改心
三十体の兵士は再び動き出した。
兵士達は仲間に再会し、抱き合っている。
「あの、あなた達。仲間に殺されたんでしょ」
兵士達の屍は頷いた。
「そのままで良いの?」
兵士達の屍は首を振る。
「復讐する?」
兵士達の屍は頷いた。
私達は兵士達の屍を先頭に、
スミレ区の兵営に向かう。
兵士の屍の一つが、兵士にむかい噛みつく。残りの兵士の屍も、兵士に噛みつく。
そしてあっという間に、兵士達の屍は、兵士を全滅させた。
噛まれた兵士はピクピクと動き、意識を失っているようだ。
しばらくすると、噛まれた兵士は動き出し、
こちらに集って来る。
仲間の屍は前に立ちふさがる。
指揮官らしき男が膝をつき、こう言った。
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
同じ男が抵抗するように口を開く。
「何を言っている。私は下僕になんぞならない」
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
「やめろ」
指揮官らしき男は、短剣を取り出し、自らの喉元に突き立てる。
「やめろ」
男は短剣を必死で放そうとするが、力尽きる。
「私はあなたの下僕。なんなりとお命じください」
抵抗する声はもう聞こえなくなった。
私は、兵営の新しい兵士を集めた。皆半分正気で、半分従属していた。
どうも声では反抗しているが、身体は反抗できていないようだ。
私は兵営にある武器類を集めさせ、仲間に装備させた。
なんとなく軍としての、格好は整った。
「兵営にある食料を貧民街や近隣の村々に配りなさい。理由は言わなくても良い。とにかく配って回りなさい」
私は新しい兵士達に命じた。
皆、馬車を使い、方々に走っていった。
二日ほどし、兵営の食料はすっかりなくなった。当然何人か分の食料は確保した。私も腹が減る。
始めのうちは新しい兵士達は、話していたが、しばらくすると話さなくなった。
また私の周りは静かになった。
近くの村の村長が、兵営を訪ねてきた。
「なぜ我らに施しを?」
「気まぐれよ。それより、ここらへんで魔物が多数いるところを教えなさい」
「案内します」
「馬車を何台か手配しなさい」
私達は仲間や兵士を引き連れ、ついていく。
「あそこです。あの森に魔物の巣があります」
「じゃあ兵士達、行きなさい。周辺の魔物を倒して、こっちに死骸を運びなさい。良い?皆で食べるから、狩りすぎてはダメよ」
兵士達は頷き、魔物に近づいていく。
魔物を囲み倒す。そして運ぶ。
ただそれを繰り返す。
「魔物を吊り下げ、血抜きし、捌きなさい。血は後で飲むから取っておくのよ」
「ほら、そこ、先に血を飲まないの。あとで皆で一緒に食べるんだから」
皆黙々と作業を行う。
「あの、あなた様は、もしや聖女様で?」
「知ってるの?」
「やはりそうでしたか。私の村はあなたに救われた。ずいぶん雰囲気がお変わりになって」
「そう。色々あったから」
「お話はお聞きしております。私達は王城に抗議しに行こうと思ったくらいです」
「よかった。抗議しに行ってないのね」
「申し訳ございません」
「いいの。あなた達が行ってたら、きっと殺されていたわ」
「やはり」
「それでこの方達は?ずいぶん風体が……」
「屍よ。私の仲間だった人達と、新しく仲間に入った者。それと兵士ね」
「兵士?あの兵士達が改心したと?」
「どうなんでしょうね。あれよ。戦ってるのが兵士達」
「まともですね。いや、あれが普通なのか」
「そうでしょうね。前は怠け者過ぎたからね」
「食料もあなたが?」
「えぇ、そうよ。兵営にあった食料はほぼ全部。一部は私がもらったわ」
「よろしいので?」
「えぇ、この子たちは食わないもの。あぁそうだ。ここの魔物の肉もあなた達にあげるわ。内臓と血。そして私が食べる分の肉は貰うけど」
「こんなに多量に?」
「えぇ。ここら辺の村々に配れば、消化できるでしょう」
「だから馬車を」
「そう。魔物の肉は食べない?美味しいわよ」
「いや。なんというか、魔物は恐ろしいものでしたから、それを食うという感覚が」
「慣れるわよ」
「そうですね。つまり定期的に狩って、我々にくださると」
「そうね。私もしばらくはここに滞在する。その後は、この兵士達に任せるわ」
「じゃあ、我々は肉の回収に伺えば」
「そうね。いらなければいいけど、美味しいわよ」
「それはもちろん頂きます。贅沢品ですから」
それから、しばらく私達は、村長の村に滞在し、魔物を狩り、周りの村々に配り続けた。
モナズ達がやってきた。
「ここにいたか」
「そうよね。移動するの言ってなかったわね」
「大丈夫。この屍に案内してもらったから」
屍は照れくさそうにしている。
「あなたね。ありがとう」
屍は戻っていった。
もう誰が誰だかわからない。
「それで約束の品だ」
多量の服が置かれる。
「ありがとう。大変だったでしょ」
「いや、良いんだ。それより、かなりの討伐をしたんじゃないか?」
「そんなでもないわ。ここら辺の村々で食べられる分くらいだもの」
「そうか」
「スズ!この服、皆に配って」
スズは荷物を運び、仲間を呼ぶ。
服を渡すと、いきなり着替え出す。
「ちょっと待って。屍だからといって、多少隠れるかなにかしなさい」
皆隅に行き、着替え出す。
まぁ隠れてはないが……。
「それで」
「討伐よね。でも肉も多量になるんじゃない?」
「大型だからな」
「街に運んで振る舞える」
「それはできるが、金をとらなくていいのか?」
「金をとると、さばけないわよ」
「そうだな。でももったいなくないか?」
「大丈夫よ。ただで肉を配る冒険者なんていないでしょ」
「あぁ」
「でしょ。英雄じゃない?」
「そうか。モテるかな」
「しらないわよ」
「そうだな。じゃあ、前のように血と内臓と多少の肉はあんたら、残りは俺ら。討伐報酬は半々で良いか?」
「えぇ」
それから、しばらく村に滞在し、私達はモナズ達の依頼を受け続け、
この付近の大型種は全て食べつくした。
「今日の討伐で、ここらの大型種は全部狩りつくした」
モナズは言った。




