第8話 Lime Beauty開店!、マグティア過去編
「開店しました〜!! Lime Beauty!!」
黄緑色の花吹雪がひらひらと舞う。
「ここがライムのカフェか」
「おじゃまするよ〜」
入口の横には、私が送ったフラスタが。うん、ちゃんと美しい。
他にも店を開いてくれている国民はいるが、フラスタはできるだけ送るようにしている。私の国を栄えさせてくれてありがとう、という気持ちである。
スライムとライム、そしてゴシック服を合わせたコンセプトカフェ。
「いらっしゃいませ! 二人とも、来てくれてありがとう! どうぞ座って!」
「黒のロココ調の家具で揃えられているな」
「座り心地もいいね〜!」
「メニューは……」
・ライムパフェ
・ライムティー
・ライムアフタヌーンティー
・ライムクレープ
メインはそんな感じか。他にも軽食とか、コーヒーとか、ジュースとか。
「折角だし、アフタヌーンティーを頼むか!」
「いいねぇ〜!」
ということで、来たのだが……
ドン! ドドン!! ドドドン!!!
どんどんプレートが増えていく。
「……多くないか?」
「こーれは……カスライムくんサイズだねぇ笑笑」
セイボリーが3皿、スコーンが一人10個、スイーツは5皿。
ライムを使ったケーキに、マカロン、サンドイッチ、ライムジャムとか。
写真映えはしたが……。ついでにいうと、べリッター(呟く用のアプリ)でいいねが沢山ついたが……。
食べ進めると……
「うっ……」
すっかり胃もたれしたのだった。
「結構量多いねぇ〜」
「まだ食べれるか?」
「うーん、飽きちゃった!」
「そうか……」
料理の前に撃沈している私達がいた。
「カスライムくーん! これ食べていいよー!」
「ほんと〜!! 食べる食べる!」
「店長〜!?」
店長がそんなことしていいのか分からないが、まぁ店長だしいいのだろう。
お皿の上はあっという間に空になった。
「ライム、これは普通の人には多すぎると思う」
「えっ!! あれくらい食べないとオヤツにならなくない!?」
「あれオヤツの量なのか!? 量は選べるようにした方がいいかもしれないな」
「わかった! ありがとう! また来てね!」
「あぁ、また来る。お仕事、頑張れよ」
Lime Beautyは繁盛した。
〜〜〜
その日は、マグティアと一緒に過ごそうという話になっていた。
「私の過去は、マグティアは知ってるんだろ。じゃあ、マグティアの過去も教えてくれないか?」
「え゙っ! ボクの過去?」
困った顔で、頬をかく。ちょっと笑って。
「うーん、まぁいっか! じゃあ、『マグティアの過去編』開始!」
いつのまにか私は映画館の中にいた。凄いな、創像ってこんなことも出来るのか。
『マグティアの過去編』
「はい、ロイヤルストレートフラッシュ!」
「はーっ、またマグティアが勝った!!」
ボクは、よく遊んでる生徒だった。当時はまだ神前っていう立場。
「じゃ、テキーラ奢ってね!」
「くそーッ、やっぱ強ぇなぁ!」
カジノで買ったら、お金を貰うか、お酒を奢らせるか。
ボクはお酒強いから、毎日楽しく飲んでた。
「くひひ……なぁマグティア、センコーの試験問題奪ってきたぜ」
「ブランケット!! さっすが〜♡ ね、今夜もカジノ行こ〜!」
「アァ」
こいつは、ボクの親友、ブランケット。なんでも包み隠す能力を持ってる。
カジノにて。
(このカードが欲しいな……)
ブランケットがいるあたりをチラリと見る。
ブランケットは固有スキル秘匿包界で、自分の存在を隠している。
カサ……
カードが動いた。
(ナイス〜♪)
欲しいカードを手に入れて、ボクは圧勝。
「はい、勝ったお金は山分けね♡」
「あんがと」
パチン!
