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魔神ベリアの魔界幸福化計画(第1章完結)  作者: 砂之寒天
第1章 魔界編

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18/21

第18話 魔界大戦争1

 ベリアールが開戦する前から、既に戦争は始まっている。


 悪魔軍には、既に他の国の軍がぶつかっている。故に、天圧執行(ヘブンズ・プレス)は使えない。仲間を巻き込むからだ。


 〜嫉妬族(インヴィディア)族長エンヴィスvsマニャータ〜


 先頭の2人がぶつかる。


「オレの敵はオメェか!! オレは嫉妬族(インヴィディア)族長エンヴィス!!」

「我はシャーペンダー国王、マニャータ。さっそく、一戦といくぞ」


 エンヴィスとマニャータが剣を構える。


 キーン!!!


(ぶつかった!!)


 火花が二人の間を走る。


毒牙(どくが)!!」


 エンヴィスの剣の、切り合わせた所が毒により腐敗する。


「っ!! なんだそれ!! ズルいだろ!」

「戦争にズルはないぞ」


 エンヴィスは地団駄を踏む。


「なんでお前だけ、お前だけ、そんな才能……! 寄越せ、寄越せよ 全部!! 羨望模倣(エンヴィ・コピー)!!」

「!!」


羨望模倣(エンヴィ・コピー)……相手の能力に嫉妬した場合、同じ能力が使えるようになるスキル)


「これで同等だぜ!」

「やるな、お主」

「早速試そうじゃねぇか!!」


 再び、切り合う。


 キン!!


 どろり。


 マニャータの剣先が綻ぶ。


「くっ……」

「ハッハッ!!」


 お互い、剣を受けず、避けるように動きがかわる。


 踏み込む度に、土が舞う。


 ザクッ!!


「ってぇ!!」


 マニャータの一撃が、エンヴィスに当たる。


「っ、右手が痺れて、!」


 エンヴィスの右手に、ビリビリと鋭い痺れが走る。


「……麻痺毒だ」


 マニャータの剣先が、紫から鈍い黄緑へと変わる。


「なんっだそれ、ズルい!! オレも欲しい!! 羨望模倣(エンヴィ・コピー)!」

「ほう、これも真似するか」


 マニャータの剣先が揺れる。


 右か──


 いや、左!!


 シュッ!!


「っ! 危ねっ」


 エンヴィスが息を詰める。


 なめらかに動いては、隙があれば一気についてくる。


「今のを避けるか!」


 傷口から血が垂れる。


 毒のすえた臭いが鼻を刺した。


 利き手を変えたエンヴィスの剣筋が読みづらくなる。


 マニャータの額に汗が浮かぶ。


 ガッ!!


「っ!!」


 剣が地面へ転がる。


 カラン……


 マニャータの右腕が震えた。


「麻痺、か……」

「やりぃ! 当たり!!」


 しかし……


 ピュッ! と飛んだのは、マニャータの毒針。


「いてっ、」


 また一撃、エンヴィスに当たる。


「あ!? 針なんて大したことねぇよ! ハッハッハ!」

「……」


 マニャータは黙ったままだ。


「こんなのどうってこと、な───────」


 バタン!


 エンヴィスが倒れた。


「あ、れ?」

「お主は毒の知識が足りん。100種類の毒を操る私には、毒の組み合わせで死に至らせるのは造作もない」

「なんで、なんでお前ばっかり……!」

模倣(コピー)程度では真似出来ん、知識の差があったな」

「っ〜、くそっ!! まだ、オレは、やれ……」


 ガク。


 マニャータの刀の色が、黄緑色から紫に戻る。


「さて。次はどいつだ」


 嫉妬族(インヴィディア)達が後ずさる。


「来ないならば、こちらから行くぞ!!」

「ギャー!!」


 マニャータは、毒を駆使して、嫉妬族(インヴィディア)達を圧倒した。


〜〜


 〜傲慢族(スペルビア)vs磔族(スタウロス)


「俺は傲慢族(スペルビア)ヴァルゼイン!」

「私は磔族(スタウロス)のラティエル。静粛に、裁きを下しましょう」


 ラティエルの冷たい視線と、ヴァルゼインの見下した目線が交差する。


「俺の能力は、優越思想(プライド)! 俺がお前より優れていると思っている限り、魔力と力が増す!! お前のようなナヨナヨした女天使、簡単に捻ってくれるわ!」


(わざと能力を宣言することによって、私を日和らせようとさせてきましたか……)


「なるほど。では、貴方にとって私は天敵かもしれませんね」

「なんだと!?」

「私の能力は、その身で知っていただきましょう」

「!!」


窒息領域(サフォケーション)


(息が……できねぇ!!)


