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魔神ベリアの魔界幸福化計画(第1章完結)  作者: 砂之寒天
第1章 魔界編

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第7話 初めての戦争

「もっと腰を落として!」

「はい!」

「すばやく剣を突き刺す!!」

「はい!!」


 私は絶賛、訓練中だった。


 魔法だけが使えても、近接戦に不安が残るのは怖い。だから、剣の訓練をしているのだ。


 蛇族の騎士団長、サヌサさんに特訓してもらっている。


創像(イメージクリエイト)を使って、もっと軽やかに飛びながら!」

「はい!」


 人間だったら難しいような動きも、創像(イメージクリエイト)があれば可能。


「そうだね……。戦闘訓練の為にも、動物を狩りにいきましょうか!」

「イエッサ!」


 私達二人は、中央の森へ向かった。


「あそこにクマがいるね。ほら、突進してきた」

「はやいはやいはやい」


 私は急いで剣を抜く。


 軽やかにジャンプして突進を避け、猛スピードで接近して、首をとる。


 私の剣は私によって特殊な加工が施されており、切れ味が良い。スパッと首が切れた。


「ふぅ、今夜は熊鍋だな」

「素晴らしい! よくできました。決めゼリフもばっちり!」

「や、やめてください……」


 照れくさいだろ!


 血抜きをした後、創像(イメージクリエイト)でクマを軽くして、料理部へ持ち込む。


「クマってどうやって食べるんですか? サヌサ先生」

「薄くスライスして、茹でてアク抜きしてから食べるのよ。脂が甘くて美味しいの。蛇族は肉も好きだから、よく食べるわ」


 というわけで、お昼ご飯は熊鍋。


「美味しい……!」

「美味しい〜!! ぼく、パクパク食べちゃうかも」

「ライムは意外と健啖家だよな」

「うん! あ、かわいくない、かな……?」

「そんなことはない。それも可愛げだ」

「わっ……!」


 頭を撫でると、キラキラした目で見つめてくる。そうだ、子供が食べるのを我慢しなくていい。スライムでは大人らしいが。


「うわ〜、クマってボク初めて食べた。美味しいね〜」

「マグティアは普段何を食べていたんだ?」

「え? ()()()と同じもの、天使に用意させてた!」

「……は?」


 人間の頃の私と、同じもの??


 ドン引きである。家族かよ。いや、家族だけど。


「あっ! 口が滑った! ごめんごめん〜笑」

「まて。マグティアはいつから私のことを知っていたんだ」

「え、お母さんのお腹の中の頃から笑」

「嘘だろ……」


 そんな前からだったのか。


「いやー、色々あって、ベリアを貰うことにしてね。大丈夫、両親も了承済み! たまには顔だしてあげてね〜」

「嘘だろ……」


 本日二度目。


「というか、人間界に戻ってもいいのか!?」

「ん? まぁ、こっそりならね!」

「このクマ肉、お父様とお母様に渡してきてもいいか? マグティア、一緒に来てくれ」

「ぶっ」


(え、魔神になって初のお土産がクマ?? ぶっ飛んでるな〜笑笑)


「何笑っている? 善は急げだ、早く行くぞ!」

「はいはい、カスライムくんも行く?」

「行く! 両親にご挨拶!!」

「意味が違うと思うが……」

「え……」

「え?」


 ライムがびっくりした顔でこちらを見ている。


「ねぇ、ぼく達って、付き合ってるよね……?」

「っ……!!」


 きゅるきゅる……きゅるきゅる……


 そんな、そんなキュルキュルの目で見られたら……!


(断るなんて無理だろう!!!!)


