第15話 セレマリンで|王座評議会《ラウンドテーブル》
この回で1番成長したのは私です。
前回の王座評議会から、1ヶ月が経った。
「今回の王座評議会は、人魚族の国、セレマリンで行われるんだったな」
所で、水の中で呼吸ができない人達は、どのようにするのだろう。
「魔女から薬を貰うのだ」
「魔女?」
すっかり仲良しになった、蛇族の国王、マニャータと話す。
「人魚族の薬師を、おとぎ話から魔女と呼ぶ」
「ほう」
おとぎ話の魔女といえば、対価に歌声をもらったりするやつか。
「……大丈夫なのか?」
「安心せい、ただの薬師だ。……まぁ、法外な薬も取り扱ってはいるようだが」
「なるほど」
「服装はどうする? 私は水着で行くが」
「水着? お主は若いな。我は水陸両用の服で行く」
「そうだよな」
そんな風にして、私にとっては2回目の王座評議会が開催された。
参加者は、私、マグティア、ライム、ミーナ。
「これが、水中呼吸薬か……どんな味なんだ?」
「いっきにいってみよ〜!」
ゴクッ!!
これは……!
「「……昆布出汁だ!!」」
嘘だろ!! こんな美味しい薬があるのか!!
「もしかして、セレマリンでは昆布が買えるのか」
「他の海藻もありそうですよね♡」
「楽しみだね!」
浜辺にいると、大きな亀がこちらに来た。
「水中呼吸薬は飲んだかな? セレマリンまで案内しよう!」
「よろしく頼む」
私達は、その亀に乗ってセレマリンへ向かった。
「そこのライム色のキミ!」
「なーに?」
「キミ、好きな食べ物はなんだい?」
「ライムティーだよ!」
「ライムティー! オイラは亀だから、茶を飲んだことはねぇんだな。誰が淹れてくれるライムティーが好きなんだい?」
「もちろん、ベリア様! ぼくのカノジョ!」
「おいおい、こりゃたまげたな! カノジョさんか! そっちの焼けた肌のオニイサンも、カノジョはいるのかい?」
「ボクのカノジョもベリアだよ〜笑」
「!?!? そりゃすげぇ!」
そんな感じで、ひたすら話してくれた。
最後には……
「お前達〜、最高だぜ〜〜!」
どこかで聞き覚えのあるセリフが。
これは───────
(ネズミーランドのタートルトークだ!!!)
著作権的に大丈夫なんだろうか。心配である。
やがて、巻貝のような屋根の建物が、沢山見えてきた。
そして、一際大きな城の前で降りる。
「ここがセレマリンだ! 今日はありがとな!」
「ありがとう、クラッ……ん゙ん、亀さん!」
中に案内され、会議室へ。
白い円卓。そして奥に、なにやら豪華でカッコイイ椅子が。
「いらっしゃ〜い! ようこそ、セレマリンへ!」
「世話になるぞ」
「よろしくね〜」
「マグティア様〜〜!♡♡ ようこそお越しくださいました! 特等席を用意してあります、さぁさぁこちらへ♡」
マグティアはカッコイイ椅子に座らせれた。
「え〜、ありがと!」
「いえいえ!」
マグティアがウァルナ嬢に感謝しているのを見ると。
モヤァ……
(なんだろう。……胸がモヤモヤする)
拳を握る。
「ペンペンペーン!! ぺち丸様が来たペンよ〜!!」
「失礼いたしますぞ」
「……」
「来たわよ〜♡」
「失礼する!!!」
「来たぞ」
「みんな〜! いらっしゃ〜い!」
順に席に着く。
死さんがなにやら浮かぬ顔だが、どうかしたのだろうか。
「それでは、王座評議会を始めるわよ〜!」
「今回は、定例報告! 死様からどうぞ〜♪」
「死族の国、ネクロディアでは────────」
「ペンペンペーン!! ミナミナとラムラム! ぼくちんと可愛い比べするペン!」
うわ、また遮ったよコイツ……。
「それ、会議が終わった後じゃダメなのか?」
「ダメペンよー!!」
思わず制するが、聞く耳を持たない。
「ぺち丸」
ゾッ……!!