 ヴァルゼインは金魚のように口をパクパクする。


(だが……魔法を放つのには動かなくていい! 何が天敵なのか分かんねぇが、それまで耐えれば俺の勝ち!!)


 ヴァルゼインは、火球を放つ。

 

 キン!!


 剣先が振り下ろされ、2つに割られる。


 ラティエルの聖剣だ。


「その程度では、私のことは倒せませんよ」

「〜〜っ!!」


(なら、これはどうだ!! 爆炎火球(フルフレイム)!!)


 ボウッ!!


 大きな火球がラティエルを襲う。


「!!」


 ブンッ


 剣先が火球に入り込み、二つに分けようとする。


「っ、きゃ、」


 が、残った部分がラティエルに当たった。

 灼熱がラティエルを襲う。


「熱い……!」


 羽の焼ける匂いがする。


 ヴァルゼインが嗤う。


「仕方ありません。聖なる盾を使います。神よ、私に聖なる力を!」


 すると、ラティエルの左手に盾が現れた。


(あ??)


 構わず爆炎火球(フルフレイム)を投げる。


「はっ!!」


 スルッ


 盾によって受け流される。


(何度も投げればこっちのものだ!! 俺の魔力は増してんだからな!!)


 ブォン!! ブォン!!


 どんどん火球が放たれる。


「はっ! ほっ!」


 しかし、盾のせいで中々当たらない。


(くだらん!! 力で押し潰す!)


 ヴァルゼインは、両手に火球を出し、挟み込むように放った。


「!!」


 ラティエルは翼で空を飛ぶ。


(くそ、このままじゃ負けちまう!!)


 ヴァルゼインに焦りが募る。


 火球を投げる動きが乱雑になっていく。


「そう、貴方は負ける」

「!?」


 ヴァルゼインに動揺が走る。


「貴方は弱い。貴方は窒息死する。もしくは───────」


「─────私に首を飛ばされます」


 ゾッ……!


 その冷たい目に、鳥肌が立つ。


 背筋を氷でなぞられたようだった。


 初めて。


「負ける」


 その二文字が脳裏をよぎる。


 ヴァルゼインは拳を握る。


(まだ!! まだだ───────)


 しかし。


「そろそろですかね」

「かっ、は……」


 ヴァルゼインは跪き、胸を抑える。


(息が、苦し……)


 ラティエルはヴァルゼインに近づき、剣先で顎を上げさせる。


「ほら、最初の余裕はどうしました? ねぇ、お聞きします」


 ラティエルは笑う。


「貴方まだ、自分の方が優位だと思いますか?」

「〜〜っ、クソクソクソ!!」


 息が足りなくなるのも構わず、ヴァルゼインは叫ぶ。


「この、くそ、天使……ガハッ」

「苦しいでしょう。今楽にして差し上げます」


 剣を持ち直す。


「最後に、一つ答えてください」

「!?」


 剣が掲げられる。


「……貴方は、本当に私より強いのですか?」


 ヴァルゼインは────


(クソ、俺は、俺は……!)


 ────苦しげに、目を逸らした。


「貴方が信じていたのは、自分の力ではありません」


 冷たい瞳がヴァルゼインを映す。


「優越という幻想です」


 ギリッ……


「それでは、さようなら」


 剣が素早く下ろされる。


 ザクリッ!!


 ヴァルゼインは、最後まで歯を食いしばっていた。


「……安らかに」


 静かに告げる。


 ラティエルは勝利をおさめた。



傲慢族(スペルビア)vs マグティア


「オレの名前はレグナス!!」

「そっか!」

「……オマエの名前は!?」

「え、どうせ殺すし名乗っても意味ないかなって」

「なにぃ!? その自信、今に捻り潰してやるぜ!!火球(フレイム)!!」

「うぉっ」


 迫り来る火球を前に、マグティアは思考する。


(こんな火球、創像(イメージクリエイト)で簡単に無効化できる……でも、今回は刀を使いたいからなぁ……)


 ブンッ!!


