第10話 ギオンとベリアール
「では、後は恒例のお茶会だ。好きに話そう」
なにやらプレートが出てきた。
シャーペンダー産のフルーツか。
私はそっと手を挙げた。
「天使の2人に聞きたいのだが。その……磔というのと、死というのは、本名なのか?」
・・・。
「……異名だ」
「はぁ……これだから若輩者は」
「早速それ聞いちゃう!?笑笑 流石ベリアだねぇ〜笑笑」
「……」
空気がおかしい。もしや、私は変なことを聞いたか。たが、気になるだろう!
「本名は言えないのか?」
「家族にしか言えないのだ」
「そうなのか」
「……皆さんの国はどんな国なんだ?」
「はー……来月からの王座評議会で各国を回るのですから、時期に分かりますよ」
「その時の楽しみにしておいたらどうだ」
「そうか、磔、死さん」
「なぜワタクシだけ呼び捨てなのですかな? 目上の人は敬うべきでしょう!」
「……すまない。どうも呼び慣れなくてな。磔さんでいいか?」
初っ端から喧嘩売ってきた癖に、という言葉は飲み込む。敵を増やして良いことはない。
「ふん……磔殿くらいは言えないのかね」
「では、磔殿」
「ふむ、及第点です」
……。何となく、目上の人?に褒められるとちょっと嬉しくなるのは私だけだろうか。複雑な気持ちである。
「ねぇ〜ミーナちゃん、ライムくぅん♡ セクシーな服には興味あるかしらぁん?」
「あります!!!」
「あら、ライムくん元気♡ ミーナちゃんはぁ?」
「私も気になります〜♡」
「なら……2人とも、私の国、エロージアに来るといいわぁ♡ 一緒にお洋服作りましょぉ〜?」
「その時は私も一緒に行ってもいいか?」
「もちろんよぉ! ベリアちゃんもいらっしゃぁい!」
「ベリア様、よろしいですか?♡」
「いいぞ。技術提供といこうじゃないか。うちには服用ポン蔵もある。細かくイメージした服をポンと吐き出してくれる機械だ」
「あら〜! なにそれぇ! 服飾界の革命じゃなぁい! ぜひウチにも貸してちょうだぁい!」
「構わない。だが、模倣が簡単になるからな。デザインの権利……著作権などについても話しておこう」
「あら、賢い子〜♡ そういう子、好きよぉ♡」
「ライムくんのカフェは、どこにあるんだ!?」
「Lime Beautyは、火のスライム街お店通りの一丁目の1だよ〜」
ライムは名刺にキスをして渡す。
「っぐふ……」
ギオンは鼻血を出した。
ライムがテコテコとこちらに走ってくる。
「ぼくのお色気が通じる相手ができて嬉しい!♡」
「そうか。良かったな」
頭を撫でておく。……別に私にも通じてるけどね。絶対言わないけど。
「連絡先交換しませんこと!?」
「ごめぇん、そういうのはできないかな〜笑」
「そんな……!」
ウァルナ嬢はマグティアにアピール中か……。
(私は国際関係安定のために、我慢するべきなのか……?それとも正直に嫌だと言っていいのだろうか……)
こんなこと初めてなので、少し悩んでしまう。
とりあえず、今はマグティアが断っているから放置しておこう。
「ねぇ、ベリア様」
「どうした? ライム」
「マグティア様と付き合ったの?」
ギクッ!!!