(威圧……!)
(え、死さん!? 怒ってる!?)
あの紳士な死さんが!?
王座評議会に動揺が走る。
「私は今、虫の居所が悪い。後にしろ」
「ペン、ぺん……ごめんなペン……」
ごめんなペンて。うるさ。
「報告する。ネクロディアのNo.2、ザドキエルが何者かによって殺害された」
「っ─────!!」
「現在調査中だが─────、悪魔による犯行の線が濃厚とされている。して、リリス」
目隠し越しに、睨みつける。
「心当たりは?」
(っ……こわぁぁぁぁ!!!)
私は震えるのを必死に抑えていた。神妙な顔はできているだろうか。
(ふ、流石、魔神だな!! ベリア殿も飄々としておる!)
ギオンが冷や汗をかきながらそう思っていた。
ベリアは取り繕うことに成功しているらしかった。
ちなみに、ベリアから見たギオンも余裕そうだった。
皆、内心では怖がっているのである。
「うーん、なんのことかしら?♡ まったく分からないわねぇ〜」
リリスは調子を崩さない。何も知らないようだが、本当かどうか。
「……そうか。私からの報告は以上だ。次、磔に回す」
「ありがとうございます。では、ワタクシからの報告ですが……ワタクシの方も何やらきな臭くてですね。上位陣の行方不明者が増えているのですよ。こちらも調査中です」
「怖いわねぇ……」
ウァルナも不安げな顔だ。
「最近は平和続きだったからな! そろそろこういうことが起きるかと思ったぞ!」
「そうなのか」
会議は進むが、動揺は残る。
「次、ギオン殿」
「感謝する! ワレの方は、火山活動の活発化による水不足が起きておったが、ベリア殿の協力により解決いたした!」
「あら、ベリアちゃんが?」
ウァルナ嬢が反応する。
「うむ! 膜の張った水を湧かすことによって、蒸発を防いだのだ!」
「あら、凄いのね! ベリアちゃん、後で相談いいかしら?」
「……私か? 構わん」
「ありがとう♪」
ところでマグティアだが。
「おいしー♪」
アイツは1人だけ海ぶどうとか貝とか食べている。いや自由か!?
「次、リリス殿!」
「ありがとう〜♡」
「ワタシの方だけど、悪魔から新たに国が発足するということで、同意を得たいと思うわ〜♡ ヴァルディス、入ってらっしゃい!♡」
「!!!」
入口に視線が集まる。
ドス、ドス。
足音を立てて入ってきた男は、図体の大きい悪魔。肌が赤く、大きな角が生えている。
「俺様こそが、傲慢族筆頭!! ヴァルディスである!!!」
耳が痛くなるような大声。
「声がデカイペン!! ぼくちんのプリチー耳が痛くなったらどうするペン!!」
「あ゙ぁ゙ん?」
ヴァルディスがドスドスとぺち丸に近づく。
そして、その頭を掴んだ。
「このちびペンギン、食ってやろうか!!」
「はーん!? 氷漬けにしてやるペン!!」
ぺち丸の氷結により、会場の海が冷えていく。
一触即発。
「こら、会議の場での戦闘は慎まんか!」
「そうだぞ!!」
マニャータとギオンが制する。
「会場壊さないで〜!」
ウァルナ嬢は会場が心配らしい。主催者だから仕方ない。
「ふん、まぁいい。俺様の国、ヴァルヘイム!! 発足に反対する国には戦争をしかける!!」
ピリッ……
「ほう、大きく出たな。大体、そうやって発足した国は、すぐ潰れるんだ」
死さんが冷たく言い放つ。
「ほぉ〜……言うじゃねぇか、死」
「なんだ? 近づいてくるな。私はお前が気に入らん」
「っ……ほう!! 俺様もオマエのことは好かん!!」
「ヴァルディス殿。年輩は敬うべきですよ? ねぇ、ベリア殿」
ここで私に回すか!?!