「あ!?」


 力任せに振り下ろした刀により、火球(フレイム)は真っ二つに別れた。


 ついでにいうと、レグナスの前髪が切れた。


「……反則じゃないか!?」

「あぁ、大丈夫。キミならできる!」

「あぁ!? そうだ!! オレならできる! オレならできる!!」

「キミの方が強いよ!」

「オレの方が強い!! オレの方が強い!! なぜなら俺の方が強いからだ!! ハーッハッハ!! 」

「そうそう!」


 マグティアの目的……それは


優越思想(プライド)!!」


(きたっ!)


 レグナスに能力を行使させることだ。


「うおおぉ!!」


 レグナスが素手で刀を折りに来る。


(力任せにやったら折れるな。なら────────)


 くるっ


 刀を少し回して、相手の指から滑らせる。


「あ!?」


 流されたレグナスは、空振りに焦る。


 呼吸を一瞬止めて、浅く吸う。


(手には力がかかってるけど、手首は止まってる。狙うなら……)


「ここっ!」


 フッ、と息を吐きながら刀を振る。


 ザンッ!


 ボトリ。


「あ、ぁ!? 俺の手が!!」


 レグナスが冷や汗をかく。


「うんうん、段々わかってきた!」


(力任せにやるんじゃなくて、ぬるって流すんだね!)


 マグティアは、一度刀を鞘に収める。


(抜刀、ってやつをやってみようかな!)


「なんだ!?」

「キミはそこにいてね!」

「あ!?」


 マグティアは一気に間合いを詰め、抜刀。


 スッ!!


「あ、避けられた」

「ふん! そんなもんか!!」


 失敗。


(今の、刀が鞘から抜け切るまでに見切られた。)


(もっと速くするには……)


 ただ刀を抜くだけじゃ足りない。


(……鞘を後ろに下げるのか!)


 目を閉じて、呼吸を整える。


 バチッ


 目を開く。


 レグナスの肩が、踏み込みと同時に動く。


(今!)


 ザンッ──


「あ?」


 レグナスの体が、ゆっくりズレる。


「よし」


 チン。


 刀が納刀される。


「なに、が……」


 ボトリ。


 肉塊が落ちる。


「刀って面白いね!」


 マグティアは、その調子でどんどん傲慢族(スペルビア)を倒していった。


 遠くでは、天使が落ち。悪魔が断末魔を上げていた。


〜〜


憤怒族(イーラ)vsギオン


「我輩は 憤怒族(イーラ)族長、ガルディアだァ!!」

「ワレは鬼山国王、ギオン!! 一戦交えようではないか!!」


「ガァッ!!」

「ふっ!!」


 ガルディアが殴りかかり、ギオンは刀の面で受け流す。


 何度も繰り返し……


「埒があかねェ!!」


 ガルディアは近くにいたスライムに八つ当たりしようとし────────


「!! スライム!!」


 バキッ!!


「っえ?」


 スライムは、死角からの攻撃から庇われ、状況が理解できない。


 スライムを庇った衝撃で……


「ギオン様!! 刀が!!」


(刀が、折れた……!)


 ギオンは納刀する。


「いや、まだだ」

「?」

「鬼山魂は、まだ燃えている!!!」

「!!!」


 ギオンは大きな拳を、力強く握る。


「まだ拳が残っておる!!」

「っ!!」

「鬼山魂は、守りたいもののために戦うのを諦めない精神!! ワレの心は、折れん!!」


 ギオンの目には、鬼山魂が燃えていた。


「ッ、ガーーーッ、イライラする! 何が守るだ!! 人生は、自分のために生きてこそだ!! 我輩は怒った!! 憤怒覚醒(ラース)!!」

「!!!」


(雰囲気が変わった!!)


 ギオンは警戒する。


「がァッ!」

「はぁっ!!」


 お互い殴りかかり、頬に受ける。


 2人は吹っ飛んだ。


「ぬぅ……!!」

「ぐっ……まだだ!!」


 蹴り技が放たれ、ギオンが腕で受ける。


 ギオンの拳がガルディアの腹にぶつかる。


「はぁ、はぁ……!」

「くそ、なんでそんな頑丈なんだよ……!」


 2人はボロボロになっていった。


「早く折れろよーーッ、アーーーッ!!!」


 バギィッ!!!


 ガルディアが殴った地面が割れる。


「ぬっ……力が増したか!!」

「ハーッ、ハーッ」


(ガルディア殿の目には理性は残っていない……! ここで負ければ、他の者が危ない!!)