ハイタッチ。ボク達は、唯一無二の親友だった。……親友だったんだ。
ブランケットには、おじいちゃんがいた。
2人は仲がよくて、夏休みとかには、2人が一緒にスイカを食べてる写真が送られてくるんだ。
その時のブランケットは、珍しいくらい笑顔で。ボクも嬉しかった。
ある日、言われた。桜が降っている日だった。
「おじいちゃんが、超越神になった」
「っ……それは」
超越神は、超自然的な存在。その意思は風となり雨となり、自然を動かす。そして、自我はほとんど残っていない。
神を食べて、最後は動物に食べられる。そういう食物連鎖に組み込まれた存在。
それは、神の寿命だ。
「……おじい、ちゃんが……ひっく」
「……」
ボクは何を言ったらいいのか分からなくて、ただ背中を撫でていた。
「ボク達も、いつかはそうなるんだよね……」
「っ、今そんな話しなくたっていいだろ!!!」
「っ、え、ごめんブランケット!!?」
「もういい! お前とはもう話さない!!」
「っ、そんな」
ボクからしてみれば、些細なすれ違いだった。でも、おじいちゃんを失ったブランケットには、致命傷だったんだ。
それから、アイツと会うことはなくなった。秘匿包界で隠れられたら、ボクには見つけられない。
それで、ボクらの縁は切れた。
しばらく、放心していた。
桜を見ていると、今でも思い出す。あぁ、あんなこと言わなきゃ良かったな。アイツと悪いことすんの、楽しかったな、って。
そして、こう思う。今度こそ、失いたくない、って。
そんな出来事があってから、ボクは前より遊ばなくなった。
……まぁ、それでもモテたんだけどね。
「マグティア様〜♡♡ かっこいい〜♡♡」
ファンクラブもあったね。その中でも特に絡んできたのが、マミリィって女生徒。
ヒーラーで、学年で一番回復力が高かった。死人すら生き返らせるんだ。
「むぅ! マグティアさま! 私と付き合ってくださいよぉ」
「ごめぇん、好みじゃない笑」
ボクは本当にモテた! でも、彼女は作らなかった。なぜって、好みじゃないから。
遊びで作るのもゼッタイ無理。そういうのヤダ。
ボクの好みは、勤勉で、真面目で、強気なのに可愛くて、ボクの創像を受け継げるような人間。
「人間? 人間なんてやめとけよ〜!!」
「うーん、いや、ボクは神嗣と付き合いたいの〜」
「神嗣と? まぁそりゃ良いと思うけどさ……」
神嗣っていうのは、上位神が一人だけ人を選んで下位神にして、自分と同じ能力を受け継がせる存在のこと。ボクにとってのベリアだね。
まぁでも、そんな人間現れることはないだろうなと思ってた。
占いの神前、ラナウが言ったんだ。今でも友達なんだけど。コイツがベリアの元へ導いてくれたんだ。
「運命の人間が現れるでしょう」
その時のワクワクした気持ちは、今でも色褪せない。
ずっと、運命なんてないと思ってたし。ないんだったら、恋人なんていらないと思っていたけど。
いつ会えるのだろう、運命の人。と思っていた。
だからボクは、キミに会えて嬉しくて。だから──────────。
ボクは、いつか現れる運命の人に焦がれながら、日々を過ごしたよ。
「同じ家に住めたら嬉しいな〜♪ あと、一緒にナイトプールに行ったりして……沢山旅行したい!」
そんな事を考えながら。
神養成学校を卒業して、ボクは初めて神位継承戦に参戦した。
初戦はコイツだった。
「いつまでも運命とか信じてるガキンチョみたいな趣味してさぁ、恥ずかしくないのか? このオレ様がその根性叩きなし」
その言葉は、最後まで続かなかった。
バギィッ!!!
天圧執行でトマトみたいに潰す。骨格すら残さない。
「え、なに? 存在が矮小すぎて聞こえなかった笑笑 ボク、ザコの声って聞こえないんだよね」
自分を最強だと思い込むボクの性格と、創像の相性は最高だった。相手を倒せるイメージがなければ、効果が表れないからね。
ヒューヒュー!!
