第11話 殲滅戦
「なるほど、マモンが戦を仕掛けてくるかも、ということですね」
「そうだ、リンダ。戦の準備を進めてくれ。私の方でも、協力を仰いでおく」
「分かりました!」
ゴブリンリーダーこと、内政部長リンダに頼んでおく。
はぁ、本当になんで戦争なんて起きるんだろう。……前のはちょっと楽しかったけど。
「さて……協力。してくれるだろうか……」
私は─────────死さんと、磔殿の所に向かっていた。
「して、ワタクシ達2人を呼び出すということは、何か起きるのですね? まぁ、想像はついていますが……」
「聞こう」
私は息を吐いた。
「マモンが私に戦争を仕掛けてくる可能性が高い」
「ま、そうでしょうな」
「ベリアールほど魅力的な国が現れれば、無理はないな」
「それで……協力を仰げないだろうか」
2人は顔を見合わせる。
「……正直に言うと、可能だ。が……」
「貴方の国力を試してからでも遅くないと思いますが?」
「……そうだよな。初めから頼るのは、良くないよな……」
はー……そうだよなぁ。
「まぁ、期待はしていい。が、お前が本当にピンチの時だけだ」
「同じくです。天から見ておりますよ」
「あぁ。こちらとしても全力を尽くす。もしその時が来たら、よろしく頼む」
私は頭を下げた。
「ふむ。承知しました」
「あぁ」
「……というか、ベリアールってそもそもどこにあるのです?」
「あっ……あ!!」
「はい? どこにあるのですか?」
「異空間だ!!」
「……それ、籠城簡単ですよね? ワタクシ達が出るまでもないのでは?」
「たしかに!! 待てよ、そうだよな……そもそもあいつらが攻めてこれる場所は、森の中の扉だけに限られる。そこだけ守れば……勝てる!」
「良かったですね。はぁ、若輩者は早とちりがすぎる」
「仰る通りだ。すまなかったな。だが、もしもがあったら、その時はまた頼む。では、失礼する」
私はルンルン気分で街に帰った。
そしてすぐ、リンダから報告が入る。
「報告します! マモン軍が空から進軍しているのを確認しました!」
「大丈夫だ。私達の領地は異空間。森の扉を封鎖しておく」
「はっ!」
だが、私だけは戦いに出ておこう。なぜなら、うるさい羽虫を叩き潰すのも悪くない気分だからだ。
「マグティアも行くか?」
「ん? 面白いもん見れそうだねぇ〜! 行くいく!」
異空間から出ると、少し遠くの北の空に、黒い雲が。
「……いや、あれが強欲族の軍か」
チラリとマグティアを見る。
「ん?」
優しい顔で見ているが。今からすることを分かっているのだろうか。
「好きにやっちゃいな!」
うん。では……開戦だ!!
〜
とりあえず、天圧執行。
グチャア!!
「……雲から血の雨が降っている」
もっと、もっと近くに行こう。
「近づくぞ、マグティア!」
「りょーかい!」
近づくと、マモンが先頭にいた。
「おま、オマエ!! ワシの配下に何をした!!?」
「なに、羽虫を叩き殺しただけだ」
「許さん、許さんぞ!! 魔欲弾!!」
なにやら紫の塊が高速で投げられたが、ひょいと避ける。
そしてついでに、天圧執行を応用して、遠隔ビンタ。
バチィンッ!!!
「ぐああぁっ!!」
マモンは顔を顰めて吹っ飛ぶ。
あ、楽しいかも。
バチン、バチン、バチン!!
