第6話 王御披露目会
ベリアールとシャーペンダーの交流が進み、街中にはシャーペンダー風の商品も並ぶようになった。
シャーペンダーの特産品といえば、夏のフルーツ、宝石、香辛料、服、毒と薬。
無事に毒を手に入れてほくほく顔のライムの頬をつつく。
「結局、お前が活躍する場を作れなくて悪かったな」
「大丈夫! 毒、手に入って嬉しいから!」
「そうか。それならいいんだが」
「そうそう。ねぇ、これにハンコくれない?」
「……なんだ?」
ライムはいつでも可愛いが、お願いされると、なんだかメロメロしてしまう……。
ライムの瞳がキラキラ輝いている。
……こいつ、魅了使ってるな??
頭に軽くチョップをいれる。
「私に魅了を使うな。メロメロしてしまうだろう」
「メロメロしちゃうの〜!? か、かわ……!」
二人して頬をピンクにしながら、私は書類に目を通した。バカップルか。
「ふむ、スライムのコンセプトカフェを作るのか」
「うん! お色気隊で経営するんだ! カフェ、『LimeBeauty』!」
「ほう。……許可しよう」
ポン!
魔法でハンコが押される。
「開店したら、一番に来てね!」
「あぁ、もちろんだ」
「じゃあ、ぼくお店の方手伝ってくる!」
「気をつけて行ってこい」
マグティアはゲームをしていた。そう、ゲームが開発されたのである。
「このお姫様かわい〜!! ベリアみたい」
「これは……私をモチーフにしているのか?」
深紅の長い髪。切れ長の瞳。画面の中の私は、綺麗な王冠を被っていた。
「ねぇ、ベリアも王冠作れば?」
「……たしかに」
王冠。子供の頃、憧れていたのを覚えている。どう○つの森で、よく被っていたものだ。
「お金も入ってきたし! シャーペンダーで宝石買ってみれば!」
「……そうだな。アリだ。そうと決まれば、シャーペンダーに行こう。ついてきてくれるな?」
「もちろ〜ん!」
立ち上がり、扉を越えてシャーペンダーへ。
「ここからここまで、ぜーんぶください!」
「おい待て、そんな大金持ってきたのか?」
「ん?」
何やら悪い顔をしている。何をしたんだコイツは。
「魔法で増やした!」
同じ番号の札を何枚も持っているマグティア。
コイツ、コイツ……ッ!!
「貨幣の偽造は犯罪だバカモノー!!!!」
華麗なキックが決まったのであった。
メラメラ……
「あ〜、せっかく作った札束、燃やさないでよ〜」
「燃やすに決まってるだろう。すまん店主、このレッドダイヤモンドと、ライムダイヤモンドと、ホワイトダイヤモンドをくれるか」
「かしこまりました」
「ねぇ、その色ってもしかしてさ……」
マグティアがニヤニヤしながらつついてくる。
「ふ。……私達3人の色だ」
「やっぱりー!! 可愛げあんじゃん、ベリア〜」
「別に。お前達は家族だからな」
「そういやそうだったねー笑」
「? 家族じゃなかったらなんなのだ」
「いや、ボクはてっきり……」
「てっきり?」
首を傾げる。
「恋人かと思ってたんだけどな〜」
恋人? 恋人、恋人───────、頭の中でエコーがかかる。
そして、やっと処理が追いついた。
「恋人ぉ!?!?」
「うるさっ笑」
私は口元に手を当てて、地面を見る。
(そういえば、そういうこと考えてなかった!! だってそういう関係もあるし、そうしたらやっぱり恋人なのか!? でも、私がマグティアとライムと恋人!? 自由恋愛すぎないか!?)
頭の中をぐるぐると言葉が回る。
ぼん、と頭が真っ赤になって、私はショートした。
「ありゃりゃ笑 真っ赤笑」
「わ、わからん……」
「まぁ、でもボクは急がないよ? 心の準備とかあると思うし? あ、ちゃんと告白して欲しいとかだったらボクもライムも言う準備はできてるし!」
「まてまてまて、そんな話まで??」
「? うん! だって、ボク達……ベリアのこと大好きだし!」
「は………」
改めて言われると、もう頭も胸もいっぱいいっぱいだった。
頬どころか、耳も熱い。
「ほ……保留……! 保留だ!!」
「うんうん、ゆっくり考えな〜」
そんな感じでベリアールに戻って、服飾部のミーナに頼んで王冠のデザインをしてもらった。
宝石の加工は武器部。
私がこういう仕事を任せると、他の仕事より優先してやってくれるので、完成するのが早い。ありがたいことだ。
そんな感じで、半月後に王冠ができた。同時に、王としての正装もできた。深紅の分厚いマントもだ。
「か、かっこいいー!!!」
「かっこいいねぇ、ベリア様!!」
「似合ってんじゃ〜ん!」
「お披露目会とかしてもいいだろうか……」
「いいんじゃなーい!!」
「いいねー!!」
ということで、王御披露目会を行った。
会場は、建国記念ホール。今回もケンゾウ達に頑張ってもらった。
ホールを作ってしまえばこっちのもんで、演奏会も、式典も、表彰式も、劇も、なんでもできる。だが、初めての使用は御披露目会である。
人前とか緊張するか? と思ったが、これが案外緊張しない。なぜなら愛しの国民達の前にそんなものは無用だからだ。あと、人間の頃の生徒会とかで人前に出るのは慣れている。生徒会長だったのだ。
「ベリア王の登場です!」
ワーッ!!