 私はあっさり負けた。


「そ、そういうのはちゃんと告白してからだ!!」

「あ! そうだよね〜! 分かった!!」

「あれ!? ちょっと、ボクの時と答えが違わない!?」

「いい。腹を括った!」


 私は振り返った。


「いつでも待ってるから!」


 微笑んだ。


「っ……はは、イイ女」

「わ! かわいい、ベリア様!」


 マグティアは頬に汗が伝うのを感じた。


 人間界、坂本家に来た。


「お父様、お母様! ただいま!」

「おぉ、みくり〜!! おかえり!」

「どうしたの〜、って、みくりちゃん! おかえり! マグティアさんも! そっちの子は?」

「スライムのライムです!」

「こんにちは〜笑」


 リビングに通されて、座る。


「まず、言わせてくれ。私は、魔神になることを了承してるのは知らなかったんだが!?」

「あら〜笑 なんか、楽しいことしながら偉い人になるって言われたから、了承しちゃったのよ〜」

「危機感!!」

「パパはみくりの自由は妨げないからな!」

「自由!?! 誘拐だろ!!」


「相変わらずだね〜、みくりのパパとママは笑」

「あら、変わらず美しいって? ありがとう♡」

「そうそう!」


「あの、あの! ぼく、ライムって言います!」

「ライムくん。娘は元気にしてる?」

「してます! 夜とか!」

「ぶっ」


 スパァン!!


