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魔法少女のダンジョン踏破授業


 アルテミス魔法女学園の校内には、魔法少女たちが鍛練を積むための、ダンジョン体育館なる場所がある。


 午後からの授業は、シズクが用意した体操服に着替えてダンジョン体育館へとやって来た。


「……なんで、体操服が超ミニスカートなんだよ!スースーするぅ。普通はズボンだろう」


「似合ってますよ。カノンさん」

「……そうね。素敵よ。カノン」


「なんで、ハイナとキレイは、顔を赤くして嬉しそうなんだよ」


「べ、別にそんなことはありません。ねぇ?キレイちゃん」

「………え、えぇ!その通りだわ。ハイナ」


「そうかい……(この2人。オレを見る目線がなんか、変なんだよな。怪しい~!)」



 そんな2人の様子を少し離れた場所で見つめている魔法少女たちがいた。


「……まさか、カノンちゃんが、私とじゃなくてあの2人とチームを組むなんて思わなかったぁ~!ダンジョンの中で、あの2人と組むなんて、カノンちゃんの貞操ていそうがピンチだよ~!」


「それなら、なんで、もっと注意してなかったんですか?反省して下さい。本当は私が組むはずでしたのに」


「なんだとぉ!?マリアちゃんが、私に突っかかって来たのが悪いんじゃん!ねぇ?緑水リョクスイちゃん」


「はぁ~?なんですか、その言い方は?怒りますよ。そうですよね?リョクスイさん」


「……なんで、私がこの2人のお守りをしないといけないのよ?サギリ先生。図ったなぁ」

《1年Aクラス所属 魔法少女リョクスイ》



〖ダンジョン科担当の三崎みさき 早霧さぎりだ。よろしく頼む〗


 授業が始まると、1年Aクラスの担任でもあるサギリが、拡声器を使い生徒たちに向かって、今回の授業内容を話し始めた。


〖現在、世界各地に出現したダンジョンは3種類ある。遊戯型、討伐型、踏破とうは型だ。そして、今回の授業で皆にやってもらうダンジョンは、踏破型ダンジョンになる〗


 サギリの話を聞きながら、カノンは授業の内容を把握していく。


「へ~、魔法少女専用のダンジョンも、そんな感じなのか」


「そうですね。基本的に探索者さんたちが入るダンジョンと変わりません。ただ、魔法少女が入る専用ダンジョンには、ちょっとしたペナルティがあります」


「ペナルティ?」


「……お仕置き生配信よ。ダンジョン攻略ができなかった魔法少女は、ダンジョン運営から恥ずかしいお仕置きを受けるの」


「なんじゃそりゃあ、随分と平和的だな。探索者がダンジョン攻略に失敗したら、ランク落ちだってあるのにさ」


「それが、結構盛り上がるんですよ。基本的に魔法少女は可愛い女の子が多いので、映えるんです。色々と」


「……そうね。映えるわ……以前の浅草ダンジョンの時みたいに」


 ハイナとキレイは、以前の浅草ダンジョンのことを思い出して、少し落ち込んだ。


 無理もなかった。アンチに負けそうになり、もう少しで危ない目にあいそうになっていた所を、全世界に生配信されてしまったのだから。


〖今回の授業で、君たちに行ってもらうのは、ダンジョン踏破型だ。体育館を擬似簡易ダンジョンにして、Eランクのモンスターが出現するようになっている。3人一組でダンジョン内に入り、協力し合いながら、ゴールへと辿たどりついてもらう。ちなみに、配信用ドローンで、ダンジョン内の魔法少女は、学園側に視聴されているので、配信アピールもしっかり行うように。それでは一組目……蒼井チーム……喧嘩しないでさっさと行け!シズク!マリア!!〗


 サギリの授業説明が終わると、次々と魔法少女たちがダンジョン内へと次々に入って行く。


「……いや、どんな授業だよ……魔法少女配信者って、大変なんだな」


「ですよ。意外と大変なんです。魔法少女配信者って」


「……覚えることが多いわね。まぁ、サギリ先生の授業は比較的優しい方だけど。授業中、ダンジョン内で手に入れたドロップアイテムを換金してくれるのよ」


「ドロップアイテム?……擬似簡易ダンジョンでも、ドロップアイテムが出現するのか……(とういう事は、万が一の可能性ではあるが……TS状態を戻せるドロップアイテムが手に入る可能性があるんだな。やる気が出てきたぞ)」


 ガッツポーズをしながら、ダンジョンを見つめるカノン。それを見たハイナは、ガバッとカノンの右腕にしがみついた。


「すごくやる気ですね、カノンちゃん!ハイナも頑張っちゃいますよーっ!」


「お、おいっ!い、いきなり抱きつくなよ。ハイナ……ちゃん」


「ハ、ハイナちゃん!?……カ、カノンさん。も、もう一度、ハイナの名前を呼んでくれませんか?」


「はい?……あ、あぁ、ハイナちゃん!?」


「ぐはぁ!?……あ、ありがとうございます。カノンさん。そのお言葉で、ご飯三杯は食べられます」


「そ、そうか。それは良かったな……(よく分からないけど。さっさと、オレから離れてくれてほしいな。つうか、アイの奴はどこで油を売ってるんだ?)」


 カノンは忘れていた。以前、シズクからの忠告を……『魔法少女はね。だいたいの娘が脳内お花畑で熱しやすいってことをだよ。大先輩魔法少女シズクちゃんからのアドバイスってやっさ。』


 そうとも知らずに、カノンはハイナと共にダンジョン内へと向かい始めた。ハイナに狙われていることも知らずに。


【ニャ~ン!】

「あの……カノンの使い魔さん。なんで、顔に身体をこすり付けてるのかしら?前が見えないのだけど……2人とも行ってしまったじゃない。追いかけましょう」

【ニャン!……(ふぅ~!キレイさんへの対応は間に合いましたが。困りましたね。ハイナさんと行ってしまいましたか。まさか、ダンジョンに入る前から、修羅場になりそうになるなんて……女の子になっても罪な人ですね。ご主人様は)】


 アイとキレイも、カノンたちを追いかけて、ダンジョン内へと入って行った。



 アルテミス魔法女学園《《内》》には、授業に使うための擬似簡易ダンジョンが存在する。


 そして、ダンジョンにはランクというものが存在し。アルテミス魔法女学園のランクは、教師サギリが、A~Eランクに変化させることが可能なダンジョン形成をしている。


「……中はあんまり入り組んでないんだな」


「そうですね。私たちは新人魔法少女なので、それほど難しいダンジョンは、まだまだ早いと判断されてるんだと思います。Eランク魔法少女ですし」


「Eランク?……魔法少女なのにか?意外だな。ハイナちゃんは、もっと高ランクかとも思ってたのにさ」


「いえいえ、そんなことないですよ。私なんて、まだまだ新米の魔法少女ですし……同い年の人気配信者の子達はもっと高いんですけどね。普通の女の子は、魔法少女と配信者の両立って難しいんですよ。覚えることが多いですしね」


 ハイナはそう告げると、少し離れた場所でモンスターと戦っているシズクたちを見つめていた。魔法少女の格差について、カノンに話したことで少し落ち込んでしまったようだ。


「そうなのか……なら、ランクが上がるように頑張ろう。オレも協力するからさ」


 そして、優しくハイナの両手を握るカノン。


 そして、そして、両手を握られたことでハイナのハートは、ズキュンーッ!と射貫いぬかれた。


「カノンさん……はわわわ!!は、はい!カノンさんのために、ハイナは頑張ります!!」


 こうして、ハイナのダンジョン踏破のやる気は、覚醒したのだった。



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