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魔神ベリアの魔界幸福化計画(第1章完結)  作者: 砂之寒天
第1章 魔界編

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第11話 殲滅戦

「なるほど、マモンが戦を仕掛けてくるかも、ということですね」

「そうだ、リンダ。戦の準備を進めてくれ。私の方でも、協力を仰いでおく」

「分かりました!」


 ゴブリンリーダーこと、内政部長リンダに頼んでおく。


 はぁ、本当になんで戦争なんて起きるんだろう。……前のはちょっと楽しかったけど。


「さて……協力。してくれるだろうか……」


 私は─────────死さんと、磔殿の所に向かっていた。


「して、ワタクシ達2人を呼び出すということは、何か起きるのですね? まぁ、想像はついていますが……」

「聞こう」


 私は息を吐いた。


「マモンが私に戦争を仕掛けてくる可能性が高い」

「ま、そうでしょうな」

「ベリアールほど魅力的な国が現れれば、無理はないな」

「それで……協力を仰げないだろうか」


 2人は顔を見合わせる。


「……正直に言うと、可能だ。が……」

「貴方の国力を試してからでも遅くないと思いますが?」

「……そうだよな。初めから頼るのは、良くないよな……」


 はー……そうだよなぁ。


「まぁ、期待はしていい。が、お前が本当にピンチの時だけだ」

「同じくです。天から見ておりますよ」

「あぁ。こちらとしても全力を尽くす。もしその時が来たら、よろしく頼む」


 私は頭を下げた。


「ふむ。承知しました」

「あぁ」

「……というか、ベリアールってそもそもどこにあるのです?」

「あっ……あ!!」

「はい? どこにあるのですか?」

「異空間だ!!」

「……それ、籠城簡単ですよね? ワタクシ達が出るまでもないのでは?」

「たしかに!! 待てよ、そうだよな……そもそもあいつらが攻めてこれる場所は、森の中の扉だけに限られる。そこだけ守れば……勝てる!」

「良かったですね。はぁ、若輩者は早とちりがすぎる」

「仰る通りだ。すまなかったな。だが、もしもがあったら、その時はまた頼む。では、失礼する」


 私はルンルン気分で街に帰った。


 そしてすぐ、リンダから報告が入る。


「報告します! マモン軍が空から進軍しているのを確認しました!」

「大丈夫だ。私達の領地は異空間。森の扉を封鎖しておく」

「はっ!」


 だが、私だけは戦いに出ておこう。なぜなら、うるさい羽虫を叩き潰すのも悪くない気分だからだ。


「マグティアも行くか?」

「ん? 面白いもん見れそうだねぇ〜! 行くいく!」


 異空間から出ると、少し遠くの北の空に、黒い雲が。


「……いや、あれが強欲族(アヴァリス)の軍か」


 チラリとマグティアを見る。


「ん?」


 優しい顔で見ているが。今からすることを分かっているのだろうか。


「好きにやっちゃいな!」


 うん。では……開戦だ!!



 とりあえず、天圧執行(ヘブンズ・プレス)


 グチャア!!


「……雲から血の雨が降っている」


 もっと、もっと近くに行こう。


「近づくぞ、マグティア!」

「りょーかい!」


 近づくと、マモンが先頭にいた。


「おま、オマエ!! ワシの配下に何をした!!?」

「なに、羽虫を叩き殺しただけだ」

「許さん、許さんぞ!! 魔欲弾(グリードバレット)!!」


 なにやら紫の塊が高速で投げられたが、ひょいと避ける。


 そしてついでに、天圧執行(ヘブンズ・プレス)を応用して、遠隔ビンタ。


 バチィンッ!!!


「ぐああぁっ!!」


 マモンは顔を顰めて吹っ飛ぶ。

 あ、楽しいかも。


 バチン、バチン、バチン!!


 私は往復ビンタをしかけた。


「ぐぅ、ぐあああっ!! やめろ!!」


「はっはは、お手玉みたい!」


 握り潰して、ポンポン吹き飛ばす。後ろの軍団もついでに、遊んであげる。


「あはは!」


 遊ぶ、遊ぶ。あれは生きたおもちゃだ。


「っ、いいねぇ〜♡」


 私の無邪気な顔をみたマグティアが、惚れ直していたのだった。


「ほら、マモン。やり返さないと、全滅だよ。……マモン?」


 喋らない。近づいてみた。


「……死んだ? ねぇマグティア、これ死んでる?」

「……うん、死んでるね!」

「そっか。ま、楽しかったからいいや!」


 出オチ感半端ない悪魔だったな。


「……一撃、だと」

「有り得ません……強欲族(アヴァリス)の王が……」


 天界で、死と磔がドン引きしていた。


 すると、空から天使が降ってきた。


「死様と、磔様がお呼びです」

「今行く」


 天使について行って、空まで上る。


 上気した頬に、冷たい風が心地よかった。


「ベリア殿!! あの規格外な力はなんです!?」

「私の固有スキルだ」

「なんというスキル名だ?」

創像(イメージクリエイト)