私は往復ビンタをしかけた。
「ぐぅ、ぐあああっ!! やめろ!!」
「はっはは、お手玉みたい!」
握り潰して、ポンポン吹き飛ばす。後ろの軍団もついでに、遊んであげる。
「あはは!」
遊ぶ、遊ぶ。あれは生きたおもちゃだ。
「っ、いいねぇ〜♡」
私の無邪気な顔をみたマグティアが、惚れ直していたのだった。
「ほら、マモン。やり返さないと、全滅だよ。……マモン?」
喋らない。近づいてみた。
「……死んだ? ねぇマグティア、これ死んでる?」
「……うん、死んでるね!」
「そっか。ま、楽しかったからいいや!」
出オチ感半端ない悪魔だったな。
「……一撃、だと」
「有り得ません……強欲族の王が……」
天界で、死と磔がドン引きしていた。
すると、空から天使が降ってきた。
「死様と、磔様がお呼びです」
「今行く」
天使について行って、空まで上る。
上気した頬に、冷たい風が心地よかった。
「ベリア殿!! あの規格外な力はなんです!?」
「私の固有スキルだ」
「なんというスキル名だ?」
「創像」
「っ……まさか!!」
2人が跪いた。
「ベリア殿……いや、ベリア様は……魔神であらせられるのですか!?」
「非礼を詫びる」
「えっ……あぁ、そうだが……やめろ、そんなに畏まるな」
「いえ、魔神といえば、直轄ではなくても、我々天使の上司ですから」
「そうなのか? だが、とにかく立ってくれ。そういうのは苦手なんだ」
「……魔神なのにですか? まさか、神嗣であらせられる? 上位神はどこに?」
「あ、ボク!笑 魔神マグティアだよ!」
「やはり!! 天界の書物にありましたからな。創像は、この世界を創造した魔神の固有スキルだと……!」
「お目にかかれて光栄だ」
「いやー、ほんと、畏まらなくていいよ? ベリアは下位神だし笑」
「そういえども、マグティア様の神嗣ですから……」
「まぁ、そうなるか〜。いやでもさ」
マグティアは嫌な笑みを浮かべた。
「つまんないじゃん、そういうの」
「っ!!」
威圧が使われている。空気が重たい。
「ね、普通に過ごそ?」
その笑みには、有無を言わさない圧があった。
「……仕方ありませんね」
「……お望みとあらば」
「あ、そうそう。マモンだけど、ベリアが殺したから。強欲族の領地、植民地としてもらうね!」
「なんと、世界ができた時からいた強欲族の国が滅びたか……」
「……まぁ、そもそも固有スキルを使う隙すらなかったからな」
「アイツの固有スキルってなんだったんだ?」
「強欲族の固有スキルは、強欲。その時一番欲しいものを手に入れるまで止まれなくする魔法だ」
「……怖いが、かかってみたくもあるな」
「自分が欲をさらけ出す姿を見せたいと?笑 もの好きですな」
「そうじゃない! 私の欲しいものって、何だろうと思うんだ」
「え〜、1番はボクでしょ? 2番目がカスライムくん!」
「お前たちに順位をつけた覚えはない! だがたしかに、お前達を抱きしめに行く可能性は高いな」
マグティアは笑う。
(抱きしめるで済んだらいいけどね〜笑 だってようは、も酔ってる時と同じでしょ?)
「……全く、下品ですな」
磔が蔑んだ目で私を見ていた。
「王座評議会が終わったばかりなのに、もう話すことが増えてしまったな」
「まったくです。少しは落ち着けないのですか?」
「まぁ、そういうな磔。子供が元気なのは良いことだ」
「おい、私は20歳だぞ?」
「……だから、子供だろう?」
「人間では大人だ」
「……そうか。すまない」
死さんが複雑そうな顔をしていた。
ふと、死さんに頭を撫でられる。
「……なんだ?」
「いや……娘のように見えてきてな」
なんとなく、優しい風が吹いた。
「ちょっと〜!! お触り禁止!! ボクを通しなさい!!」
「あぁ、すまない」
マグティアがプンスコ怒っている。
「そうだ。植民地にするのだし、強欲族の領地を見に行かないか?」
「……悪魔界は危険だぞ。私達もついていこう」
「はい? ワタクシは行きませんよ」
「そういうな。私では何かあった時にやりすぎる。お前がいた方が双方安全だ」
「まったく……仕方ありませんね」
こうして話してみると、意外と磔殿も優しいんだな。
「遠く北の方に、悪魔界はある。ペガサスで行こう」
「ペガサス! 初めて乗るな」
ということで、ペガサスに乗って悪魔界へと向かった。
ちなみにリンダも連れてきた。
ペガサスは、意外と乗り心地が良い。
「ここが強欲族の国、ヴァーノミンだ」
「おぉ……」
紫色の空と地面。見たこともないグロテスクな植物が生えている。
街中に入ると、悪魔達がジロジロと見てくる。
治安はあまり良くなさそうだな。人々の目が荒んで、ギラギラしている。
ドンッ
「いたっ」
タッタッタッ……
ぶつかった人が走って去っていった。
「!! コラ、待ちなさい!!」
磔と死が走り出し、その人を取り押さえる。
「どうした?!」
その人の手元を見ると……私の財布が。
「やはり、スリでしたね。まったく、ここは治安が悪すぎます。ベリア殿、貴方も不用心ですよ。気をつけなさい!」
「危なかったな」
「すまない、ありがとう」
治安が悪いとこういうことも起きるんだな。
「改革が大変そうだ」
リンダ達にも頑張ってもらわないといけない。
城へ向かった。
「ベリアだ。戦争の後処理について話に来た」
通してもらい、強欲族のNo.2、コヴェトと話す。
「細かいことは植民部に決めてもらう。そちらの指示を待つように」
「かしこまりました」
リザードマンを植民地化する時、植民部を新設した。
「あと、悪いがいくらかこちらの通貨をくれるか? 気になることがあってな」
ということで、お金をもらって街へ戻る。コヴェトも連れてきた。
ドン!
