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アルテミス魔法女学園の編入生


 夜、カノンは風呂場の鏡で、自身の姿をボーッと見つめていた。


「なんだ、この美少女は。そして、やっぱり無いよな……男のシンボル。あのアホ猫め、一生恨んでやるからな」

 

 使い魔アイへのお仕置きを考えながら、鏡に近づき始めた。


「……そ、それにしても、本当に可愛いよな。これが、今のオレ……」


 鏡に映る自分に見惚みとれるカノン。そんな時だった、風呂場の扉が勢いよく開いた。


 なんと、バスタオルを巻いたシズクが、ニコニコ笑顔で、風呂場へと侵入して来る。


「カノンちゃん~!1人で身体洗うのもまだ慣れてないよね?お背中流してあげるよ~!」


「……は?シズク……お前!なんで、裸で入ってきてんだ!」


「何を言ってるんだい。ちゃんとバスタオルは巻いてますよ~!……そんなことより、カノンちゃんの方こそ何しようとしてたの?大先輩魔法少女シズクちゃんにちゃんと説明してくれるかな?ん~?」


「お、おい!シズク!抱き付くな!それと、どこ触ってんだ!や、止めろおおぉぉ!!」


「別に良いじゃん。今は、女の子の幼馴染み同士なんだから」


「よくねえわあぁぁあ!!」


 その後、カノンとシズクは仲良く長風呂を楽しんだ。



 一方、カノンの部屋では……


『『――――――!!』』


【ご主人様たちは、夜でも騒がしいですね】


〖何かありましたか?暗黒竜ダーク・アイ〗


【ニャア、なんでもないですよ。アルテミスの勇者シャーリーさん】


 カノンの使い魔アイの魔法で、鏡に映し出されている人物は、異世界アルテミスの勇者シャーリー・ロゼリア。


 カノンがアルテミスの世界にいた時に、一緒に旅をしていた仲間の1人だ。


〖そうですか。あの……それでですね。私たち勇者パーティーは、カノン様にお会いしたいのですが。転移門を開いてほしいのです〗


【それは無理なご相談ですね。勇者シャーリーさん】


〖え?……な、なぜでしょうか?魔力供給なら、私が……〗


【貴女のパーティーに裏切り者がいるでしょう?】


 眼光鋭く、勇者シャーリーを睨みつける、アイ。


〖裏切り…者?〗


【気づいてませんでしたか?そんなことも分からないで、危険分子を地球側に……今のか弱いご主人様に会わせるわけにはいきませんよ。犯人が分かって捕まえてから、出直して来て下さい。それでは、さようなら】


〖え?……いえ、あの……せめて、カノン様にご挨拶させて下さい!お願いし……ブツンッ!〗


【勇者シャーリーさんもたぶらかされているですかね?アイがご主人様にかけた呪いの時も邪魔してきて……ご主人様が所属していた勇者パーティーには、ご主人様に悪意を向ける存在がいるのは分かってましたからね。そんな人たちを、地球に招くわけないじゃないですか。お馬鹿さんたちですね。ニャフフ】


 部屋の窓から見える満月を見上げながら、カノンの使い魔アイは不敵に笑った。


◇◇◇


 次の日、朝。制服姿のカノンは、都内某所にある魔法少女専門の高校―――アルテミス魔法女学園へと入学するために、やって来た。


 そして、カノンは、ともに登校したシズクに、待合室で待つように言われ。待たされていた。


【なんてやり取りがあったんですけど。どうしますか?勇者のシャーリーさんだけでも、密かに、ご主人様のご立派になったお姿を見て頂きますか?(ニチャア)】


「見て頂けるわけないだろうが。オレはTSしてんだぞ」


【ですよね~!再会なんてできるわけありませんよね。ご主人様は、超絶美少女……魔法少女アルカナ・カノンちゃんに生まれ変わりましたもの……ぐぺぇ!?……ご、ご主人様。アイの臓器がお口から飛び出しちゃいますよぉ……】


 カノンは怒りに任せて、アイのお腹を両手できゅっと力を込めた。力強く……


「オレを小馬鹿にするからだろうが」


【ずびまぜんでじだぁ……ぷはぁ!!死ぬかと思いました。ご主人様、相変わらず。お力がか弱いですね】


「……誰のせいだと思ってんだ。それよりも、教室では喋るなよ。めんどくさいことになるからな」


【はい、ご主人様(ニチャア)……その女装…じゃないですね。アルテミス魔法女学園の指定制服とてもとてもお似合いですよ。ご主人様(ニチャア)