「……あぁ」
「磔!! テメェら天使は硬っ苦しいなぁ!!」
ヴァルディスがマグティアに近づく。
貝殻合わせをしていたマグティアが顔をあげる。
「え、なに?」
「その席を貸せ!!」
「やだけど」
「ふん!!」
「うぉっ」
ヴァルディスはマグティアを押しのけ、その椅子に座る。
「宣言する!! 俺様は魔王になる!!」
「は……」
「魔王……!?」
シーン……
静まり返る。
(魔王ってなんだ……?)
絶対、絶対に場違いなことを考えている自信がある。
「ゆえに、国の発足を認めろ、オマエら!!!」
全員が目配せし合う。
「いいんじゃな〜い? 認めれば!」
「マグティア!」
マグティアが賛成するか。魔神たる彼が賛成すれば、国の発足は決定事項だ。
「なぜ?」
「え、だってさ────────」
マグティアは貝殻を握り潰す。
「潰すんだったら、デカイ敵の方が面白いじゃん?笑 ね、悪魔風情!」
「っふ……面白いじゃねぇか!! 精々刃向かえ、ベリアール!!」
「じゃあ、決まりね〜♡ ヴァルディス、下がっていいわよ〜♡」
「ふん!!!」
(この怪しい動きの中で発足する国、ヴァルヘイムか……)
吉と出るか、凶と出るか。
「ワタシからは以上! 次、ウァルナちゃん!」
「ありがとう〜!! 私の方は、特に変わりないわ! ただ、これはベリアちゃんへの相談にも繋がるのだけど……。スマホとべリッターが流行したことで、料理に興味が湧いた国民が大勢いて。だから─────」
ウァルナ嬢が、目をウルウルさせて私を見る。
「ベリアちゃん、海の中に火をつくってくれないかしら?」
「海の中に、火……!?」
「これが叶えば、セレマリンの料理に革命が起きるわ! 未来の国民のためにも、叶えてあげたいのよ」
「また、難題を……。わかった、考える。だが、条件がある」
「な〜に?」
まさか、こんな条件がくるなんて、ウァルナは思いもしなかっただろう。
「私がそれを叶えたら、マグティアからは手を引け」
「っ……! そんな……!」
「はっきり言って、モヤモヤするんだ。お前とマグティアが話していると」
「え〜! 嫉妬してるの?」
「嫉妬?」
そうか、これは嫉妬という感情か。
「……そうだ、嫉妬する。そういうわけだから、頼む」
「っ……」
ウァルナは揺れる。国民のための国王であるべきで、しかし、人魚にとっての恋とは文字通り命懸け。叶わなければ、その先は────────死。
ウァルナは───────
「……わかったわ」
──────了承した。
「よし」
それを知っているはずのベリアは、一瞬冷酷に見えるほどだった。
「私からは、以上よ。次、ぺち丸ちゃん」
「ありがとペチ!! ぼくちんの国、ホワイティスは、魚の漁獲量が増えたペン! 今年は大漁ペン、次の王座評議会では沢山食べさせてやるペン!」
「やった〜♡ ホワイティスのお魚って肌にいいのよねぇ♡」
「そうなのか? リリス」
「えぇ♡ うちもホワイティスのお魚は輸入してるわ♡」
「そうか」
知らなかった。
「なぁ、それ私の所にも輸出してくれないか?」
「ペン? ペーン、いいペンよ! スマホの恩があるペン」
「ありがとう」
やった。天然の魚も食べたいもんな。
「ぼくちんはそれだけ! 次、マニャマニャ!」
「感謝する。私の方は特にない。例年通りだ」
いいことだ。
「最後、ベリア殿」
「ありがとう」
「私からだが、強欲族の国、ヴァーノミンより戦争をしかけられ、無事勝利した。そのため、ヴァーノミンは以後ベリアールの植民地となる」