「うわっ」
「きゃっ!」
そこに、一人の少女がぶつかってきた。
「た、たすけて……!」
「どうした?」
その子の腕には、手錠がかかっていた。
目線を合わせて屈む。
「わたしっ、逃げてきてっ……」
涙を滲ませている。
「あっ! いた!! 逃げるな!!」
「この子が奴隷か」
気になること。それは、奴隷である。
「や〜、すみませんねお姉さん! そいつウチの奴隷なんすよ〜」
少女は私の袖をギュッと握る。
「……買い取ろう」
「えっ! ホントですか!! ぃやー、お買上げありがとうございます!! こいつ、文字とか教えても中々覚えてくれなくて、困ってたんですよ!」
「へぇ〜、優し〜」
「こら、ベリア殿。短絡的ですよ」
「大丈夫だ。考えはある」
「他の奴隷は?」
「見ていかれますか! どうぞどうぞ、こちらです」
布切れがぶら下がった、簡易的な入口。
中は薄汚く、少し臭う。
檻の中に閉じ込められて、怖がっている子供達。10人か。
「……奴隷の売買は禁止にする。リンダ」
「半年ください。植民部と連携し、奴隷制度を撤廃します」
「よろしい」
優秀な部下だ。
「思い切ったな」
「どのようにするのです?」
「とりあえず、こちらに新たに寮と学校を建てて、奴隷には教育を施す。治安は、ウチの法務部に相談して、三権を整える」
「ほう、素晴らしいことですね」
リンダは話を聞きながら、各方面に連絡を入れていた。
「店主、ここの奴隷、全員買い取る」
「ぜ、全員……!? ありがとうございます! こりゃ、新しい奴隷を仕入れなきゃいけねぇな……」
「店主。以後奴隷の売買は禁止だ。代わりに、先生にならないか?」
「せ、先生? アッシが?……字くらいは読めますし、売り買いの帳簿も付けてきました。子どもの面倒も見たことはありますが……先生なんて柄じゃ……」
「柄かどうかは私が決める。子ども達は教育を必要としている。お前には、その力がある」
「……へへ。ま、王様にそう言われちゃ断れませんや!」
「決まりだな。リンダ、奴隷商は教職員や寮の管理人にする」
「かしこまりました!」
とりあえず、奴隷達は扉でベリアールに送る。
「コヴェト、ヴァーノミンの奴隷は何人くらいいるんだ?」
「1万人ほどでございます」
となると、それらが収容できるサイズの寮が必要か。
並列思考で寮を脳内に建設する。
「まぁ、領地の視察はざっとこんなもんか」
「お疲れ様です。お見送りいたします」
「ありがとう、コヴェト。磔殿、死さんもありがとう。助かった」
「構わない」
「ふん、若輩者が変なことをしては困りますからな」
「ちょっと、ボクは〜!?」
「あぁ。マグティアも、着いてきてくれてありがとう」
私達はベリアールに戻った。
急ぎ会議を開き、ヴァーノミンについての方針を話す。
「以上だ。よろしく頼む」
「はっ!」
その後、私は元奴隷達の様子を見に行った。
私にぶつかった少女に話しかける。
「君、名前は?」
「カシュー……」
「カシュー。今日からお前達は、綺麗な家に住んで、美味しいご飯を食べて、質の高い教育を受けられる。安心して生きられるからな」
「!!」
パァァ、と明るい笑顔。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「ベリアだ」
「ありがとう、ベリアお姉ちゃん!!」
子供達の笑顔を見ると、改革のやりがいがあるというものだった。
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