「いてっ!」


 頭を叩いた。冗談も程々にしろ。


「あらあら! 娘のことよろしく頼むわねぇ。マグティアさんも」

「お任せあれ〜」

「はい! 任せてください!」

「おい、私の知らないうちに話を進めるな!?」


「でも、そういうことなんでしょう?」

「そういうことなんだよな?」

「そういうことです!」

「そうだよ〜」

「お前らっ……もう!」

「照れちゃって〜」

「頭を撫でるな!」


「ん゙ん。そうだ、クマを狩ってきたんだ。おすそ分けしに来た」

「クマを? あらあら、強くなったのね! 異世界だものね、そうよね……やっぱり最強なの?」


 厨二病ポーズをするお母様。私はそんなことはしていない。


「いや、まだまだだ。戦闘経験が足りなすぎて、強いのか弱いのかも分からない」

創像(イメージクリエイト)はとにかくイメージと思い込みが大事だから〜、もっと戦闘経験積むのが大事だよね!」

「へぇ、創像(イメージクリエイト)! イメージからクリエイトするの? ねぇねぇ、何か作ってみてちょうだいよ」

「じゃあ……ティーカップとか」


 私は即席でティーカップを作ってみた。


 ポンッ


「あら、素敵! パパ、これ素敵ね!」

「あぁ! よく出来ているね!」

「お気に入りになっちゃうわ〜♡」


「娘が大成して、お母さん誇らしいわ」

「パパも嬉しいぞ!」

「うんうん! これからも頑張らせるからね〜」

「マグティアも手伝うんだぞ?」

「あ、うん!」

「ぼくも手伝うよ〜!」


「まぁ、そんな感じだから……。また顔を出す。お父様、お母様も元気でな」

「またねぇ〜」

「失礼します!」


「またいつでも来るのよ〜」


 私達はベリアールに戻った。


「半月後は、リザードマンに進軍だっけ?」

「そうだ。私も参加する」

「ふーん、本格的な侵略なんだ」

「あぁ。……初めて、人を傷つけるかもしれん」


 私は俯く。


「私が人を傷つけても、お前達は私を好きでいてくれるか?」


 不安げな顔。


 ぎゅっ。


 抱きしめられる。


「……!」

「大丈夫、大丈夫。ボク達はベリアのこと大好きだよ」

「そうだよ、ぼくもベリアのこと大好き!」

「お前達……」


 胸にじんわりと温もりが広がる。


「それに、ボクとか、人殺しどころか神殺しだし笑」

「お前は何をしたんだ……。だが、それなら良かった。安心して戦争に参加できる」

「ぼくはスライムだから、ベリア様が人を殺しても、良いと思う!」

「そうか」


 それはそれでどうなんだという感じだが、とにかく信頼は損なわないらしい。


 半月後、私達はリザードマンの集落に進軍した。


「お前達、訓練通りにやるんだぞ。大丈夫、医療班に作らせた全快の薬を一人一つ持たせる。致命傷を受けたら直ぐに飲んで、後ろに下がるんだ」

「はいっ!!」

「では、武運を祈る!」


 スライムとゴブリンを激励して、私達は出陣した。


 私個人の戦い方は、かなりズルい。いや、戦いだからいいのだが。


 リザードマンが手を出せない上空に飛び、そこから天圧執行(ヘブンズ・プレス)で押し潰していくのだ。命を取るのは怖いので、足の骨を折ったりする。


 蛇族がラッパを鳴らした。


「開戦だ!!」


 私は空を飛んだ。


 高い空は気持ちいい。上から見下ろすのも、嫌いじゃない。


 私が渡したスキル、火、水、土、雷を使ってスライム達はリザードマンを圧倒する。


「ふぁいやー!!」

「ぐぁぁー!!!」


 ゴブリンも頑張って戦っている。訓練の成果は出せているらしい。


「痛いー!!」

「っ、あ、ゴブリンが負傷している……!」


 槍を腕に受け、倒れ込んだゴブリンが慌てて全快の薬を飲む。傷口がみるみる塞がる。


「そこのゴブリン! 命令だ! 後衛に戻れ!」

「はいっ!」


 走って後衛へ向かった。良かった……。


(うん、中々順調に進んでいるな。さて、私も攻撃するか)


「……天圧執行(ヘブンズ・プレス)!」


 一匹のリザードマンの足の骨を折った。


 ギャー!!


 リザードマンの悲鳴が聞こえた。


 咄嗟に耳を塞ぐ。正直、怖かった。


 そこに、マグティアがやってくる。


「ベリア〜、どう、順調〜?」

「マグティア……。あそこにいるリザードマンの骨を折った」

「それだけ!? スライム達の方が頑張ってるんじゃない!?」

「だって、人なんか殺せない……!」

「ふーん……」


(無理やり殺させるのも可哀想、か……。だって元人間だしねぇ)


「そう、ベリアはさ。ボクがあそこのリザードマン、半分の足の骨を折ったらどう思う?」

「……凄いと思う」

「そう。じゃあ、お手本見せてあげるよ」


 マグティアは二本指を突き出す。


 そしてそれをパシッと閉じた。


天圧執行(ヘブンズ・プレス)


 バギィッ!!


 沢山の骨が折れる音が聞こえた。


 ギャー!!!!


 叫び声が上がる。


(あれ、なんだろう……)


 自分がやらないで、快進撃を見ると。


(なんとなく、楽しい……!)


「ベリア、いい顔してるよ」

「っは! 私、どんな顔をしていた?」

「楽しいかも、って顔」


 マグティアが私の頬をつつく。そんなのも気にならないくらいに。


「……楽しいかも!」


 私は手のひらを空に突き出した。


 そして、思い切り振り下ろす。


天圧執行(ヘブンズ・プレス)!!」


 バン!!


 空から押しつぶされて、リザードマンが潰れる。死には至らないが、骨折は多くしているだろう。


「っはは、ははっ……! おい、マグティア! 私は初めて人を倒したぞ!!」


 私の紅潮した笑みを見て、マグティアは笑う。


「ははは!! そうそう、魔神なんだから戦いで快楽を得ないとね。いいじゃん、いいじゃん! その調子でやっちゃいな!」

「あぁ!」


天圧執行(ヘブンズ・プレス)!! 天圧執行(ヘブンズ・プレス)!!!」


 どんどん倒していく。私はバトルハイになっていた。


「降参じゃー!」


「お、リザードマンが降参するらしいぞ!」

「そりゃ、こんだけコテンパンにやられたらね。こっち側の死者はいないみたいだね、良かったじゃん! 快勝だよ」

「はは、はは……!」


 パチン!


 ハイタッチした。


「やったな、マグティア!」

「やったじゃん、ベリア!」


 快勝を収めたのだった。


 その後、マニャータと会議を開いた。


「リザードマンの持つ領地の半分を我々蛇族のものにし、もう半分はベリアールに渡そう。植民地だな。それから、

賠償金も頂いた」

「あぁ! 今回は、戦闘の経験を積ませてくれてありがとう、マニャータ。恥ずかしながら、初めてバトルハイというものを味わった」

「ははは、そうか。まぁ、魔神ならそうなるよな」

「マグティアも言っていたが、魔神はそんな戦闘集団なのか?」

「まぁ、魔神は戦闘に強いイメージはあるな。血湧き肉躍る、という言葉は魔神が作ったとか」

「そうか!」


 人間の頃の私なら、考えられないほど人を倒した。そして、戦闘を楽しんだ。


 リザードマンの領地には、大きな湖と鉱山がある。これで天然の魚が食べられるようになるだろう。


 リザードマン進軍は、それで終わった。

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