第7話 初めての戦争
「もっと腰を落として!」
「はい!」
「すばやく剣を突き刺す!!」
「はい!!」
私は絶賛、訓練中だった。
魔法だけが使えても、近接戦に不安が残るのは怖い。だから、剣の訓練をしているのだ。
蛇族の騎士団長、サヌサさんに特訓してもらっている。
「創像を使って、もっと軽やかに飛びながら!」
「はい!」
人間だったら難しいような動きも、創像があれば可能。
「そうだね……。戦闘訓練の為にも、動物を狩りにいきましょうか!」
「イエッサ!」
私達二人は、中央の森へ向かった。
「あそこにクマがいるね。ほら、突進してきた」
「はやいはやいはやい」
私は急いで剣を抜く。
軽やかにジャンプして突進を避け、猛スピードで接近して、首をとる。
私の剣は私によって特殊な加工が施されており、切れ味が良い。スパッと首が切れた。
「ふぅ、今夜は熊鍋だな」
「素晴らしい! よくできました。決めゼリフもばっちり!」
「や、やめてください……」
照れくさいだろ!
血抜きをした後、創像でクマを軽くして、料理部へ持ち込む。
「クマってどうやって食べるんですか? サヌサ先生」
「薄くスライスして、茹でてアク抜きしてから食べるのよ。脂が甘くて美味しいの。蛇族は肉も好きだから、よく食べるわ」
というわけで、お昼ご飯は熊鍋。
「美味しい……!」
「美味しい〜!! ぼく、パクパク食べちゃうかも」
「ライムは意外と健啖家だよな」
「うん! あ、かわいくない、かな……?」
「そんなことはない。それも可愛げだ」
「わっ……!」
頭を撫でると、キラキラした目で見つめてくる。そうだ、子供が食べるのを我慢しなくていい。スライムでは大人らしいが。
「うわ〜、クマってボク初めて食べた。美味しいね〜」
「マグティアは普段何を食べていたんだ?」
「え? みくりと同じもの、天使に用意させてた!」
「……は?」
人間の頃の私と、同じもの??
ドン引きである。家族かよ。いや、家族だけど。
「あっ! 口が滑った! ごめんごめん〜笑」
「まて。マグティアはいつから私のことを知っていたんだ」
「え、お母さんのお腹の中の頃から笑」
「嘘だろ……」
そんな前からだったのか。
「いやー、色々あって、ベリアを貰うことにしてね。大丈夫、両親も了承済み! たまには顔だしてあげてね〜」
「嘘だろ……」
本日二度目。
「というか、人間界に戻ってもいいのか!?」
「ん? まぁ、こっそりならね!」
「このクマ肉、お父様とお母様に渡してきてもいいか? マグティア、一緒に来てくれ」
「ぶっ」
(え、魔神になって初のお土産がクマ?? ぶっ飛んでるな〜笑笑)
「何笑っている? 善は急げだ、早く行くぞ!」
「はいはい、カスライムくんも行く?」
「行く! 両親にご挨拶!!」
「意味が違うと思うが……」
「え……」
「え?」
ライムがびっくりした顔でこちらを見ている。
「ねぇ、ぼく達って、付き合ってるよね……?」
「っ……!!」
きゅるきゅる……きゅるきゅる……
そんな、そんなキュルキュルの目で見られたら……!
(断るなんて無理だろう!!!!)