「っ……まさか!!」


 2人が跪いた。


「ベリア殿……いや、ベリア様は……魔神であらせられるのですか!?」

「非礼を詫びる」

「えっ……あぁ、そうだが……やめろ、そんなに畏まるな」

「いえ、魔神といえば、直轄ではなくても、我々天使の上司ですから」

「そうなのか? だが、とにかく立ってくれ。そういうのは苦手なんだ」

「……魔神なのにですか? まさか、神嗣(しんし)であらせられる? 上位神はどこに?」

「あ、ボク!笑 魔神マグティアだよ!」

「やはり!! 天界の書物にありましたからな。創像(イメージクリエイト)は、この世界を創造した魔神の固有スキルだと……!」

「お目にかかれて光栄だ」

「いやー、ほんと、畏まらなくていいよ? ベリアは下位神だし笑」

「そういえども、マグティア様の神嗣(しんし)ですから……」

「まぁ、そうなるか〜。いやでもさ」


 マグティアは嫌な笑みを浮かべた。


「つまんないじゃん、そういうの」

「っ!!」


 威圧(プレッシャー)が使われている。空気が重たい。


「ね、普通に過ごそ?」


 その笑みには、有無を言わさない圧があった。


「……仕方ありませんね」

「……お望みとあらば」


「あ、そうそう。マモンだけど、ベリアが殺したから。強欲族(アヴァリス)の領地、植民地としてもらうね!」

「なんと、世界ができた時からいた強欲族(アヴァリス)の国が滅びたか……」

「……まぁ、そもそも固有スキルを使う隙すらなかったからな」


「アイツの固有スキルってなんだったんだ?」

強欲族(アヴァリス)の固有スキルは、強欲(グリード)。その時一番欲しいものを手に入れるまで止まれなくする魔法だ」

「……怖いが、かかってみたくもあるな」

「自分が欲をさらけ出す姿を見せたいと?笑 もの好きですな」

「そうじゃない! 私の欲しいものって、何だろうと思うんだ」

「え〜、1番はボクでしょ? 2番目がカスライムくん!」

「お前たちに順位をつけた覚えはない! だがたしかに、お前達を抱きしめに行く可能性は高いな」


 マグティアは笑う。


(抱きしめるで済んだらいいけどね〜笑 だってようは、も酔ってる時と同じでしょ?)