王座評議会の全員の視線が集まる。
……ついに言われてしまったか。
「……あぁ、付き合った」
「……ぼくとは?」
「……告白してくれるなら」
「じゃあ、また準備する!」
「あぁ」
「ま、まてまてまてー!!! ライムくんはベリアとそういう関係なのか!?!」
「ギオン。悪いがそうだ」
「そんな……」
ショックを受けているようだ。無理もない。
「……だがいいだろう!!! なぜなら、仕事とプライベートは別だからな!! ガーッハッハ!!」
こいつ、なんとなく分かっていたが良い奴だな。
「この後、Lime Beautyに来店してもいいか!!」
「嬉しい〜! ぜひ来てよ!」
「構わない。歓迎しよう」
スマホでゴブリンリーダーのリンダに連絡しておく。ギオンを歓迎する準備をしておくように。
「ギオンのその服は、和服か?」
「オヌシの所ではそういうのか? これは我が国、鬼山産の服だ。左胸のマークは、鬼山魂を表している」
「鬼山魂?」
「守るもののために、戦うことを決して諦めん、という精神だ!」
「それは……素晴らしい精神だな。私も大切にしよう」
「ふむ、ではワレとオヌシは、魂の友ということだな!」
「……ふ、面白い。魂の友か」
どちらともなく、拳を差し出していた。
コツン。
「よろしく頼む、魂の友」
「おう! ガッハッハ」
そして王座評議会は解散となり、ギオンはベリアールへとやってきた。
〜
「ここがベリアール! 素晴らしい街並みだ!」
「最近、馬車も通し始めた。Lime Beautyまでは少しあるからな、乗っていくか?」
「頼もうではないか!!」
やろうと思えば車も作れる。デザインで言えば、ほぼ馬車と同じにするだろう。映えるから。
でも、どうせなら馬車の方がカッコイイかなと思って。
「ほぅ〜、栄えているのだな!」
「あぁ。今度鬼山も見に行かせてくれ」
「構わん!! ガハハ」
Lime Beautyに着いた。
ちなみにマグティアは家に帰った。
ライムがぴょこんと降りて、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ! ギオン様! Lime Beauty一同、歓迎するよ!」
「うおぉぉぉ!! これは素晴らしい!! 美男美女がいるな!!」
大興奮だ。うちの子が褒められると嬉しいね。
「今日のシフトは、モアとビビか」
「あ! ベリアサマ! いらっしゃいだぜ」
「ビビ。繁盛しているな」
「ギオン。このロックパンクっぽい雷スライムは、ビビだ」
「うおおぉ!!! ビビちゃん!!」
「ギオン様だったか? 来てくれてありがとな!!」
ジャキーン! とウインクする。
「ベリアさま! お席にどうぞ!」
「ありがとう、モア。この子は土スライムのモアだ」
「うおおぉ!! モアちゃん!!」
「ギオンさま、来てくれてありがとう! 楽しんでいってね!」
席に着く。
「のう、ちぇき、というのはなんだ!」
「写真を撮れるんだよ〜! これがサンプル!」
「素晴らしい!! 3枚ずつ撮っていこう!!」
「オススメはどれだ?」
「ぼくのオススメは、ライムアフタヌーンティー!」
「ぬ、ではそれをいただこう!」
「はーい!」
プレートが並べられる。
ドン! ドンドン! ドドドン!!
「なんか……前より増えてないか?」
「な、中々多いな!!」
「Lime Beauty、歓迎の気持ちを込めて、沢山作ったよ! いっぱい食べてね!」
「そうか! 感謝する!!」
だが、ギオンの冷や汗を見逃さない。
目配せし合う。
「魂の友……!」
「死なば諸共、だな。食べるぞ、ギオン!!」
「ソイヤー!」
〜
「うっぷ……」
「ガハ、ハ……」
ライムが無邪気な目で見つめてくる。
「いっぱい食べれた? おかわりもあるよ!」
「「大丈夫だ!!」」
これ以上は食べられない。
パシャリ!
「素晴らしいな、チェキというのは!」
「そうだろう。そうだ、スマホにもついているが、カメラも輸出したいな。また商人と話しておこう」
「ここはワレが支払おう!」
「いや、いい。そもそも紙幣の交換がまだ済んでないだろう? 私の奢りだ」
「ぬ!! そうだったな。ガハハ! 恩に着る!!」
「この後はどうする? 泊まっていくか? 準備は済んでいるが」
「いいのか!! ぜひ泊まりたい!!」
「準備はできているからな。ホテルに案内しよう」
一番サービスが良いホテル。その名も、王冠宮。私が王冠を作った記念に作ったホテルだ。
「ここだ!」
「うおおおおっ!! これは!! 素晴らしい!!」
「奥の部屋では、王冠のレプリカも見れるぞ」
「それは素敵だ!! ガハハ、随分素晴らしい文化を持っているな!」
「お褒めに預かり光栄だ」
「なにか土産でも持ってくればよかったな!」
「いい、気にするな。代わりに、今度私も鬼山に泊まらせてくれ」
「もちろんだ! 決定だな! ガハハ!」
夕飯はビュッフェ。
「む、この和食コーナーとやら、ワレの国の料理と似ているな!」
「本当か。じゃあ、日本と鬼山は文化が似ているんだな」
「ニホン?」
「あぁ。……私の故郷だ。私は魔神なのだが……」
「ま、魔神〜〜!?!?」
ガチャーン!!
ありゃ、ギオンがひっくり返ってしまった。
「と言っても、下位神なんだがな」
「謙遜するな! こんな立派な国を作っているのだから、実力は中位神以上あるだろう!」
「そうか。ありがとう。で、私は神嗣というやつらしいのだが、つまり、魔神マグティアに下位神にされた人間なんだ」
「なるほど! それでオヌシの故郷が日本と言うのだな」
「ご名答」
「して……魔神マグティアって、まさか王座評議会で後ろにいた者か? まさか、あの魔神マグティアか?」
「おそらく、その魔神マグティアだろうな」
「ぎょえ〜〜〜!!!」
ガシャーン!!