 楽しそうに微笑みながら、カノンのほほにすり寄るアイ。


「お前、本当に楽しそうだな。どんだけ、オレが恥ずかしい思いしてるのが嬉しいんだよ」


【はい!アイはご主人様が、元気そうなので嬉しいですよ】


「……なんだそれ。いきなり甘えてくんな。暗黒竜猫」


【ニュフフ、照れてますね。ご主人様】


「うわぁ、うざぁ……つうか、さっきのシャーリーの話は、家に帰ったら詳しく教えてくれ。今は、編入のことに集中するからな」


【はい、了解しました~!(ニチャア)】


 《《とてもとても》》主人思いのアイは、ニチャリと笑った。


「何、アイちゃんと、にらめっこしてるの?カノンちゃん」


「へぁ!?うわあぁぁ!!シズク!どっから現れた?なんでオレの後ろに立ってんだ!?それになんで、いきなり抱きついて……離れろ~!」


 突然現れたシズクが、両手をカノンのお腹周りに回して、いきなり抱きついた。


「……なんで、そんなに慌てるのかね?カノンちゃん。私たちは女の子同士なのにさあ~!」


「お馬鹿!オレは男の子だってのおおぉぉ!!」


「《《男の子》》かぁ……言い方が昨日よりも女の子らしくなったね。カノンちゃん……もしかして、心もだんだん女の子に近づいているのかね?」


「ア、アホ。そんなわけあるかあぁあ!!」


【……ご主人様って、本当にモテますよね。どちらの世界でも】


 ガラガラッ!と、待合室の扉が突然、開いた。1人の女性が現れた。カノンとシズクの取っ組み合いを興味津々に見ている。


「おや、朝から元気だな。お前達」


 水色髪に眼鏡を掛けたスーツ姿の女性。アルテミス魔法女学園の女教師。三崎みさき 早霧さぎりだ。


「蒼井……お前。そっち方面の趣味があったんだな。意外だ」


「サ、サギリちゃん!?こ、これは違うの!こんなことするのカノンちゃんだけだし!」


「サギリ……先生?なのか?そんな格好で?」


「おう!初めまして、式波しきなみカノン。お前やシズクが所属する1年Aクラスの担任だ。よろしく」


 サギリは、右手をカノンの前に出し、にこりと笑っている。


「は、はぁ……よろしくお願いします。サギリ先生」


「……………」


「なんですか?」


「いや、敬語は普通に使えるのだな。てっきり、切り抜き動画で見たような、粗暴な奴と期待していたんだが」


「ぶほぉっ!いや、あれは!危ないめにあっていた魔法少女たちを助けるために、口調が荒れただけなんです!」


 あたふたしながら、ダンジョン遊戯の時に起きたことを、サギリへと説明し始めるカノン。


「……ぷっ!慌てすぎだろう。面白い奴だな。式波……呼び方はカノンでいいか?」


「へ?は、はい。大丈夫です」


「そうか。気に入った!カノンは面白い奴だな」


「……よく言われます」


「そうか、それでは移動しようか。カノンが所属する教室に案内しよう」


「ムフフ!うちのクラスには、可愛い女の子がいっぱい居るからハーレム作れるよ。カノンちゃん」


「誰が作るか……アホシズク」


 カノンは、サギリに案内され、自分が在籍する教室へと向かった。


◇◇◇


「か、可愛い……切り抜きよりも、本物の方がすごく可愛い」

「髪細くて綺麗な娘……顔小っちゃい……お姫様みたい」

「華奢な娘……ぜひ、うちの部活に勧誘しなくちゃ」


「えっと……今日から編入して来た、式波カノンです。どうぞよろしくお願いします」


「2年前に起きた。新宿ダンジョンのスタンピードを鎮圧した。式波奏音と名前は瓜二つだが、女の子だ。仲良くするように」


(いやいや、同一人物だっての。つうか、そっちが本来のオレだよ。サギリ先生……つうか、本当に女の子しかいない。それに皆、めちゃくちゃ可愛い女の子ばっかだな。緊張してきた)


 教壇の前に立って、自己紹介を済ましたカノンは、教室に居る女の子たちをグルっと見渡した。


(カノンさん~!頑張って~!)

(……こ、こっち見てる?……カノン。どうしたのかしら?私なんかを見つめて)

(緊張してるね~!カノンちゃん!)


 そして、教室には、『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』のクランメンバーである、ハイナとキレイも居た。シズクは、カノンに向かって笑顔で手を振っている。


「ハイナとシズク?……2人も同じクラスなのか」


「1年Aクラスは、魔法少女の中でも選ばれた者が所属している」


「選ばれた者……ですか?」


「あぁ、配信者としての好感度、知名度、能力とかな。まぁ、そういう事は、おいおい覚えていけばいい。カノンの席は一番後ろの窓際だ。シズクの後ろだ」


 サギリが指を差した方へと目をやると、シズクの後ろの席はたしかに空いていた。


「わ、分かりました。えっと……これからよろしくお願いします」


「あぁ……それと、今は遅刻でいないがな。ランには気をつけろよ。このクラスの問題児だからな」


「問題児?……わ、分かりました。皆さんもこれからよろしくお願いします!」


「「「きゃあああ!!こちらこそ、よろしくお願いします!可愛いカノンちゃん!」」」


「……意外にノリが良いクラスですね」


「まぁ、私が受け持つクラスだからな。当然だ。ホームルームを始めるから、席につけ」


「は、はい……」


 カノンは、後ろの席へと向かった。


「フフフ~!これからよろしくね女の子の《《カノンちゃん》》」


「シズク……お前……え、えぇ、これからよろしくね。幼馴染みのシズクちゃん!」


「フフフ、仲が宜しいですね。お2人は……」


「へ?えっと……君は?」


「あぁ、申し遅れました。私、このクラス委員長をしております。夕凪ゆうなぎ真莉愛まりあと申します。以後、お見知りおきを」


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