第3話 お家に住もう!
「えっ、魔神マグティア!? 魔神マグティアって実在したの!?」
ライムが凄く焦っている。血の気の引いた顔をしている。
「す、すみませんでした!!」
ライムが頭を下げた。
「は、え? どうした?」
何が起きているのか理解できん。
「ふふーん、やっぱ魔神マグティアって言ったらこれくらいはされるよね!」
「おい、マグティア? 魔神ってこの世界でどういう立ち位置なんだ?」
「文字通り神話の中の存在だよ〜! 魔神だし! ちょ〜お偉いさん! 尊い存在!」
「は、はぁ……。ライム、私も魔神なんだが……」
「え、え〜っ!! 早く言ってよ、じゃなくて、言ってくださいよ!!」
「敬語なんかよせ。私はそのままのお前がいい」
「えっ!」
きゅん……!
「そうだよ〜カスライムくん! もう友達じゃん?」
「えっ!」
きゅん……!
「って、カスライムじゃないやい!」
「ははは笑」
「でも、魔神って言ったら、少なくとも下位神以上に偉いじゃん!!」
「神にも位があるのか?」
「あるよ〜! 下位、中位、上位、超越の四つ! ボクは上位に分類されて、ベリアは下位。あぁそう、数年に一度ある神位継承戦で勝たないと天使に降格されるから気をつけてね!」
「は……神位継承戦??」
「うん! だからベリア、ちゃんと強くなんないとダメだよ〜」
腕をバッテンにするマグティア。
「天使に降格されるとどうなる?」
「ボクの使いっ走りになるよ!」
「今とあまり変わらなくないか?」
「え、今のベリアって焼きそばパン買ってきてくれるの?」
「むっ……それはしないが」
「天使になったら拒否権ないからね!」
「最っ悪だ!! 絶対勝たないと……」
私は頭の中のメモに、「神位継承戦で勝つための特訓」と書いた。
「……なるほど。私は強くならなくてはいけないのか。マグティア、付き合ってくれるな?」
「もー、仕方ないなぁ。というか、そろそろ日が暮れるよ? スライム達、ここに連れてこないと」
「そうだったな。一度戻るか」
私達は扉を出て、鍵を閉める。
スライム達を連れてきた。
「わー、すごーい!! これ、ベリア様が作ったの!?」
「あぁ」
「この、番号が書いてあるところがお家?」
「あぁ」
「ここだー!!」
「隣だー」
「やったー!」
各々喜んでいるらしい。
1キロ毎に魔界に戻れる扉を設置した。全員連れ戻す時に、生体認証も済んでいる。
放送を入れる。
機械のようなものも作れるようになった。ちなみに電気などは通っていないし、回路もない。見た目だけだ。それでも機能は同じなので。
「ご飯を食べる時は、扉から魔界に戻ってご飯を食べてくれ」
「ラジャー!!」
ひとまず、スライム達の生活はこれでよし。
次は……
「創像で戦闘をする練習だな」
「ねぇベリア! お家の中見た? めっっちゃ綺麗だよ〜!!」
そういえば、まだ見ていない。
「ベリア様〜!」
ライムが入口で手を振っている。
庭には噴水と花。大きな扉を開けると、広いエントランスがお出迎え。白と深紅を基調とした上品なデザイン。シャンデリア付き。
「らーいーむ、っと!」
ライムは手書きのネームプレートを自室の扉に飾っていた。中々に似合わない。が、かわいいからヨシ。
「自室も希望通りになっているか?」
「うんうん! いいねぇ〜!! ベリアも中々、創像が使えるようになってきたじゃん♪」
「あぁ、段々慣れてきた」
「ね、お風呂!! 見に行こ!!」
「あぁ、ちゃんと男女別にしてあるからな」
「「えっ……」」
ガーン!!!
「なぜ二人してショックを受ける!?」
「えー、ベリアとお風呂別か〜……寂しいな〜」
「もじもじするな気持ち悪い!!」
「ねー、ぼくスライムだから性別とかないよ?」
「男にしたと言っていただろ! 一度男になったら女子風呂には入れられん!」
「ちぇ〜」
お風呂の壁には、私が頑張ってイメージした絵画が描かれている。女子風呂はヴィーナス、男子風呂は勇ましい男。元美術部の力作である。
リビングや私の部屋の壁にも、絵を増やしていきたい。
生活用品も用意してある。服も色々描いてきたので様々なデザインを知っていた。
「今日からここが私達の家だ」
「ボク」「たちの……!」
二人が凄くキラキラした目で見てくる。
「やったー!!!」
「やっふー!!! ベリアと同じ家〜♪」
「なにがそんなに良いのか全く分からないが……。まぁ、私達は今日から家族ということだ」
腕を組み、少し照れつつ。
「家族……!」
「ファミリー……!」
二人は零れ落ちそうなくらい目をキラキラさせていた。
「さぁ、まだ課題は山ほどあるが。食事系の仕事が何もできていないからな。採取、狩猟、そして料理。何も用意が出来ていない。だが……」
「今日は、一旦休むとするか!」
「さんせーい!!」
「はーい!!」
知識系はスライム達には共有しているから、生活の仕方は分かるだろう。
私は風呂へと向かった。
〜
カポーン
広いお風呂を独り占め。
「さいっこうだ……」
湯加減も丁度いい。じんわり肌に馴染んでいく温度。
「創像の練習でもするか」
私は気の向くままに、風呂の色を変えていく。
赤、青、茶、黄、緑、白、紫、水色……。
シャンプーリンスを泡立てて、髪の毛につける。
シャンプーリンスの効果は、香り、殺菌、髪のツヤ出しとサラサラにすること。他はよく分からないので、ベータ版はこれだ。スライム達にも同じものを用意した。
シャンプーの香りに関して、いくつかサンプルを作り、そこから選んでもらった。
