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魔法少女勧誘劇


「カノンちゃんは、どこの出身なの?」

「切り抜き見たけど、全然雰囲気違うんですね」

「シズクちゃんと一緒に教室に入って来たみたいですけど。どのような関係なんですか?」


「えっと……あの、そんなにいっぺんに質問されても困るんだけど……(つうか、距離近すぎだろう。離れてくれよ。この娘たちは)」


 ホームルームが終わり。休み時間になると、カノンの周りには、人だかりができていた。


「はいはい、皆さん。今、もっとも話題の魔法少女さんに、興味を抱かれるのは分かりますが。カノン様が困ってますわ。少し落ち着きましょう」


 両手をパンっと叩きながら、カノンの左隣の席に座っていた夕凪ゆうなぎ真莉愛まりあが周囲の女の子たちに注意をした。


「ま、真莉愛様。ごめんなさい」

「す、すみません。真莉愛ちゃん!」

「カノンちゃんに引かせちゃって、すみません」


「いいえ、分かって下されば良いんですよ~!フフフ」


 周りの女の子たちが真莉愛に謝り始めた。


(なんだ?真莉愛ってが注意したら皆、素直に言うことを聞いた?……つうか、この娘。テレビのワイドショーに出てた女の子じゃないか?)


「マリアちゃんはね、魔法少女クラン『ヴァルキュリー』のリーダーなんだよ。カノンちゃん」


「は?『ヴァルキュリー』って、大型クランのか?」


「そうそう。うちのクラン『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』とは、ライバル関係………あんまり仲良くしちゃダメだからね。カノンちゃん。幼馴染みシズクちゃんとの約束だよ」


「どんな約束だよ。隣同士の席なんだから無理だろう。つうか、なんで編入初日にクラスメイトと仲悪くならないといけないんだつうの……」


 ふと、カノンはマリアの方に目を向ける。シルバーブロンドの髪をポニーテールにし、整った美しい顔立ちをしている。


「美人さんでしょう。れたらお仕置きだからね。仲良くしちゃためだからね。カノンちゃん」


「あら?それは聞き捨てなりませんね。シズクさん……同じクラスメイト同士。私はカノン様と、とてもとても深く仲良くなりたいのですけど」


「カノン……様?」


「はい!カノン様です。お久しぶりですね。あの時は……」


「あの時は?……オレたち、どこかで会ったことあったっけ?」


 カノンの方へと椅子を急速に近づけたマリアは、カノンの両手を鷲掴みした。


「コホンッ!失礼しました。今日、初対面でしたね。私たちは……コホンッ!コホンッ!」


 わざとらしく、マリアは咳払せきばらいをした。


「おいおい~!マリアちゃん。《《うち》》のクランのカノンちゃんに何のようかな?学校の教室でナンパは困るんだけどね~!」


「……この声は、シズクさん?なぜ、ここに?」


「なぜって、私は、1年Aクラスの所属でしょうが。なに、わざとらしく言ってんの?」


「存在感がないせいでは?それよりも、カノン様。次のダンジョン探索の授業では、ぜひともマリアとチームを組んで下さい!」


「ちょっとっ!マリアちゃん。なんで、私の質問をスルーするのかな?この猫被りさんは?」


「……はい?誰が猫被りさんですか?それを言ったら、抜け駆け娘がよくいいますね。今日の夜なんて、カノン様を、お風呂場で襲ってましたものね」


 だんだんと言葉が荒くなっていく、シズクとマリアのやり取りをボーッと見つめている、カノンとクラスメイトたち。


「は?なんで、そんなことを知ってるの?マリアちゃん!!もしかして、もうカノンちゃんのストーカーを始めたわけ?」


「なっ!?な、なぜ、私を拘束しようとするんですか?離れて下さい……く、くすぐらないで下さい!!」


「それじゃあ、私の幼馴染みに色目を使わないでよ。約束だからね」


「……ひぁ……い、嫌です。カノン様は、私のクランに勧誘するですぅ」


 そして、じゃれあい始める2人。随分ずいぶん楽しそうである。


「……なんだ、この2人、さっきまで喧嘩してたんじゃないのか?」


「シズクさんとマリアさんは、昔から、こんな感じなんですよ」

「……そうね。ライバル関係ってやつじゃないかしら?」


「……ライバル関係?シズクのライバル?」


 いつの間にか、カノンの背後には、同じクラン『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』所属の魔法少女、ハイナとキレイが立っていた。