神位継承戦では、選手を殺しても罰はない。基本的に殺す前に中断されるけど、たまに即殺される。そこのザコみたいに。死んでもどうせ、ヒーラーが生き返らせるから。
ボクは神位継承戦では基本的に圧勝。格闘技も得意だから。
相手のスキルを封じる固有スキル持ちと戦った事があるけど、ボクは素手でボコボコにした。
「ははっ、はは! 弱いねぇ!!」
「ゴッ、バッ……」
ボクは体もデカいからね。魔神は特に身長が伸びる。
「あ、圧勝ーーー!! マグティア選手、強い!!」
「きゃー!! マグティア様ー!!!」
「ははは、よゆー笑」
ピースする。
そんな感じで神位継承戦で勝ち上がりまくって、1234歳の今では上位神ってわけ。
〜End〜
「おぉ〜」
パチパチ、パチパチ。私の拍手が鳴る。
「はい、マグティア」
挙手する。
「はい、そこのベリア!」
「兄弟は?」
「あぁ、兄がいるよ〜。女性に関するアレコレは兄さんから聞いたかな!」
「なるほど、末っ子?」
「や、弟もいるよ〜」
「なるほど」
私は立ち上がった。
「ありがとう、面白かった」
「こんなんでよかった?笑」
「とてもよかった」
「それで、だからさ───────」
ポンッ
バラの花束?
「──────ボクと付き合ってくれない? ベリア!」
「!!!」
マグティアは頬を染めて、頬に少し汗をかいていた。
そう、コイツは緊張すると頬に汗をかくのだ。それがかわいい。
胸がきゅんきゅんするのを覚える。
「ふふ、ふふ」
ぎゅ。
私はマグティアを抱きしめた。
「あぁ、付き合おう」
これほど優しい声は、出したことがない。
「ホント! っ、やった〜〜〜っ!!!」
「わっ」
私を抱き上げて、三回転もふわりと回る。
「きゃあ!」
「ははは! こんな良い日はないよ!! ボクってば幸せ者!!」
「はは、ははは! 私も、幸せだ」
「ホント? ボクで良かった?」
「あぁ」
私はマグティアの鼻をつんとつつく。
「飄々としてて、たまに悪いことしてて、カッコイイお前がいい」
「っ、はは! ホント。ボクってそういう風に見えてるんだ」
「違うか?」
「いや、面白いなって!」
「お前こそ、私のこと、真面目で、勤勉で、強気なのにかわいい、とか言ってただろ」
「でも、自分でもそう思うでしょ?」
「……まぁな」
そうして、私とマグティアは正式にお付き合いを始めた。
マグティアがゲームしてる膝に頭を預けて、書類を読んだりもした。
「ねぇベリア、ちゃんと休憩してる?」
「している。こうしているだろう」
「これ休憩っていうのかなぁ笑」
ゲームで負けたマグティアが、ベリアの髪の毛をいじる。
「……ゲームも強いものだと思ったが」
「たまたま、たまたまだよ! ベリアのこと見てたら負けちゃった笑」
「……まったく」
惚気もいいところだと思った。
私達は、幸せカップルになった。
〜〜〜
「王座評議会は明日か……」
マニャータによると、九つの王が参加すると聞いている。中には天使や悪魔もいるとか。
「あいつらな……。特に強欲族のマモン。我は苦手だ」
「ふむ……怖いな」
私も王だが、相手だって国王だ。緊張する。
「今回の議題は、ベリアールを国として認めるか否か。お主のアピールタイムだ、頑張るのだな」
「ふっふっふ……安心しろ。今回、私にはスマホとポン蔵と、ミーナの作る服がある。これらをアピールすれば、国だと認めてもらえるだろう?」
「それは強力な一手だな。まぁ、お主ならできると思っておるよ」
「ありがとう」
頭をぽん、と撫でられる。
「ふふ、恥ずかしいぞ」
「娘のようだからな」
温かい空気が流れる。
家に帰って、私は眠りについた。
その日は、酷い悪夢を見た。
ベリアールが滅び、マグティアもライムも死んでしまう夢。
「はっ……」
深夜、私は跳ねるように起きた。
落ち着きたくて、カモミールティーを淹れる。
王座評議会で、もし戦うことになったら。
私は人を傷つけるのが苦手だ。なら、攻撃する時は精神系が良い気がする。
「……悪夢」
相手にとって最悪の悪夢を見せる攻撃。何が最悪かは、その人の心が知っている。それを利用する。
「……緊張しているのだろう」
安眠の魔法を自分にかけて、眠りについた。
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