匂いはミント、フルーティ、フラワーの3種類と、無臭のものを作った。
案外無臭が人気だった。まだ人型になってから日が浅いので、匂いがついているものに慣れないのかもしれない。最初っから匂い付きを選んだスライムは、おしゃれ番長か、チャレンジャーか……。
匂い付きと言ったら、真っ先に来たのは、No.251だったな。あの子は水のスライムの女の子だが、やたらフリフリした服を着ていて驚いた。マグティアが変身させるときに、私の与えた知識から引っ張り出して想像したのだろう。
あの子はおしゃれ番長だな。名前は、No.251だと味気ない。認知した子から名付けていこう。水の女の子だから……ミーナとでも名付けるか。
匂いを作る際は、森から植物やら果実やらを摂取して、調合してから作ったのだ。つまり、香りについては天然由来である。
私用に作ったやつは、ベルガモットとムスクの香りを混ぜたものにした。正確に言うと、私が人間の頃によく着けていた香水の香り。
「うん、洗い心地も悪くない。キシまないし」
お風呂を出ると、マグティアとライムが待っていた。
「待ってたよー!!」
「待たなくていいのに。パジャマの着心地はどうだ?」
「めちゃ気持ちい! 涼しい〜!!」
「ベリア、ボクのもしかしてわざわざデザインしてくれたの?」
「……まぁ、特別にな」
白色のシルクのパジャマに、焦げ茶で草模様を描いた。ボタンのデザインにも凝ったので、中々オシャレである。
「え〜!! なにそれ可愛すぎる!! よしよしよしよし」
「やめろっ! 頭を撫でるな!!」
「え! ぼくのもオーダーメイドだよね!?」
「あぁ、ライムのもそうだ」
「やったー!! ベリア様大好き!!」
きゅん……。
不覚にも胸がきゅんとしてしまった。
「ベリアのパジャマも可愛いね〜!! 深紅で、外側がベルベット? 胸元のマークはなに?」
「……これを作る時に、私の作ったものを商品として売れないか考えてな。だから会社を立てようと思って。そのマークだ。会社名はベータリアだ」
黒色の刺繍で、筆記体のbに草模様を合わせたデザイン。
「へー! 流石だね。外と交流するには通貨がいるからね〜。それを稼ごうって訳ね!」
「ベリア様、頭良い〜!!」
「そうだ。商品は何がいいだろうか? 市場調査が必要だな……」
「それよりご飯が先でしょ!! ベリア様!!」
「あぁ、そうか。スライム達には訓練を続けてもらうとして、訓練場も作らないと。今夜は徹夜だな……」
「あぁ、それなら良かったね! 魔神は睡眠がいらないから!」
「そうなのか!」
「それじゃ、カスライムくんまた明日! ボクはベリアと作業するから〜。その後、一緒に寝る!」
「え! ずるい! ぼくもベリア様と寝るもん!!」
「は? どちらも許可しないが」
ズコーッ
「乙女の部屋だぞ?? 男が入ってくるな!」
「乙女? ベリアって何歳だっけ」
「20歳」
ピースする。
「お、乙女だー!!!」
「叫ばなくても……そういうマグティアは?」
「ボク? 1234歳!」
「おぉ……流石魔神……」
「ライムは?」
「1歳!」
「赤ちゃん……」
「赤ちゃんだ……」
「うわーっ! よちよちするなー!! ぼくはカッコイイんだぞ!!」
「いや、いっそ可愛さを武器にするのもアリなんじゃないか?」
「かわいさを……武器に!?」
この発言がまさか、ライムをこんな風に変えてしまうなんて……。
「色気も兼ね備えたら、勝てる人いないんじゃない〜?」
「いろけ……!」
途端、ライムは拳を振り上げて……
「変身!! 頼んだマグティア様!」
「ふーん、任せな!!」
魔法少女よろしく、キラキラ発光しだして、ライムは変身した。
ゴシック調の服だ。深紅の半ズボンからは赤く火照った膝が除き、白いフリルシャツのフリルの下には生地がない。つまり、フリルをどかせば平たい胸が見える。
そして、シャツが短いので細いお腹が見えている。ミニシルクハットに、仕込み杖。最後に深紅のコートを羽織って。
「どう? かわいい?」
「か、かわいい!! 素敵だ……」
「いいイメージ持ってんじゃんカスライムくん! 見直したよ」
「その呼び方やめて!」
「ボク、このかわいさで、ベリア様に貢献するね!!」
「それは素晴らしいな。ライム、お前の活躍を願っているよ」
「!! うんっ!!」
ライムは晴れやかな笑顔だった。
「じゃあ、私はリビングで色々作業してるから、ライムは寝ていてくれ」
「ねぇ、ぼくも手伝うよ?」
「ライムは子供だろう? 無理は良くない」
「むー。スライムでは大人だもん! それに、マグティア様ばっかズルい!」
その格好でワガママ言われると、クるな……。
かなり可愛い。
「まぁじゃあそういう訳で、ボクはベリアと共同作業するから!」
「強調するな、気持ち悪い!」
「ガキンチョは寝てな〜」
「むー!! くそー!! こんなんじゃ寝れないよ!」
「仕方ないな。こっちこい、ライム」
「え!」
ライムを手招きして、おでこをくっつける。
「安眠のおまじないだ。ゆっくり眠れよ」
ライムの表情がふわふわしてくる。
「ふわ……おやすみ……」
ライムはそのまま自室に入っていった。
「ふーん、やるじゃん、ベリア」
「ふ、だいぶな」
「それじゃあ、私達は課題をこなすか!」
「長い夜になりそうだね〜!!」
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