようだ。
私は仲間を引き連れ、山に向かう。
ほどなくして、盗賊達のアジトは見つかった。
仲間が、盗賊にむかい噛みつく。残りの仲間の屍も、盗賊に噛みつく。
そしてあっという間に、仲間達は、盗賊を全滅させた。
噛まれた盗賊はピクピクと動き、意識を失っているようだ。
しばらくすると、噛まれた盗賊は動き出し、
こちらに集って来る。
仲間の屍は前に立ちふさがる。
頭らしき男が膝をつき、こう言った。
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
同じ男が抵抗するように口を開く。
「何を言っている。私は下僕になんぞならない」
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
「やめろ」
頭らしき男は、短剣を取り出し、自らの喉元に突き立てる。
「やめろ」
男は短剣を必死で離そうとするが、力尽きる。
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
抵抗する声はもう聞こえなくなった。
盗賊は皆半分正気で、半分従属していた。
声では反抗しているが、身体は反抗できていない。
前と同じだ。
私はアジトにある武器類や食料、宝飾品等を集めさせた。
私達は、街の近くまで行った。
「盗賊は討伐した。まずは食料を配給するから、来てくれと言いなさい」
「良いのか?」




