第12話 武闘会1
「……死さんと磔殿って、どうやって戦うんだろう」
「ん? どうしたの?」
マグティアが私の頬をもちもちするので、ペシンと叩き落とす。
「いてっ」
「ライム、どう思う?」
「う〜ん、武闘会とか開いたらいいと思う!」
「良いアイデアだな!」
ということで……
〜♪(私のお気に入りが流れている)
〜そうだ、武闘会をしよう〜
その宣伝が始まったのは、1ヶ月後。
「選手募集中! だってよ!」
「ね! ライム様も参加するのかな?」
ビビとモアは、掲示板モニターに表示された宣伝を見る。
「楽しみだな! バチバチだぜ!」
「うん!」
2人はウィンドウショッピングに向かったのだった。
「ミーナちゃんが作った新作、かわいい〜!!」
「鬼山から入ってきた和服デザインを取り入れたファッションもイケてるな!」
モアはフレンチガーリーファッションが好きなようだ。
「スライムソーダ、美味しいねぇ!」
「屋台を見るのも楽しいな!! あ、イカ焼き食おうぜ!」
屋台通りには、毎日お祭りみたいに屋台が並んでいる。
焼きそばのソースの香りが漂い、子供達のはしゃぐ声と、ジュウジュウと何かを焼いている音が聞こえた。
「あ、ここの美術館、新しい展示入ったってよ!」
「ほんと! ベリアさまの新作もあるかなぁ」
芸術の文化も発展しているのだった。
ベリアは高校の時は美術部、そして生徒会長。
絵を描くこと、デザインが好きなのだった。
「これ、見ててドキドキするな!」
「なになに……『愛しい人達』? これ、マグティアさまとライムさまだよね! 2人と付き合ってるんだっけ!」
「いや、ライムサマとはまだじゃなかったか? アタシもドキドキするような恋がしてぇな!」
「ね! 運命の王子様とか、憧れちゃう……♡」
カフェに入る。
「音楽祭とかもやんねぇかなぁ……アタシのバンドで、お客さんアゲさせてぇ〜!!」
「ね! 私もビビちゃんのバンドの演奏聞きたいな〜」
ビビは趣味でバンドをしていて、ボーカルアンドギターだ。
「ベリアサマ、メンションして呟いたら見てくれるかァ?」
「きっと見てくれるよ!」
呟くアプリことべリッターも活用されている。
「あ、磔様も投稿してる! 今日の紅茶!」
「アタシは紅茶飲めねぇんだよな〜」
「死様のアカウント名の、white moonってなんだろうね?」
「さぁ? 月が好きなんじゃね?」
「ぺち丸さま、かわいい〜♡♡」
「アタシはギオンサマがカッコよくて好きだな!」
「ヘクショーイ!!」
「大丈夫ですか?」
「いや……なんか心が温かくてな!!」
「じゃあなんでクシャミするんですか……」
鬼山でギオンが喜んでいたのだった。
「あ、そろそろこんな時間! 帰ろっか!」
「そうだな! 今日もありがとな、モア!」
「こちらこそ、ありがとう! ビビちゃん!」
ベリアール国民は、今日も平和に生きている。
〜〜
「死さん、磔殿! 我が国の武闘会に出てくれないか!! この通りだ!!」
ガン!!
頭を机にぶつける。
磔はドン引きである。
死は僅かに眉を困らせていた。
「……何がそこまでお前を焚きつけるのだ?」
「……お前達が戦うところを見てみたい!!」
「そういうわけですか……」
「……構わんが、条件がある」
「なんでも言え」
「死人を蘇らせる神を連れてこい」
「!! 死殿、まさか、禁忌を犯すので?」
死人を生き返らせるのは、魔界では禁忌である。
「そちらには魔神マグティア様がいるだろう。魔界のルールはかのお方のご意思だ。ベリアが頼めば了承してくれると思われる」
「……なるほど」
私は頷いた。
「分かった、マグティアに頼んでみる。たまにはワガママを言ってもいいだろう」
「ワガママで禁忌を犯したいなど、とんだジャジャ馬娘ですな」
「磔殿は、なにか条件はあるか?」
「では、報酬として王冠宮に泊まらせていただこうかな」
「もちろんだ。そのつもりでいた」
なんていったって、国賓だからな。
「最上のおもてなしを提供しよう。楽しみにしていてくれ」
「ふ、それは楽しみだ」
「期待せずに待っていましょう」
そんな風に話し合いは終わり、私はマグティアの元にいた。
「マグティア。お願い……いや、私のワガママを聞いてくれないか?」
「!!!」
マグティアはキランキランに目を輝かせ、くねくねしながら私に近づいた。気持ちわる。
「なぁに〜??♡♡ ベリアがワガママ言うなんて珍しいね! なんでも聞いてあげる♡♡」
「では、今度の武闘会にマミリィさんを呼んで欲しい」
「……え? マミリィ? なんであの子? ねぇ、まさかさ……」
威圧がかかる。
「死人、生き返らせようとしてる???」
ゾッ……!
初めて見た、マグティアの恐ろしい顔。
だが、私はめげない!! 全ては死さんと磔殿の戦いを見るため!!!
ソッ……
(秘技!!!!)
