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魔神ベリアの魔界幸福化計画(第1章完結)  作者: 砂之寒天
第1章 魔界編

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第16話 セレマリンにて

「それじゃ、ベリアちゃん! よろしく頼むわね!」

「あぁ、任せろ」


 ウァルナは殊勝だった。これから死ぬかもしれないというのに、その様子を全く見せない。


 いや、全くではないか。


 たまに、マグティアの方を切ない目で見ているのだ。


 マグティアは気づいてか気づかずか、スルーしているが。


「海の中に火か……」


 普通にやれば、発生させることもできない。


「……なにか、透明なカバーをするか?」


 熱が伝わる、透明な素材。


「割れないガラスをイメージするか」


 そして、燃え尽きない火を。


創像(イメージクリエイト)!」


 そこには、ガラスに包まれたコンロサイズの火があった。


(そうだ、ガラスが割れたら燃え尽きるようにしておかないといけないな。酷い火事になるから)


「これはいくつ作ればいい?」

「1万個頼みたいわ!」

「わかった」


 コピーアンドペーストで、1万個作る。


「できたぞ」

「ありがとう〜! それじゃ、今夜は泊まっていってね! あぁそう、ここじゃなくて───────」


「───────上に宿をとったわ!」


「上?」

「客船よ!」

「そうか。感謝する」

「ありがとー!」


「それじゃ、最後に……もう少しだけ足掻かせてくださいね」

「ん? 何か言ったか」


 ガチャン!!


 すると突如、上から鉄格子が落ちてきた!!


「ありゃー笑」


 なんと、マグティアが閉じ込められてしまったのだ。


「マグティア! 今助ける!!」

「マグティア様ー!」


 と思ったら……


 バキ、バキ!! バキャッ!!


「っ、え?」

「え??」


 マグティアは格子を素手で壊し始めた。


「ダメだよ〜、悪いことしたら笑 ボクが怒ってないうちにやめな?」


 馬鹿力過ぎないか?? 鉄格子だぞ??


 威圧(プレッシャー)をかけられ、ウァルナ嬢が狼狽える。


「……そう。マグティア様は、やっぱり私のモノにはならないのね……」

「悪いけど、ならないよ〜」


 手についた鉄粉を払いながら、マグティアは笑う。


「だって、ボクはベリアのモノだから!」


「っ……」


 ウァルナ嬢は、目に涙を浮かべる。


 ウァルナにとって鉄格子は最後の抗いだった。だって、恋が叶わなかったら、もう人魚ではいられない。


 つまり、今夜──────。


「えぇ、ごめんなさい。私が悪かったわ。客船は安全だから、安心して泊まってね。それじゃあ、()()()()()

「あぁ、またな」

「またねー!!」

「さよなら〜」


 亀に乗って、海面まで上がる。


(また、はないのよ……。貴方とも、マグティア様とも)


 人魚は、恋が叶わなければ夜に泡になって死ぬ。


 そんなこと、私はすっかり忘れていて。


「すごーい! 船がキラキラだな!」

「うん、そうだねぇ!」

「ほんとだー!」


 船の夜景と、食事を楽しんでいた。


「ワイン飲みたいんだが、酔わせるなよ??」

「しないよ〜笑 海に落ちたら困るもん」


 ワインを嗜んで、その後。


「ぼく、もう眠いから先眠ってるねぇ……」

「おやすみ、ライム」


 私はマグティアと2人きりで、海風を浴びていた。


 潮風の香り。そして、誰かの歌声。


「誰か歌っているな」

「綺麗な歌声だねぇ」

「悲しい歌だな」

「そうだねぇ」


 ふと、聞き覚えのある歌声が聞こえる。


「ウァルナ嬢の歌声……近くにいるのか?」


 マグティアは優しい顔で、私の方を見ている。


 海面が、船の光を反射してキラキラ輝いていた。


「……ねぇ、ベリア。人魚は何をしたら泡になるか知ってる?」

「……失恋?」


 そういえば、ギオンとそんな話した気がするな。酔っててあまり覚えてないが。


「その通り。あのね、失恋して人魚が泡になって、それが海面に届くと、歌になるんだ」

「っ!!」


 私は勢いよく立ち上がった。


「つまり、ウァルナ嬢は……!」

「……恐らく、泡になったんだろうね」


 彼女が……! 目に涙を浮かべる。いや、それよりも。


「だが、それでは国民のことは誰が率いるんだ!!」


 私の目標は、願いは、魔界の幸福だ。


「そう、だから、今死なれたら困る。だから、生き返らせる」

「生きかえ、?」

「神以外の生き物にこれをやるのは、禁止なんだけどね。なんなら、資格持ってない神がこれやるのも禁止だし。秘密だよ」


 マグティアが指を振ると、輝く空気が集まった。


「これは……綺麗だな」

「これがウァルナ嬢の亡骸!」

「!? 亡骸!?」


 人魚の亡骸というのは、随分美しいらしい。幻想的な生き物らしいことだった。


「じゃ、いくよ〜!


 アル・レヴァナ・エテルニア・ヴィータ!」


 世界が、一瞬息を止める。


 そして、空気は一層の輝きを増し……ウェルナ嬢の形を描く。


 泡は肌になり、歌は鼓動となる。


 やがて彼女は────────静かに目を開いた。


「あれ、私……」


「おはよう、ウァルナ嬢!」

「お、王子様……?」


「ううん、魔神マグティアだよ!」

「っ、は! そうよ、私、泡になって死んだはず……! なぜここに?」

「キミが食べてたご飯に、魔女の薬を混ぜといた! だからだよ」

「そ、そんな……!」


「……」


 すごくナチュラルに嘘をつくな。びっくりした。


「キミにはまだ、セレマリンを統治する役割がある。まだ、頑張れる?」

「っ〜〜〜」


 ウァルナ嬢は、目をキラキラさせている。


 我慢だ、我慢……。


「うん、まだ頑張るわ!」

「よろしい〜! じゃあ、もう大丈夫。国に帰ってあげて」

「うん! ねぇ、マグティア様!」

「なに?」


 チャポン


 海に飛び込んで、顔だけ出したウァルナ嬢が、叫ぶ。


「お慕いしておりますわ!!!」


 そう言って、潜っていった。


「はは、ごめんね〜笑笑 ボクはベリア一筋……って、聞いてないか」


「……」


 私はマグティアに抱きつく。


「っ、え!!」


 マグティアが頬を染める。


「……イヤだった」

「そうだよねぇ!! ごめんねぇ!!」

「……慰めてくれないとイヤだ」

「!!」


 マグティアが私に向きなおり、顔を近づける。


「……キスしていい?」


 私は目を閉じる。


「───────」


 唇が触れる。


「───────ごめんね、不安だった?」

「不安ではなかった。だけど、ただイヤだった」

「そうだよねぇ。あ、これ! あげる!」

「なんだ?」


 箱を受け取る。箱を開けると───────


「──────ネックレス?」

「うん、嫌な気分なったでしょ? お詫びのしるし」

「こんなの、いつから……いや、いい。ありがとう、マグティア。あ……」


 愛してる、と言いかけて。


「?」

「いや、なんでもない。部屋に戻ろう」

「うん!」


 勇気が出なくて、言えなかった。


〜ブックマーク、いいね、評価、コメントのほど宜しくお願いします〜

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