 ギオンはより一層気合いをいれる。


「ガァッ!!!」

「ぬぉおぉ!!」


 拳が交差する。


 ギオンが頬に受け、吹っ飛んだ。


「がっ!!」


 血が飛ぶ。


「……」


 ギオンは、口から血を流しながら立ち上がった。


「立ち上がるなァッ!」

「いや、立ち上がる!! 守るもののために!!」

「ガァァッ!!」


 また一撃、また一撃と食らわせ合い、お互いボロボロになっていく。


「ハァ、ハァッ」


(なんで……身体が動かねぇ……!)


 ガルディアの心身は消耗していた。怒りは長く続かない。


「ギオン様ーーッ!!」

「頑張れぇぇッ!!」


 鬼山兵の応援が聞こえる。


「負けないでぇぇっ!!」


 それに混ざる、守られたスライムの声。


 それに対して、ギオンは……僅かに口元を緩める。


「彼らのためにも、決して、負けてはいかんのだ……!」


 ボロボロのまま、闘志を燃やしていた。


「くっ……」


 しかし、ギオンも片足をつく。


「……まだ、だ……!」


 震えながら、立ち上がる。


「さぁ、まだやるぞ!!」

「〜〜ッ、クソォッ!!」


 最後の一撃。


 息は切れている。


 拳は震えている。


 一歩、また一歩と踏み込み……


 ドォン!!


 お互いの拳がモロに当たる。


 ガルディアの拳が、ゆっくりと力を失う。


 立っていたのは───────


「ハァ、ハァ……! ワレの、勝利だ!!」


 ギオンだった。


 拳を天に伸ばす。


「ウオォオォッ!」

「ギオン様ァァッ!!」


 ギオンの勝利を見た鬼山国の兵たちが歓声を上げる。


 一方、その声を聞いた別戦線の悪魔たちは動揺していた。


「……これで、守れたか」


 バタン。


 しかし、ギオンも限界だ。


「ギオン様! 今、後衛に運びます!!」


 そこに、先程助けたスライムが現れる。


「今度は……僕が、ギオン様を守ります!」


 彼が、ギオンを後衛まで運んでくれたのだった。


〜〜


「運ばな、きゃ!」


 スライムは、ギオンを背負って歩く。


 だが、ギオンも大男。小柄なスライムが運ぶには、かなり重たい。


「おい、スライム!!」

「!! 鬼山兵さん!」


 そこに現れたのは、鬼山兵。


「オレも手伝うぞ!!」

「!! ありがとうございます!!」

「いい! ナカマだからな!」

「っ!! はい!!」


 2人はギオンを運んで後衛まで向かった。


「あら、ギオン様! お疲れなのね、ご飯あるわよ!」

「助かる……、!」


 後衛にいたのは、ウァルナ嬢。


「はい、お魚のお茶漬け! 胃にも優しいから、食べやすいと思うわ!」

「……感謝する、!」


 鼻をくすぐる、優しい茶漬けの香り。


 パクリ。


 一口食べると……


「!! 美味い!!」

「それはよかったわ! おかわりも沢山あるわよ〜!」


 パクパク、パクパクとどんどん食べていく。


「おかわり!!」

「はぁい!」


 計5杯の茶漬けを食べたギオンは、立ち上がる。


「もう一度行ってくる!」

「え!? ダメですよ!!」

「スライム!!」


 スライムがギオンの背中にひっつく。


「ギオン様、もう少し休んでいきましょう!! 今行ったら、死んでしまいます!!」

「だがな……、まだ我は……!」

「大丈夫です!! ギオン様が守ってくれたナカマは、弱くありません!!」

「!!」

「僕も行ってきます!! だから、ゆっくり休んでいてください、ギオン様!!」


 スライムの目には、鬼山魂が燃えていた。


「!!……ガーッハッハ! そう言われては断れんな。少し休んでいくとするか!」

「!! はいっ!」

「スライム、お前も死ぬなよ!!」

「はい!!」


「僕も、ギオン様みたいに、人を守れるスライムになりたい!!」


 スライム、No.108。


「ちょっと待て、スライム!」

「はいっ!」


「お主、名前は?」

「僕ですか? 僕はNo.108です!」

「そうか! No.108か……」


 ギオンは少し考える。


「お主は番号ではない、ナカマ!! そして、お主は今日からリオンだ!!」

「!!」


 スライム……いや、リオンの目に涙が浮かぶ。


「僕は、リオン……!」

「あぁ、そうだ!!」


「ギオン様!! リオン、行ってきます!!」

「あぁ、行ってこい!!」


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