むにゅ。
……おっぱい押しつけ。
「っっっっ〜〜〜!?!!」
「なぁ、頼む、マグティア。どうしても、マミリィさんが必要なんだ」
「……どうしても?」
「どうしてもだ」
きゅるきゅる。最大限のぶりっこをしている。
「っ〜〜(可愛すぎる……)……仕方ないなぁ……」
「やったー!!! やった、やった!!」
「はぁ……」
(ま、でも……こうもお願いされちゃったら断れないよね〜笑)
マグティアは、おっぱいを押し付けられた腕をさすりながら、スマホを取り出す。
prrr……
マミリィはワンコールで出た。
「もしもし? マミリィ?」
「もしもぉし! どうしたのぉ、マグティアさまぁ! 貴方からお電話くださるなんて、珍しいじゃなぁい♡」
びっくりするほど甘ったるい声が聞こえてきた。ミルクの飴を溶かしたみたい。
「うん、元気してた? 実はね。ちょっと手伝ってほしいことがあって!」
「なんでもやるわぁ〜♡ 死人でもなんでも生き返らせちゃうっ!」
「そうそう、死人を生き返らせてほしくて。今日じゃなくて、また今度なんだけどさ」
「まっかせてぇ! で、いつやるのぉ?」
「日付は……」
少しの間話して。
「ありがと〜! よし! 約束できたよ〜!」
「ありがとう、マグティア!!」
ギュッ!!
「お前にしか頼めないことだった! 感謝する」
「っはは〜♡ どういたしまして! まぁ、コネは使ってなんぼだからね!」
そうして、武闘会への準備は着々と進み……。
新設された、武闘会会場。
「観客席に、バリアを張って……よし。これで安全だな!」
最後の安全確認を済ませて、明日は武闘会。
「ベリア様! 明日、頑張るね!」
「あぁ、ライム。存分に力を奮ってこい」
安眠のおまじないをかけて、私達は眠りについた。
〜
会場には、各国から観客が集まっている。チケットは完売。満員御礼だ。
「さぁ、始まったぜ〜!! 第1回、ベリアール武闘会! 実況はアタシ、Lime Beautyのスタッフ、ビビと!」
「モアがお届けします!」
ワァー……!
「選手宣誓! ライム様、お願いします!」
「はいっ!」
ライムはゴシックなコートを靡かせて、登壇する。
「選手宣誓! ぼくは、この戦いで優勝したら……ベリア様に告白します!!」
「はぁ!?!?」
オオオオオォォ!!
会場の盛り上がりは凄まじいが……
「まて、聞いてないぞ!?」
「サプライズとのことです!」
「うっそだろ……!」
この大勢の前で!?
「はは! カスライムくん、やるぅ♪」
「恥ずかしすぎる……!」
というか、悪いがライムってそんなに戦闘強いのか? 毒を操るスキルしか持たせてないはずだが……。
「今回のトーナメント表はこれだ!!」
第1回戦 サヌサvs死
第2回戦 ライムvs磔
第3回戦 オペラ劇団&騎士団vsギオン
サヌサは、シャーペンダーの騎士団長、私の先生だ。剣の扱いを教えてもらった。
オペラ劇団&騎士団は、何やら集団での参加らしい。自由だな。ギオンがいいなら良いのだが。まぁ、ギオンは国王だし強いのだろう。
そしてサヌサは絶賛、パニックに陥っていた。
(死!? 死様!? と、私が戦うの!?)
てっきり、スライムの誰かと戦うのだと思っていた。それが、国王!? レベルが違いすぎるだろ!! 圧倒的に負け!!
(でも、死様って、目隠ししてても分かるくらいイケメンだし……役得ということにしておこうかしら)
もはや諦めの境地だった。とりあえず、全力で頑張っておこう……。この武闘会で一番不憫なのは、おそらくサヌサであった。
「第1回戦! サヌサvs死!!」
会場が湧く。
「そんじゃ、スタート!!」
ビビの合図で試合が始まる。
剣を抜く。
タッ!!
素早く走り出し、斬りかかる!
スッ……
しかし、避けられる。死は素早かった。
何度も斬りかかるが、中々当たらない。
(なによっ! 遊ばれてるじゃない!!)
ムカムカして動きが雑になってきた頃。
ガッ!!!
死に顎を掴まれる。
「しまっ……」
死は、目隠しを下ろす。
「私の目を見ろ」
ドクン。
心臓が止まる。
(あ、綺麗な赤い……目……)
バタン。
会場は静まり返った。
誰も、何が起きたのか理解できなかった。
そして数秒後。
「……死様だ」
「今のが……国王」
ぽつ、ぽつと呟かれて。
「し、死の勝ちー!!!」
やっと、アナウンスが入った。
ワアアァァ!!!
死の固有スキルは、ジ・エンド。目を合わせた人が死ぬのだ。
「マミリィさん、よろしくお願いします」
「任せてぇ!」
マミリィがサヌサの元へ飛んでいく。
極秘事項なので、私のバリアで観客から見えないようにした。
「行くわよ〜! アル・レヴァナ・エテルニア・ヴィータ!」
サヌサの体が発光し、息を吹き返した。
「すぅっ……カッコよかった……!!」
起き上がり、開口一番にサヌサはそう言い放った。顔を手で覆いながら。
「……そうか」
死が笑っていた。
「はっ、死様!! この度はありがとうございました!」
「いや、こちらこそ。お前の剣戟は美しかった」
「っ〜〜!! ありがとうございます!!」
おそらく、一番役得だったのも、サヌサだっただろう。
「へぇ〜、死さんってああやって戦うんだな!」
「ちょっと、ベリア、死のこと好きになってないよね!?」
「な、ならん!!」
「ホント!? 目が泳いでるよ!?」
「ならんったら、ならん!!」
第1回戦、死の勝利!!
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