優しく手を振って、笑顔を浮かべる。ちょっと慣れないが、中々面白い体験だ。
ムジカ率いる音楽隊の演奏。私の為に曲を作ってもらったのだ。ラスボス戦とかで流してもらおう。なんてね。音楽隊のスキルに、仲間の鼓舞とかつけたら面白いかも。
(……神位継承戦の時とかに来てもらうか)
そんな事も考えていた。私は知らない、そんな事をする神はいないことを。
〜〜♪♪
壮大で厳格なオーケストラ。鼓膜と心臓を激しく震わせる、素晴らしい演奏だ。
それから、私の正装を作ったミーナと、宝石の加工をしてくれた武器部の代表者に、感謝状を送った。
「その素晴らしいセンスで、素敵な正装を仕立ててくれたことに、ここに感謝を送ります。ありがとう」
「ありがとうございます〜♡ これからも励みます♡」
ミーナと王冠について話している際、髪色も普段は自由にしようかなと思った。スライムの正装の髪色はスキルの色ということで、スライムは変化が出来るわけだから、自由にしてあげてもいいかもしれない。
「ワタシは絶対ピンクがいいんです〜♡」
と言っていた。
うん、髪色の自由を認めないのは前時代的だ。ここは一つ、はっきり言ってやろう。
「本日から、日常生活での髪色の自由を認める。ただし、私が言った時はスライム達は今の色に戻すように」
ワッ……!
ぷるぷる、ぷるぷると人型スライム達が喜んでいる。ゴブリン達も嬉しそうだ。
そうしたら、美容院なんかもできるんだろうか。
お披露目会は、そんな風に終わっていった。
その後は、宴会場で打ち上げ。
「ライム、お前子供なんだからお酒飲むな!」
「えぇー! スライムで1歳はもう大人だよ!」
「そう……なのか?」
じゃあいいか。いいのか……?
ライムはもの凄い勢いでお酒を飲む。酒豪だな。
「カスライムくん、意外といける口?」
「スライムの本領発揮だよね〜!」
スリスリ……
酔ったライムがやたらと私に擦り寄ってくる。ぐっ……可愛い……。
「ベリア様は飲まないんですかぁ?」
「む……私はお酒弱いから」
「創像で調節できないのぉ?」
「……たしかに」
試しにやってみた。
「……飲むぞ!」
マグティアがニヤリとしているのには気づかず……。
ごくっ!
バタン!!
「ベリア様〜!!」
私は速攻突っ伏したのだった。上手く調節できたと思った、のに……すやすや。
「それじゃ、ボク達はベリアを家に連れて帰るから〜。後片付けよろしくね〜」
「お任せ下さい!!」
「おつかれさま〜、皆!」
眠ったまま、お姫様抱っこされる。
「この後はお楽しみ?」
「ん? いやいや笑 カスライムくん、眠ってるレディを襲うのは紳士の恥だぞ〜笑笑」
「むっ……! たしかに……。マグティア様ってたまにちゃんとしてるよね!」
「たまにってなに?笑 ボクはいつもちゃんとしてるよ!」
「この間、貨幣偽造したって聞いた!」
「コイツ……いらんこと言って!」
ベリアのほっぺをむにっと潰す。
「ん、むぅ……もう、飲めない……」
「寝言……」
「かわいい……!」
その夜、ちゃんと介抱された私は、二日酔いもなく、元気に次の日起きたのだった。
〜〜〜
マニャータとはすっかり意気投合し、私達は個人的に食事会を開くほどになった。友達である。
「マニャータ殿。プリンを買ってきた」
「おぉ、毎度ありがとな、ベリア殿。我は美味しいマンゴーを持ってきた」
「ありがとう、家族と食べるよ」
今日はシャーペンダーのスパイス料理を食べに来た。
魔鳥のスパイス焼き、マンゴー添えを頼んだ。マニャータ殿の好物だ。
「おぉ、このマンゴーは意外とさっぱり系だな。野菜みたいだ」
「そう、爽やかなマンゴーが魔鳥の油感を和らげて、美味しいのだ」
意外と美味しい。いや、かなり美味しい。
〜
「相談?」
「近々、リザードマンの街に進軍しようと思っていてな。お前も兵を出さないか?」
「ふむ、初陣だな……。正直、あまり戦争はしたくないが……戦争の経験がないのも良くないと思っている」
「その通り。戦争経験は我が国と共に積んでおくべきだ」
「ありがたい。が……なぜそこまでしてくれるのだ?」
「ふ、お主のことは娘のように思っておるからな」
「マニャータ殿……。私も貴方を、父親のように思っている」
「ベリア殿……!」
ひしっ。握手した。
「では、共に戦闘訓練をするか。模擬戦も」
「わかった。こちらの騎士団にも伝えておこう」
国力が増大するのは素敵なことだ。
私の戦闘力もアップしたい。
そうして、食事会を終えた。
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