「……全く、下品ですな」


 磔が蔑んだ目で私を見ていた。


王座評議会(ラウンドテーブル)が終わったばかりなのに、もう話すことが増えてしまったな」

「まったくです。少しは落ち着けないのですか?」

「まぁ、そういうな磔。子供が元気なのは良いことだ」

「おい、私は20歳だぞ?」

「……だから、子供だろう?」

「人間では大人だ」

「……そうか。すまない」


 死さんが複雑そうな顔をしていた。


 ふと、死さんに頭を撫でられる。


「……なんだ?」

「いや……娘のように見えてきてな」


 なんとなく、優しい風が吹いた。


「ちょっと〜!! お触り禁止!! ボクを通しなさい!!」

「あぁ、すまない」


 マグティアがプンスコ怒っている。


「そうだ。植民地にするのだし、強欲族(アヴァリス)の領地を見に行かないか?」

「……悪魔界は危険だぞ。私達もついていこう」

「はい? ワタクシは行きませんよ」

「そういうな。私では何かあった時にやりすぎる。お前がいた方が双方安全だ」

「まったく……仕方ありませんね」


 こうして話してみると、意外と磔殿も優しいんだな。


「遠く北の方に、悪魔界はある。ペガサスで行こう」

「ペガサス! 初めて乗るな」


 ということで、ペガサスに乗って悪魔界へと向かった。


 ちなみにリンダも連れてきた。


 ペガサスは、意外と乗り心地が良い。


「ここが強欲族(アヴァリス)の国、ヴァーノミンだ」

「おぉ……」


 紫色の空と地面。見たこともないグロテスクな植物が生えている。


 街中に入ると、悪魔達がジロジロと見てくる。


 治安はあまり良くなさそうだな。人々の目が荒んで、ギラギラしている。


 ドンッ


「いたっ」


 タッタッタッ……


 ぶつかった人が走って去っていった。


「!! コラ、待ちなさい!!」


 磔と死が走り出し、その人を取り押さえる。


「どうした?!」


 その人の手元を見ると……私の財布が。


「やはり、スリでしたね。まったく、ここは治安が悪すぎます。ベリア殿、貴方も不用心ですよ。気をつけなさい!」

「危なかったな」

「すまない、ありがとう」


 治安が悪いとこういうことも起きるんだな。


「改革が大変そうだ」


 リンダ達にも頑張ってもらわないといけない。


 城へ向かった。


「ベリアだ。戦争の後処理について話に来た」


 通してもらい、強欲族(アヴァリス)のNo.2、コヴェトと話す。


「細かいことは植民部に決めてもらう。そちらの指示を待つように」

「かしこまりました」


 リザードマンを植民地化する時、植民部を新設した。


「あと、悪いがいくらかこちらの通貨をくれるか? 気になることがあってな」


 ということで、お金をもらって街へ戻る。コヴェトも連れてきた。


 ドン!


「うわっ」

「きゃっ!」


 そこに、一人の少女がぶつかってきた。


「た、たすけて……!」

「どうした?」


 その子の腕には、手錠がかかっていた。

 目線を合わせて屈む。


「わたしっ、逃げてきてっ……」


 涙を滲ませている。


「あっ! いた!! 逃げるな!!」

「この子が奴隷か」


 気になること。それは、奴隷である。


「や〜、すみませんねお姉さん! そいつウチの奴隷なんすよ〜」


 少女は私の袖をギュッと握る。


「……買い取ろう」

「えっ! ホントですか!! ぃやー、お買上げありがとうございます!! こいつ、文字とか教えても中々覚えてくれなくて、困ってたんですよ!」

「へぇ〜、優し〜」

「こら、ベリア殿。短絡的ですよ」

「大丈夫だ。考えはある」


「他の奴隷は?」

「見ていかれますか! どうぞどうぞ、こちらです」


 布切れがぶら下がった、簡易的な入口。


 中は薄汚く、少し臭う。


 檻の中に閉じ込められて、怖がっている子供達。10人か。


「……奴隷の売買は禁止にする。リンダ」

「半年ください。植民部と連携し、奴隷制度を撤廃します」

「よろしい」


 優秀な部下だ。


「思い切ったな」

「どのようにするのです?」

「とりあえず、こちらに新たに寮と学校を建てて、奴隷には教育を施す。治安は、ウチの法務部に相談して、三権を整える」

「ほう、素晴らしいことですね」


 リンダは話を聞きながら、各方面に連絡を入れていた。


「店主、ここの奴隷、全員買い取る」

「ぜ、全員……!? ありがとうございます! こりゃ、新しい奴隷を仕入れなきゃいけねぇな……」

「店主。以後奴隷の売買は禁止だ。代わりに、先生にならないか?」

「せ、先生? アッシが?……字くらいは読めますし、売り買いの帳簿も付けてきました。子どもの面倒も見たことはありますが……先生なんて柄じゃ……」

「柄かどうかは私が決める。子ども達は教育を必要としている。お前には、その力がある」

「……へへ。ま、王様にそう言われちゃ断れませんや!」

「決まりだな。リンダ、奴隷商は教職員や寮の管理人にする」

「かしこまりました!」


 とりあえず、奴隷達は扉でベリアールに送る。


「コヴェト、ヴァーノミンの奴隷は何人くらいいるんだ?」

「1万人ほどでございます」


 となると、それらが収容できるサイズの寮が必要か。


 並列思考で寮を脳内に建設する。


「まぁ、領地の視察はざっとこんなもんか」

「お疲れ様です。お見送りいたします」

「ありがとう、コヴェト。磔殿、死さんもありがとう。助かった」

「構わない」

「ふん、若輩者が変なことをしては困りますからな」

「ちょっと、ボクは〜!?」

「あぁ。マグティアも、着いてきてくれてありがとう」


 私達はベリアールに戻った。


 急ぎ会議を開き、ヴァーノミンについての方針を話す。


「以上だ。よろしく頼む」

「はっ!」


 その後、私は元奴隷達の様子を見に行った。


 私にぶつかった少女に話しかける。


「君、名前は?」

「カシュー……」

「カシュー。今日からお前達は、綺麗な家に住んで、美味しいご飯を食べて、質の高い教育を受けられる。安心して生きられるからな」

「!!」


 パァァ、と明るい笑顔。


「ありがとう、お姉ちゃん!」

「ベリアだ」

「ありがとう、ベリアお姉ちゃん!!」


 子供達の笑顔を見ると、改革のやりがいがあるというものだった。

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