私はあっさり負けた。
「そ、そういうのはちゃんと告白してからだ!!」
「あ! そうだよね〜! 分かった!!」
「あれ!? ちょっと、ボクの時と答えが違わない!?」
「いい。腹を括った!」
私は振り返った。
「いつでも待ってるから!」
微笑んだ。
「っ……はは、イイ女」
「わ! かわいい、ベリア様!」
マグティアは頬に汗が伝うのを感じた。
人間界、坂本家に来た。
「お父様、お母様! ただいま!」
「おぉ、みくり〜!! おかえり!」
「どうしたの〜、って、みくりちゃん! おかえり! マグティアさんも! そっちの子は?」
「スライムのライムです!」
「こんにちは〜笑」
リビングに通されて、座る。
「まず、言わせてくれ。私は、魔神になることを了承してるのは知らなかったんだが!?」
「あら〜笑 なんか、楽しいことしながら偉い人になるって言われたから、了承しちゃったのよ〜」
「危機感!!」
「パパはみくりの自由は妨げないからな!」
「自由!?! 誘拐だろ!!」
「相変わらずだね〜、みくりのパパとママは笑」
「あら、変わらず美しいって? ありがとう♡」
「そうそう!」
「あの、あの! ぼく、ライムって言います!」
「ライムくん。娘は元気にしてる?」
「してます! 夜とか!」
「ぶっ」
スパァン!!
「いてっ!」
頭を叩いた。冗談も程々にしろ。
「あらあら! 娘のことよろしく頼むわねぇ。マグティアさんも」
「お任せあれ〜」
「はい! 任せてください!」
「おい、私の知らないうちに話を進めるな!?」
「でも、そういうことなんでしょう?」
「そういうことなんだよな?」
「そういうことです!」
「そうだよ〜」
「お前らっ……もう!」
「照れちゃって〜」
「頭を撫でるな!」
「ん゙ん。そうだ、クマを狩ってきたんだ。おすそ分けしに来た」
「クマを? あらあら、強くなったのね! 異世界だものね、そうよね……やっぱり最強なの?」
厨二病ポーズをするお母様。私はそんなことはしていない。
「いや、まだまだだ。戦闘経験が足りなすぎて、強いのか弱いのかも分からない」
「創像はとにかくイメージと思い込みが大事だから〜、もっと戦闘経験積むのが大事だよね!」
「へぇ、創像! イメージからクリエイトするの? ねぇねぇ、何か作ってみてちょうだいよ」
「じゃあ……ティーカップとか」
私は即席でティーカップを作ってみた。
ポンッ
「あら、素敵! パパ、これ素敵ね!」
「あぁ! よく出来ているね!」
「お気に入りになっちゃうわ〜♡」
「娘が大成して、お母さん誇らしいわ」
「パパも嬉しいぞ!」
「うんうん! これからも頑張らせるからね〜」
「マグティアも手伝うんだぞ?」
「あ、うん!」
「ぼくも手伝うよ〜!」
「まぁ、そんな感じだから……。また顔を出す。お父様、お母様も元気でな」
「またねぇ〜」
「失礼します!」
「またいつでも来るのよ〜」
私達はベリアールに戻った。
「半月後は、リザードマンに進軍だっけ?」
「そうだ。私も参加する」
「ふーん、本格的な侵略なんだ」
「あぁ。……初めて、人を傷つけるかもしれん」
私は俯く。
「私が人を傷つけても、お前達は私を好きでいてくれるか?」
不安げな顔。
ぎゅっ。
抱きしめられる。
「……!」
「大丈夫、大丈夫。ボク達はベリアのこと大好きだよ」
「そうだよ、ぼくもベリアのこと大好き!」
「お前達……」
胸にじんわりと温もりが広がる。
「それに、ボクとか、人殺しどころか神殺しだし笑」
「お前は何をしたんだ……。だが、それなら良かった。安心して戦争に参加できる」
「ぼくはスライムだから、ベリア様が人を殺しても、良いと思う!」
「そうか」
それはそれでどうなんだという感じだが、とにかく信頼は損なわないらしい。
半月後、私達はリザードマンの集落に進軍した。
「お前達、訓練通りにやるんだぞ。大丈夫、医療班に作らせた全快の薬を一人一つ持たせる。致命傷を受けたら直ぐに飲んで、後ろに下がるんだ」
「はいっ!!」
「では、武運を祈る!」
スライムとゴブリンを激励して、私達は出陣した。
私個人の戦い方は、かなりズルい。いや、戦いだからいいのだが。
リザードマンが手を出せない上空に飛び、そこから天圧執行で押し潰していくのだ。命を取るのは怖いので、足の骨を折ったりする。
蛇族がラッパを鳴らした。
「開戦だ!!」
私は空を飛んだ。
高い空は気持ちいい。上から見下ろすのも、嫌いじゃない。
私が渡したスキル、火、水、土、雷を使ってスライム達はリザードマンを圧倒する。
「ふぁいやー!!」
「ぐぁぁー!!!」
ゴブリンも頑張って戦っている。訓練の成果は出せているらしい。
「痛いー!!」
「っ、あ、ゴブリンが負傷している……!」
槍を腕に受け、倒れ込んだゴブリンが慌てて全快の薬を飲む。傷口がみるみる塞がる。
「そこのゴブリン! 命令だ! 後衛に戻れ!」
「はいっ!」
走って後衛へ向かった。良かった……。
(うん、中々順調に進んでいるな。さて、私も攻撃するか)
「……天圧執行!」
一匹のリザードマンの足の骨を折った。
ギャー!!