「……」
特に驚きはないらしい。まぁ、まともな諜報があればこの程度は周知の事実だろう。
「以上だ」
「ありがとう〜! それじゃあ、恒例のお茶会と行くわよ〜!」
とてもお茶会の気分ではないが、いつも通り行うらしい。
私の知らない食べ物が並んでいく。
「その……死さん。ザドキエルさんの方のこと、お悔やみ申し上げる」
「……ありがとう。アイツは100年来の忠臣だった」
悔しそうに唇を噛み締めている。
「私は、犯人をとても許せそうにない。国ぐるみの犯行でれば、その国を潰すのも辞さない程だ」
「……そうか」
相当ご立腹だ。
「それにしても、よくマモン様のこと倒せたわね? 彼、強かったでしょう? レアスキルも色々持っているし」
「? いや、出オチレベルで弱かったぞ」
「!?!!?」
驚愕する。
「っ、え? 冗談かしら?」
「いえ、冗談じゃありませんよ、ウァルナ嬢。彼女は確かに、マモンを瞬殺しました」
「私も見たが、本当だ」
「っ……恐ろしいわね」
「ペン……怖いペン」
「まぁ、魂の友は強いからな!!」
「ふ、ありがとう」
そんなに褒められると照れるな。
「ところで、この世界における『魔王』とは、どういう立場なんだ?」
「そんなことも知らないのですか、若輩者は。シンプルですよ、悪魔の全ての種族を率いる王です」
「なるほど」
と、いうことは……
「私が植民地にした強欲族の領地を取り返すために戦争をしかけられたりするのだろうか」
「有り得ますな」
うわ、最悪だ。また悪魔か。
まぁ、だが─────
マモン戦からだろう。
以前の私なら、こんなことは言わなかった。
「精々楽しませてもらおう。私も敵の殲滅は嫌いじゃなくなったからな」
「!!」
私から戦争を仕掛けることはないが、向こうから来た敵位は、楽しく倒してもいいだろう。
「魂の友の方が、魔王のようなことを言うな!!」
「ふ。そうか」
指を組み直す。
「それもそうだ。なんたって、私は魔神ベリアだからな」
「!?!?」
あれ、ウァルナ嬢とリリスとぺち丸が驚いている。
「ま、魔神??」
「っ、魔神って言ったかしら?」
「ま、魔神ペン??」
空気が凍りつく。
「あぁ、言ってなかったか。私は魔神マグティアの神嗣だ。マグティアによって神にされた人間」
「っ……」
「通りで強いわけねぇ……♡」
「驚きましたわ。魔神が魔界の政治に関与していたのですね」
「ペン。じゃあ、ベリベリ!」
「なんだ?」
ぺち丸が私を指さす。
「オマエが悪魔達を制圧して、魔王になるペン!!」
「!!!」
「ほう、それはいい案だな」
「えー! 面白そう!! いいこと言うじゃんペンギン!」
「マグティアまで……」
だが、なんだ。
「悪くない。では、私はヴァルディスを押しのけて、魔王を目指そうじゃないか」
あいつ、マグティアのこと椅子から押しのけてたしな。今度は私が押しのける番だ。
「っ〜〜♡ ベリア、カッコイ〜!!」
「やめろ、頬擦りするな! 人前だぞ!!」
「や〜ん、照れちゃってかわい〜♡」
「照れておりますね」
「て、照れてない!!」
魔王を目指す。
その一言は、後に魔界全土を揺るがす宣言となることを、この時の私はまだ知らなかった。
さて、あまり話さなかったリリスは、一体何を考えていたのか─────。それはまだ、分からないのだった。
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