「そうなんです。昔、皆で通っていた魔法少女塾でも、すぐに張り合おうとするんですよ」

「……そうね。昔から変わってないわね」


「そうなのか。シズクのライバル……マリアさんか……なんか、マリーに似てるな」


「マリアちゃんは、なんでいつもいつも、私の物を取ろうとするのかな?」

「誰も取ろうとなんてしてません。それにカノン様は誰の物でもありませんよ!シズクさん」


 シズクと取っ組み合いを始めたマリアを見ながら、カノンは、異世界時代の旅の仲間のことを思い出していた。


「そういえば、カノンさん。お昼からの授業、ダンジョン探索ですけど。誰と組むと決まってるんですか?」


 ハイナがカノンに質問した。かなり積極的に。


「ん?いや、決まってない……ていうか、ダンジョン探索の授業なんてあるのか?」


「……き、決まってないなら、私たちと組みましょう。カノン!私たちが手取り足取り教えてあげるわ、ダンジョンのことを!」


 すかさずキレイが、カノンにそう告げた。ものすごく積極的に。


「え、いや……あの……オレはシズクと……」


 カノンがチラッとシズクの方に目をやるが、シズクはマリアとじゃれ合っていて、カノンが見ているのを気づいていない。


「ですです!それが良いですよ。カノンさん!私とキレイちゃんは、ダンジョン探索に詳しすぎる魔法少女ですから。カノンさんに色々なことを教えてあげられますよ」

「……そうね。そうしなさい、カノン。私たちは同じクランなのだから、そうするべきだわ」


「……わ、分かった。よろしく頼むよ。2人とも」


「「やった~!」」


 ハイナとキレイに詰め寄られたカノンは、拒否することもできず。午後からのダンジョン探索の授業を、2人と一緒に受けることになった。



「うわぁ……広い食堂だな」

「ムフフ、すごいでしょう。我が校自慢の食堂だよ」

「……なぜ、貴女が誇ってるのですか。シズクさん」


 お昼、カノンはシズクに誘われて、アルテミス魔法女学園の食堂へとやって来ていた。なぜかマリアも一緒である。


「あれが、魔法少女をお救いになったカノン様ですか?」

「可愛い方~!」

「お昼をご一緒にされているのは、蒼井さんと夕凪様ですか。絵になりますわ~!」


 絵になる3人を遠巻きに見つめている。そんな光景を見て、カノンは溜め息をついた。


「はぁ~!……なんか、どこに居ても注目の的なんだが」


「まぁ、『暗黒グレムリン』の切り抜き動画がバスッちゃったからね。しばらくは我慢だよ。カノンちゃん」


「魔法少女クランも、カノン様をスカウトしようと躍起やっきになっていたんですよ。ちなみに、『ヴァルキュリー』の移籍の書類はこちらになります」


「……破っとくね~!ビリビリと」


「あっ!なにするんですか!シズクさん!」


「どさくさに紛れて、カノンちゃんになにを書かそうとしてるのかな?お邪魔虫さん」


 再び取っ組み合いのじゃれ合いを始める、シズクとマリア。


「……こんな公衆の面前で止めろよ。お前ら……つうか、なんでマリアさんまで、ここに居るんだよ」


「マリアで結構ですよ。カノン様」


「あっそう。マリアね。了解……」


「それとですね。午後からのダンジョン探索にお誘いしようと思いまして、付いてきたのですが……」


「あっ!こら、それはこのシズクちゃんを通してもらわないと困るよ。マリアちゃん!私はカノンちゃんのボディーガードなんだからね」


「なんですかそれは!そんな情報、聞いてませんよ。嘘をつかないで下さい。シズクさん」


 お互いの両頬を両手で伸ばして、変顔になっているシズクとマリア。それを見たカノンは……


「あっ!いや、午後からのダンジョン探索はハイナとキレイに誘われてるから。心配しなくても大丈夫だぞ」


 さらっと、そう告げた。


「……へ?ええぇぇぇ!!何それ?」

「……へ?ええぇぇぇ!!何ですかそれは?」


「……お前ら、仲良しさんなんだな。本当に」


 同じようなリアクションをする2人を見て、感心するカノンだった。 


 ちなみに噂では、ハイナとキレイは女の子好きとして、1年Aクラスの中では有名なのだが。


 その事をシズクから聞かされ、カノンが知ることになるのは、ダンジョン探索の後のことだったりする。


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