またひっくり返ってしまった。
こいつ、反応がいいから面白いな。
「ワレは、とんでもない者と魂の友になってしまったようだな……」
「気を張るな。私だって、王座評議会の新入りだからな。古参と仲良くなれるのは嬉しい」
「ガッハッハ! してどうだ、他の国王の印象は!」
「死さんは優しそうだな。磔殿は、姑っぽい、嫌な奴だと思った」
「ガッハッハ! そうだな、死殿は優しいぞ。磔殿は、別に嫌味でオヌシを虐めてるわけじゃないのだ。天使は優しいからな」
「本当か? すごくネチネチしてたぞ」
「ぬ、そのうち分かるわ。して、他は?」
「ぺち丸は頭が悪そうだったな。まぁ、可愛いから許されるんだろう」
「ふむ、アイツはやるときはやる男だと思っているがな!」
「まぁ、そうじゃないと国王なんて務まらないだろ。ウァルナ嬢は……マグティアを取ろうとしていた。困る」
ガタンッ!!!
「ギオン、どうした? 席を立って」
「な、な、ウァルナ嬢が!?!?」
「おい、大声を出すな……」
「だって、一大事だぞそれは!? だって人魚は────────恋が叶わないと死ぬのだ!!」
「はぁ!?!?」
流石に立ち上がった。
「おい、これってヤバいんじゃないのか、魂の友」
「あぁ、ヤバい、ヤバいぞ魂の友」
しかし、目の前の美味しそうなご飯を見て。
……2人、席に座る。
「……まぁ、今はいいや。今日はお前が来てるんだから」
「そうだな。で、悪魔達はどうだったんだ!」
「リリスは優しそうだったが……マモンがな。私を見る目が怖かった」
「あぁ、マモン殿は……中々手強いぞ。なにせ強欲族だからな。昔から戦ばかりしていて、何でも手に入れないと気が済まないのだ」
「もしや、私の所に戦争をしかけにくるんだろうか」
「……有り得なくないな!!」
「ウワーッ、最悪だ……なんで良い人ばかりじゃないんだ!」
項垂れる。
「外交とはそういうものよ。ワレらも、なんだかんだマモン相手に数百年やっているのだし」
「数百年!? ギオン、お前何歳だ?」
「543歳だ!」
「そうか……私は20歳だ」
「ガッハッハ! まだまだ子供だな! じゃあ、鬼山焼酎も飲めなんだ!」
「鬼山焼酎ってなんだ? 私は酒が全く飲めないぞ。……いや、もしかして今日は飲めるか?」
マグティアがいないから。アイツといると、いつも状態異常無効化を取られて酔ってしまうのだ。
「鬼山焼酎というのは、鬼山で作っている焼酎だ! 火山のマグマで蒸留した特段濃いお酒を使っているのだ。鬼は100歳から飲めるのだが、特別にオヌシにも用意してやろうか?」
「……マグティアがいない時に、コッソリ飲もう!」
「だな!! して、今日は飲むか?」
「……飲む!」
ワインを持ってきて貰った。
「乾杯!」
慎重に、無効化を緩くする。
ゴクリ。
一口飲む。
「……美味しい!」
「おぉ! 左様か!!」
やっぱり、マグティアのせいだったんだ。なんでいつも酔わせてくるのか。
(どうせ、「かわいいから〜笑」とか言うんだろうな)
なんとなく、マグティアのことも分かってきたものだ。
「ぬ、恋しておるな! オヌシ!!」
「はっ!? な、何の話だ!!」
「頬を染めておったぞ!!」
「ほ、本当か!?」
「ライムくんか!? それとも?」
「……マグティアの方だ。アイツはいつも、私が酒を飲む時に酔わせてくるんだ。私の、状態異常無効化をなくさせる」
「ほうほう、まぁ酔った女子は特有の魅力があるからな!!」
「まぁ、そういう話だろうなと思う。だが毎回やらかしてしまうから……」
「やらかし?」
「な、なんでもない!! 聞かなかったことにしてくれ。まぁだから、今日は好きなように飲めるわけだ!」
「ほうほう! ではもっと飲めぃ! 店主! もっと持ってくるのだ!」
そんな感じで、ホテルなのにめちゃめちゃ飲んだ。しかし、泥酔はせず、心地よい酔い具合なのだから、素晴らしい。
「じゃあ、私は自宅に戻るからな。また明日、ギオン!」
「あぁ! 今日はありがとう、ベリア殿!」
ということで、家に帰ったのだが……。
ゴゴゴゴゴ……
「男と、飲んだ?」
「……状態異常無効化はした」
「ねぇ、浮気じゃない? 浮気だよね? ライムくんもそう思うよね?」
「え、いやぼくは……」
「思うよね!?!?」
「あ、うん!! 思う!!」
姫抱きにされて、マグティアの部屋に連れられる。
「上書きだー!!」
「ぎゃーーー」
結局こうなるのか……。
そしてやっぱり、次の日は二日酔いもなく元気なのだった。
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