リザードマンの悲鳴が聞こえた。
咄嗟に耳を塞ぐ。正直、怖かった。
そこに、マグティアがやってくる。
「ベリア〜、どう、順調〜?」
「マグティア……。あそこにいるリザードマンの骨を折った」
「それだけ!? スライム達の方が頑張ってるんじゃない!?」
「だって、人なんか殺せない……!」
「ふーん……」
(無理やり殺させるのも可哀想、か……。だって元人間だしねぇ)
「そう、ベリアはさ。ボクがあそこのリザードマン、半分の足の骨を折ったらどう思う?」
「……凄いと思う」
「そう。じゃあ、お手本見せてあげるよ」
マグティアは二本指を突き出す。
そしてそれをパシッと閉じた。
「天圧執行」
バギィッ!!
沢山の骨が折れる音が聞こえた。
ギャー!!!!
叫び声が上がる。
(あれ、なんだろう……)
自分がやらないで、快進撃を見ると。
(なんとなく、楽しい……!)
「ベリア、いい顔してるよ」
「っは! 私、どんな顔をしていた?」
「楽しいかも、って顔」
マグティアが私の頬をつつく。そんなのも気にならないくらいに。
「……楽しいかも!」
私は手のひらを空に突き出した。
そして、思い切り振り下ろす。
「天圧執行!!」
バン!!
空から押しつぶされて、リザードマンが潰れる。死には至らないが、骨折は多くしているだろう。
「っはは、ははっ……! おい、マグティア! 私は初めて人を倒したぞ!!」
私の紅潮した笑みを見て、マグティアは笑う。
「ははは!! そうそう、魔神なんだから戦いで快楽を得ないとね。いいじゃん、いいじゃん! その調子でやっちゃいな!」
「あぁ!」
「天圧執行!! 天圧執行!!!」
どんどん倒していく。私はバトルハイになっていた。
「降参じゃー!」
「お、リザードマンが降参するらしいぞ!」
「そりゃ、こんだけコテンパンにやられたらね。こっち側の死者はいないみたいだね、良かったじゃん! 快勝だよ」
「はは、はは……!」
パチン!
ハイタッチした。
「やったな、マグティア!」
「やったじゃん、ベリア!」
快勝を収めたのだった。
その後、マニャータと会議を開いた。
「リザードマンの持つ領地の半分を我々蛇族のものにし、もう半分はベリアールに渡そう。植民地だな。それから、
賠償金も頂いた」
「あぁ! 今回は、戦闘の経験を積ませてくれてありがとう、マニャータ。恥ずかしながら、初めてバトルハイというものを味わった」
「ははは、そうか。まぁ、魔神ならそうなるよな」
「マグティアも言っていたが、魔神はそんな戦闘集団なのか?」
「まぁ、魔神は戦闘に強いイメージはあるな。血湧き肉躍る、という言葉は魔神が作ったとか」
「そうか!」
人間の頃の私なら、考えられないほど人を倒した。そして、戦闘を楽しんだ。
リザードマンの領地には、大きな湖と鉱山がある。これで天然の魚が食べられるようになるだろう。
リザードマン進軍は、それで終わった。
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